イルミさんと私が寝起きしているゾルディック家の別館は、本館のほぼ真北にあった。山おろしの風をまともに受けるようなコの字型をしているから、ひどく寒かった。調度や内装は古ぼけてごてごてしたゴシック調で統一され、飾られた絵画は悪趣味で、それ以上の効果をもたらしていない。
ここの内装は全部、母さんが仕切ったんだよとイルミさんが教えてくれた。まだ彼が生まれたばかりの頃、誕生祝いに建てたのだという。だからここはオレの部屋。今はお前もいるけど。イルミさんが言う。

その寒い別邸の中で私たちは夫婦として過ごした。つまり断続的にセックスを繰り返した。イルミさんは家を開けることが多かったし、帰ってきてもすぐにどこかへ出かけてしまった。何かを話し合ったりする時間はほとんどなかった。そんな時間があれば彼はただ眠ったり性的な欲求を満たすことを優先した。ところがある日の昼過ぎのこと、珍しくベッドで仕事をしていたイルミさんが寝衣にガウン姿のまま部屋へ入ってきて、椅子にかけて本を読んでいた私に言った。
「仕事でヨークシンに行くから、付いてきてよ」

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