「「人間のほんとの気持ちが分かるネコ!?」」 我が家にエスパーニャンコがやってきた。 一松兄さんが大事にしていた、メガネをかけたような模様のあるネコは、デカパン博士の薬で人間の言葉を喋れるようになったらしい。 僕も半信半疑で思ってる事と真逆の事を言ったら本音がソックリこのネコの口から吐き出された。 「すっげー!パーフェクツ!」 「いじめ!?いじめなのこれ!?」 チョロ松兄さん、いじめじゃなくていじってあげてんの。 「ねぇ。なんか話せば」 「いいって。興味ない」 元はと言えば十四松兄さんが一松兄さんの為にこうなったネコなんだしもっと話せばいいのに。 「はい」 「おい!余計なことを……」 体育座りの一松兄さんのヒザの上にエスパーニャンコ。 あ、今おそ松兄さんがスッゲー顔した。 「なぁ、一松。ホントのホントはなまえちゃんのこと好きなんじゃないの?」 うわーっ!それ聞く!? そりゃみんな知りたかったけどさあ!! この鬼っ!悪魔っ!! まだそんなに経ってないじゃん! 傷口半乾きだよっ!? 「へっ、あんな淫乱女何とも思ってないし。トト子ちゃんの方が100倍可愛いもん。好き?恋?何それ。俺には一生無くて良い」 僕知ってるんだ。 一松兄さんが饒舌に喋る時は強がってる時だって。 「ほんとはそんなこと思ってないけど」 「ネコ……、ってことは今のが一松の本当の……」 チョロ松兄さんもビックリしてたけど、一番驚いてたのは当の本人、一松兄さんだった。 「あっれ〜、ホントはなまえちゃんの事好きなんじゃん」 「……好きじゃない」 「ずっと前から好きだった」 「好きじゃないって言ってるだろ!!なんでわざわざAVやってる女なんか好きにならなきゃいけないの」 ネコから離れるように一松兄さんは移動したけれど、懐いたネコは兄さんから離れたくないようだった。 「なんであの子はAVなんかやってるの」 「ま……まぁそういうクズ女だったんだよ、俺みたいに」 「あの子は違う。僕とは違うのに」 「キモいんだよ、好きでもない男に抱かれてて」 「可哀想……好きでもない男に抱かれてて」 「男なら誰でも良いんでしょ」 「それでも自分に自信はない」 「1回ヤってはいさようなら」 「僕なら一生大事にするのに」 「つーか、俺が恋愛とかありえないでしょ」 「つーか、僕だって恋愛してるんだ」 「女って何考えてるかわからないし。あぁくだらない」 「だから知りたいって思えてくる。あぁ切ない」 「恋愛なんかマジいらねぇ!」 「恋愛なんかマジいらねぇ。でもみんなと同じくらいあの子の事も大切なんだ」 これが……一松兄さんの本音。 「失せろ!わかった風な口聞きやがって!!」 「違うよ一松……このネコは本当の気持ちを……」 チョロ松兄さんの言葉も頭に血が昇った一松兄さんの耳には入らなかったようで。 「鬱陶しいんだよ!どっか行け!!」 「……鬱陶しいんだよ。どっか行けー!!」 襖を開けた兄さんの横を擦り抜けてネコは飛び出していってしまった。 臆病者の嘘重ね 一松兄さんに喜んでほしくてやったけど、 「あれ、十四松どうした?」 「一松なんてほっときなよ、捻くれてんだから」 結果傷つけたのは僕だ。 「わっせわっせ!」 公園も、 路地裏も、 ゴミ捨て場も覗いたけれどニャンコの姿は見当たらなかった。 空がオレンジ色に染まっていく。 「にゃあ……」 弱々しい泣き声が聞こえて暗い路地を見るとくたびれた姿のニャンコ。 「あーー!!いたーーーっ!!」 「にゃっ!!」 あー、俺のバカ!!せっかく見つけたのに逃げていってしまった。 諦めずに後を追うと、路地を抜けた先で女の子の小さな悲鳴が聞こえた。 『きゃっ』 女の子は後ろに尻餅を付いていた。お腹の上にはエスパーニャンコ。 「あーー!なまえだーー!!」 「え……どちら様でしょうか」 「一松くんではなさそう……兄弟の誰かかしら」 「え」 ニャンコの言葉に驚いたらしい。 「俺十四松!そいつはエスパーニャンコ。ほんとの気持ちが分かるネコ!」 「……通りで」 「なまえも一松兄さんに逢いたい?俺、兄さんの事傷つけちゃって、今から謝りに行くんだ!!」 「そっか、でもごめんね。さっきスーパーで生もの買っちゃったから」 困った顔のなまえの傍には確かにスーパーの袋が2つ落ちていて、とりあえずニャンコを引き取った。 「わかった!!今度兄さんと遊び行くね!!やきうしよう!!」 更に困った顔をしてたけど見ないフリ。 大きく手を振ってなまえと別れた。 家への帰り道。公園の横を通るとカラフルなパーカーが見えてすぐにそれが兄弟達だとわかる。 近付くと気配に気付いたのか、おそ松兄さん、チョロ松兄さん、トド松が僕を見、ベンチに座っていた人物……紫色のパーカーの一松兄さんの姿が見えた。 「なんだよ!!」 “ごめんね、一松兄さん” そう言いたいけれど、僕のトーンじゃ馬鹿にしてるとしか思ってくれないよね。 「ごめんね」 そんな僕の気持ちをニャンコは察してくれた。 一松兄さんは僕を見、ニャンコを見、そしてまた僕を見る。 「ちっ……俺も……ごめん」 「おれもごめん」 ニャンコが復唱するとたまらなくなって俺の腕から兄さんへ飛び乗った。 嬉しそうに頭を撫でてやる一松兄さんは優しい表情を浮かべていた。 back / TOP |