一度病めば腐敗は一気に進む






今日の撮影も最悪だった。

聞かされてもいないのに始まるともう一人相手が増えて結果3P。

終わった後に『聞いてない』と監督に抗議すると、



「知ってるよ〜?お金に困ってるんでしょ?倍払うからさ、ね?」



騙された事に憤りを感じても結局ギャラが良いなら仕方ない、と諦めてしまう自分がいて。


(こんなハズじゃなかったのにな……)




大学1年生の秋、私は生きる為にこの業界に手を染めた。

処女作は、まさに“処女”だった事もあり、振り込まれた通帳を見て驚いた。

それからどんどん値は下がる一方で。


少しでも良くしたいなら際どいジャンルを攻めないと無理だと言われたが頑なに拒んできた。


それなのに――


(あの頃に戻れたら、私はもうこんな道を選びはしないのに……)





***

高1の3学期、私は恋をした。


隣の席の男の子は、いつも眠そうな目をしていて、実際よく授業中眠っていた。

“彼ら”はこの学校じゃとても有名人で、六つ子だという事は入学して1週間足らずで知り得た情報だ。


たまたまクラスが6組あったから一人ずつ分配されたらしい。





私のクラスには松野一松くん。




他人とのコミュニケーション能力がないようで、席で寝ているか同じ顔の兄弟(見分けが付かない)がやってきてボソボソと話している姿しか見たことが無い。

しかし、この六つ子。
6人が揃うととんでもないらしい。


何度も六つ子揃って校長室に呼ばれていたし、噂によれば何を考えているのか見当も付かない性格をしている一松くんが一番危ない、だとか。


言われてみれば一松くんが兄弟以外の人と一緒に居る姿を私は見たことが無かった。


そんな彼が学期ごとに行われる席替えで私の隣に。


窓際の席は陽の光と風が入ってお気に入りだが、すぐ右隣の一松くんを見ればどんよりと何だか重たい雰囲気。

今日は珍しく起きているが机の上はノートだけで教科書が見当たらなかった。


『一松くんもしかして教科書忘れたの?』

「忘れたんじゃなくて必要ないだけ」


小声だが、それが初めての会話だった。


必要ない程頭が良いようには見えなかったため(実際成績は悪かったが)こっそりと机の境界線に教科書を置いた。


一松くんはそれをちらっと見るだけで何も反応はしなかったが拒否しなかった分、嫌ではないのだろう。


教科書を共有する、ただそれだけなのに私はいつの間にか一松くんの事を好きになっていた。


今思えば、他人を受け入れない一匹狼が自分にだけ素直に甘えてくれた喜びを恋だと勘違いしていたのかもしれない。




それでも彼と目が合う度にドキドキした気持ちに偽りは無いのだから。



(もう、そんな想いできないんだろうな……)


だって私は、



身も心も穢れてしまったのだから。


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