六つ子のお母さん―松野松代さんはまるで私が本当の娘のように接してくれた。

「はぁ…、念願叶ってホント嬉しいわ。ずっと娘とこうやって買い物したいって思ってたのよ。ほら、男の子って恥ずかしいとか言って一緒に買い物するの嫌がるじゃない?」

殆ど松代さんが喋っていて私はたまに相槌を打つ程度なのに松代さんは終始喜んでくれていた。

「奮発しちゃう!」といっていかにも高そうな霜降り牛を3パックも買って、その他にも私用に歯ブラシ、パジャマ、下着まで無理矢理買わされた。

押しの強い人だが逆に私は救われた気がする。


一松くんもそう。

保護、という形できっと私を連れてきてくれたのだろうけど、訳も聞かず自由に振舞う六つ子たちに私の頭は完全にショート。静かに立ち去ろうとしたら、


(コイツ一生居るから)



ちょっと強引だけどそう言ってくれて。

久し振りに人の温もりを感じられて嬉しかった。





***

食事を済ますと、松代さんは六つ子たちと一緒に銭湯へ行って来なさい、と薦めてくれた。


『――ぁ、』

そうだ、財布――

あの時は緊急だったから何も持たずに出てきてしまった。


勿論部屋の鍵もかかっていないだろう。

特に盗まれて困るものは財布と携帯くらいなのでそれだけは持ってきたかった。


「どうしたの?」

私の前を歩いていたトド松くんが私の小さな声を聞き逃さなかったようだ。


『あの……、お財布と携帯取りに一旦帰るので先に行っててもらえますか?』

「女性の夜道の一人歩きは危険だぜ、ベイビー」

「じゃあみんなで行っちゃおうか!」

まさか一緒に来てくれるとは思わなかった。

十四松くんを先頭に再び歩き出す。




「何独りで行こうとしてんの。バカなの?」

最後尾、隣を歩く一松くんが冷めた口調で話し掛ける。


『うん……、ごめんね』

「まだアイツが居たら殺されるかも」

『一松くん、……ありがとう』



「……」

冷たくなった手に一松くんの温もりが伝わる。


その手を握り返す勇気がなくてごめんね。



***

アパートに辿り着くとまずは十四松くん、おそ松くん、カラ松くんで中の様子を見に行ってくれた。

安全を確認し、残った私たちも中へ。


部屋は逃げ出した時よりも荒れていて、もしかしたら激怒した父が暴れていったのかもしれない。


財布を発見したがお札も小銭も盗られていた。

クレジットカードや銀行のカードは別の所に保管していて本当に良かったと思う。


普段使いしているカバンに貴重品を詰め込み部屋を出た。

鍵をしっかりかける。



「皆さん、どうもありがとうございます」

「気にしないで♪なまえちゃん」

「さっみー!銭湯行って早く温まろうぜー」



助からないのに助けを求める




おんなじ背格好の6人。
彼らは本当の孤独を知らないのだろう。


さっきと同じように私の手をそっと繋ぐ一松くん。


またあの闇に戻らなければならないのなら――


今だけでも少し甘えさせて――


私も少し、彼の手を握り返した。


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