六つ子たちを2階へ押しやり先程松代さんに買ってもらったパジャマを取り出す。


薄桃色の生地に白い丸ボタンが3つ。至ってシンプルなものだ。

花柄とかうさ耳フードの付いた可愛らしいものも売っていたが松代さんは迷わずそれを2着カゴへと入れたのだ。


(コッチがいい、なんて言えないしなぁ)


買ってもらう分際でそれは我儘である。



ピッタリのサイズのそれに素早く着替え布団に入る。

いつもと枕が違うせいだろうか、そもそも見慣れない部屋のせいだろうか。



(あ、そういえばおやすみの挨拶してなかったな)


彼らはもう寝てしまっただろうか。

静かに階段を上がりゆっくり扉を開けると六つ子たちはパジャマに着替えたもののまだ寝る様子はなく思い思いに過ごしていた。



「なまえちゃん!なに?やっぱり寂しくなっちゃった?」

「わ〜♪パジャマ僕たちと色違いなんだね!」


『えっ!?あっ、ホントだ』


「なまえもプロレスする!?」

『や、やりません!皆さんにおやすみの挨拶言いにきただけですっ!』

「俺の横……空いて」
「空いてないよねぇ!?一松とトド松居るよねぇ!?」

『みっ、皆さん。今日は泊めて下さりありがとうございました。明日早いので……おやすみなさいっ!』


「いつでもこっちおいでね」
「いい夢を、ベイビー」
「なまえちゃん、おやすみなさい」
「……」
「おやすみなまえーーっ!!」
「なまえちゃん、明日も一緒に遊ぼうねっ♪」




***



とは言うものの、やっぱり眠れない訳で。

星空を見ようと縁の下に出てみる。


小さな庭にはオレンジ色のネコが一匹。一松くんが可愛がっているネコだろうか。



『おいでおいで〜』

手招きして呼んでみるが警戒しているのかその場を動こうとはしなかった。


「そいつ、コレがお気に入りだから」

『いっ!一松くんっ』


深夜2時、もうとっくに寝ていると思っていた。

手には缶ビール1缶とネコじゃらし。



一松くんがネコに向かってネコじゃらしを振ると素早く頭を持ち上げて勢いよく飛び掛ってきた。


『一松くん、高校の時からネコ好きだったよね』

「あ?」

『だって放課後、焼却炉の傍でネコと遊んでたじゃない?』



そう、あれは高2の秋。

クラス替えで一松くんとは別のクラス。当時軽いイジメに遭っていて掃除のゴミ捨ては私の役目だった。もっとタチの悪い時は独り掃除を押し付けられて何時間もかかったっけ。


それでも何故だか一松くんはいつも同じ場所でネコと戯れていて、たまに一緒に帰ったりした。


“一緒に帰る”は語弊があるかもしれない。途中まで帰り道が一緒で、たまたま帰る時間が同じだっただけかもしれない。


『一松くんは変わらないね』
「何が?」


『だって昔から優しかったもん』
「――っゲホっ!!」

丁度飲んでいたビールでむせ返る。



「……お前なぁ――」
『それに今日だって……一松くん来てくれなかったら私どうなってたかわからない』


「あれは……その、偶然だから。たまたま通りかかって物騒な物音聞こえたから行ってみただけだし」

『それにこんな賑やかなお家連れてきてくれて……私嬉しかった。家族って暖かいなって思った』

「……うっさいだけでしょ」





『あのね……、私を殴ってた人――お父さんなんだ』





世界が綺麗であった試しがない



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