何だか一階の様子が騒がしくて目が覚める。

(もしかして自分が最後?だったら起こしてくれてもいいのに……)

そう思って6人用の長い布団を見渡すと、十四松兄さんとおそ松兄さんがイビキを掻いて眠っていた。
ま、僕も起こさないけどね。

「んぁ〜おはよ……」
「あ、トド松。おはよう」
「グッドモーニン、いい朝だなトド松」

眠い目をこすって兄貴たちの背中に挨拶すると首だけを一瞬こちらに向けて返してくれた。

「え……、何してんの?」

チョロ松兄さんとカラ松兄さんの見つめる先に居たのは一松兄さんと昨日お泊りしたなまえちゃん。

昨日までの慎ましやかな雰囲気が一転、一松兄さんと服の取り合いをしている。


『もー、いい加減離して!私着替えたいの!』

「昨日着てた服また今日も着るの?汚いよねぇそれ、ひひっ」

『きっ、汚くないもん!臭くもないもん!!』


「へぇ〜、ホントに?」


スンスン、と昨日なまえちゃんの着ていたその服に顔を押し付ける。

『ひぃい!!変態っ!!』

力任せに引っ張れば、ようやく兄さんの手から洋服が離れた。もう掴まれてなるものかと抱え込むなまえちゃんは羞恥心から顔を真っ赤に染めて兄さんを睨んでいた。



「え、何?意味わかんないんだけど」

「いやぁ、俺も起きてきたら2人がケンカしてて。それからずっと、こんな感じ」

「え、だってキャラ変わってない?」



だって僕の知ってる松山さんは――



***

高校2年生の2学期頃から僕のクラスではいじめが流行りだして。

その標的になっていたのが松山さん。

成績優秀でお高く留まっていたのが気に入らなかったらしい。

暴力を振るったり罵ったりすることはなかったけれど掃除当番を押し付けたり日直をやらせたり……集団って怖いよね、結局は強い者に巻かれるんだ。



――とどのつまり僕もそう。
でも、いじめが蔓延しだして1週間後、放課後忘れ物を取りに戻ったら、彼女独りで掃除をしていたんだ。

「ねぇ、松山さん。僕も手伝おうか?」

帰りのHRが終わってからもう1時間半も経っている。


『机、元に戻したら終わりなので』
「じゃあ僕もいっ――」
『バレたら』

「えっ」


『バレたら次は松野くんだから』
「……でも、」

『私は大丈夫』

そう微笑んで教室を追い出された。


「さっきの何?」
「……彼女、いじめに遭ってる、って言うのかなぁ。掃除押し付けれられたりしてて。手伝うって言ったんだけど、断られちゃった」

一緒についてきた一松兄さんは一言「ふーん」とだけ言ってそのあとは静かに帰路についた。


***


「ニート達、それになまえちゃん。朝食の準備できてるわよ」

『あっ、すぐにお布団片します!』

あ、優等生キャラに戻った。

「なまえちゃん♪」

『えーっと、トド松くん……?』
「ヒ ド く な い !?僕一緒のクラスだったよねぇ!?」


『あー……ごめんなさい』
「いいよ、慣れてるから。お布団は僕片付けるから早く着替えておいで!そうしないといつまでも一松兄さんうるさいから」


『あ、ありがと……』

少し頬を染めてなまえちゃんは脱衣所へ向かった。


「ねぇ一松にいさん」
「何?」


「あの日以降、帰りが遅かったのってさ、つまりはそういう事なんでしょ?」

「! ……何の事だか」


そうやってとぼけるけど、僕の言いたいことはわかってるハズなんだ。

だって僕たちは同じ日に産まれた兄弟なんだから。



形だけの懺悔



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