――ガラガラ。

「あっ、ルミちゃん。ごめんねわざわざこんな所で」

『ふふっ、驚きました。まさか今日の撮影場所が学校で、更に当時と同じ格好してくれだなんて』

「今日は対談だけだから、心配しないでね。あ、待って!まだカメラワーク入んないでね。……それにしても今日、雰囲気違うね〜!高校の時清楚系だったの?黒髪も似合ってるじゃん!」

『はいっ♪当時に合わせてメイクも薄くしてみました』

「いいよいいよ!じゃあカメラさん、足元からパンアップよろしく〜」


***

松本ルミの足元が映る。

焦げ茶のローファー
紺色のハイソックス
短過ぎない丈のスカートが映り
セーラー服……

胸元のスカーフの色は赤


「……え」

(コレ、うちのガッコじゃね?)


そして顔を映して驚いた。

(松山さん……!!)


「あっれー!?この子って松山なまえちゃんだよねぇ」
「えー!?あの地味で優等生だった松山さん!?」

振り返るとそこには爆睡しているハズのおそ松とトド松が居た。

「どぅわーーー!!!!!」

俺は慌ててテレビの電源を落とした。



「はい、千円♪」
にこやかな顔で手を差し出される。

「は?」
「一松兄さんが夜AVを見る、に賭けてたの僕たち。だから千円ちょーだい♪」
「口止め料としてでもいいぞ」

「……AVじゃないからこれ」
「トド松、再生。そして早送り」

「うわぁあああ!!やめろぉおおお、むグっっ!!」
「バカ、他のやつらも起きるだろ?」

おそ松に後ろから押さえつけられる。その間にすばやくトド松はチャプターを飛ばし一瞬にして濃厚な絡みシーンへ。



(これだけは誰にも見られたくなかったのに)

彼女にそっくりの……というか、彼女そのものなら尚更だ。


「うわ、えっろ!」
「同級生のよしみで一発ヤらせてグホっ!!」


唯一動く左腕の肘がおそ松の鳩尾へ決まると緩んだ腕から抜け出してトド松からリモコンを奪い返した。電源を切り、ついでにリモコンを破壊。

「うっさい、黙れクズども」
「一松兄さん、誰にもAV見せたくないくらいなまえちゃんの事好きだったの?こんなに阿婆擦れなのに?こんなに他の男に抱かれてるのに?」

――ドゴォオオン!!


どこからか取り出したバズーカでトド松は灰と化した。

「いいいい一松……!おおおちつけ!!今日の事は何も見てない!何も知らなかった事にするから!!」






少年は白になりたくて泣きました









「いちまつ……?泣いてる……?」
「……泣いてねぇ」
「じゃあどうした、目なんか押さえて」



気持ちとは裏腹に止めどなく目から溢れる水滴に俺は混乱した。拭っても拭っても溢れ出るそれにもうどうしたらいいのかわからない。

「とォう!おは4−6−3の〜!ゲッツー!!!」
「まだ朝じゃないよ、十四松」
「あれ、なんで泣いてるの一松兄さん」

ゴシゴシと長い袖で何度も擦られ、痛い痛い、と訴えると「もう止まった?」とヘラヘラしながら笑顔で覗き込まれた。


「……ん」

俺だって、できる事なら忘れてしまいたい。

あの頃の彼女、松山なまえさんと今の彼女、松本ルミが同一人物だとは到底思えない一方で、


ぽてっとした唇が
俺を見る流し目が

そうだと告げているようでならなかった。


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