福岡での初出勤の日。ヘッドセットを整えて、深呼吸を一つ。背筋を正してモニターを確認していると、不意に直通回線のランプが点滅した。
『もしもーし?聞こえてますかぁ〜?新入りオペレーターさんっ♪』
つい今朝も耳にしたばかりの聞き慣れた飄々としたその声に、思わず口元がほころぶ。
「ホークス……。もう、仕事中ですよ?」
『知ってますよー?だからこそです。初出勤、どうです?』
「……どうって。まだ始まったばかり」
『ふふっ、ですよねぇ。でもなんか声が硬いな〜そんなガチガチじゃ、肩こっちゃいますよ?』
「……はいはい。軽口叩いてないで、任務に集中してください、所長」
『してますって!でも、やっと同じ街で働けるんだから、ね? 少しぐらい構わせてくださいっ』
通信越しに聞こえる羽音に胸が熱くなる。ずっと遠距離だった二人がようやく同じ街で暮らし、同じ空気を吸えるようになった。そのことを思うと、私も自然と笑みがこぼれた。
「……うん。ほんとに、もう一緒なんだって実感するね」
『ええ。俺もです。だから、今日も張り切っていきましょうか、新入りの凄腕オペレーターさんっ』
その軽快な調子に胸の奥の緊張がふっと和らいでいった。通信の向こうで軽やかに羽音が揺れる。私は思わず小さく笑い画面のメーターを確認してからそっと回線を切った。やっと同じ場所で働けるようになった、その喜びが、胸の奥にじんわりと広がっていく。
しかし、次の瞬間。緊急回線のアラートが鋭く鳴り響き、モニターに新しい通信が割り込んできた。全身が反射的に強張り心臓が跳ねる。慌てて応答ボタンを押すと耳に届いたのは掠れるような若い、女性の声だった。初出勤の朝。慌ただしい指令室の空気にまだ馴染めないまま、私は咄嗟にヘッドセットを深く装着した。
『……電話、しちゃって、ごめんなさい……』
胸騒ぎが背骨を駆け上がり、背筋が凍りつく。なんとなく喉の渇きを覚え、それでも私は必死に声を落ち着けて、応答を返した。
「いえ……大丈夫です。緊急事態でしょうか?」
耳を澄ませると小さな呼吸音がノイズのように耳に残る。
『…………伝言を、残したいの……』
「伝言……?」
思わず繰り返してしまった。けれど彼女はそのまま続けた。
『親しい——親切な……友人たちに……』
彼女の声は今にも途切れそうなほど弱々しい。私は思わずモニターに近づき指先でキーボードに触れた。
「こちらは、ヒーロー緊急支援センターです。ですから、そういったことは——」
『知ってる。通報を、録音してるんでしょう?』
息を呑んだ。彼女はなぜか、仕組みを理解していた。となれば、これは——。
「……はい、記録はされています」
返した声が、自分でも驚くほど硬く響いた。
『なにもかも終わりにしたい。もう、嫌なの』
その言葉に、キーボードを叩く手が止まった。周囲の喧騒が遠のき耳に入るのは彼女の声だけになる。必死に呼吸を整え、私は次の言葉を選ぶ。
「大丈夫です。どうか落ち着いて。まずはお名前を教えていただけますか」
沈黙のあと、途切れ途切れの声で彼女が自分の名を名乗り始める。私は淡々と指でキーボードを叩き、その文字をひとつずつ打ち込んでいった。
『伝えたいことは——心優しい友人たちと、仲間だと思っていた……みんなへ——……』
途切れ途切れのその声を聞きながら自分の背中に、じっとりと汗がにじむのがわかる。それでもここは、冷静に。決して動揺してはいけない。
『陰で悪口を言ってくれて、ありがとう。いつも調子に乗っててムカつく、ちょっと、可愛いからって……勘違いしてる……』
自嘲にも似た響き。胸がざわつくのを抑え私は落ち着いた声で割り込む。
「今、どちらからかけていらっしゃいますか?」
『……高いところ……周りには、だれもいない』
背筋が冷たくなる。キーボードに指を走らせ、すぐに位置情報の追跡を開始。GPSの赤いマーカーが点滅し、ビルの屋上と判明するや否や即座にヒーロー要請を送った。
『どうして……そんなこと、聞くの……?』
「自分を、傷つけようとしていませんか?」
一瞬の沈黙。その後、震える吐息に紛れるように返答が落ちる。
『そうね……そうかも。でも、もう決めたの』
心臓が早鐘を打つ。モニターを睨みながら私は食い下がる。
「何か飲みましたか?睡眠薬や、他に危険なものなど」
質問を重ねつつ、同時に指はキーボードを叩き続ける。新しいアラートを立ち上げ『自殺の危険あり』と、赤字で打ち込んだ。
『いえ——まさか……いや、飲んだかな……』
声が曖昧で、意識の揺らぎが感じられる。私はさらに続ける。
「そばに、刃物や危険なものはありますか?」
『刃物……? ハサミなら、あるけど……』
「それは今、手元に?」
『ない——。バッグの中に、入ってる……』
即座に『近くに凶器はなし』と入力する。心拍数が上がるのを自覚しながらも、呼吸だけは乱さないよう努める。その刹那——電話口から、力の抜けた声が落ちてきた。
『なんなのよ……それが、どうしたのよ……』
空虚さが滲み耳の奥に重く残る。私は一瞬だけ言葉を探すが、彼女は構わず続けた。
『さっき、言ったでしょ……わたし、みんなから嫌われている……って……』
嗄れた声が途切れ途切れに響く。私は、急いでキーボードに『話すスピードが遅く不明瞭。非協力的』と打ち込み、同時にヒーロー要請の返答が来ていないことに気づく。焦燥が胸を締めつける。すぐに現場へ向かえるヒーローを検索にかけ直し、候補のリストをモニターに走らせた。
『昔からなの……親からも、成績のことで文句を言われて……だから私は何をやってもダメ人間』
言葉の一つ一つが、諦めと自己否定で塗り固められている。胸の奥がひりつく。
『勘違い女……そうかもしれない。でも……自慢したかったの、ちょっとだけ……』
「……」
『けど、あんな人が私なんかの相手をしてくれるわけが……なかったのよ、ね……』
「……」
『はじめからみんな、友達なんかじゃなかった。私を、蔑みたいだけ……』
そのとき相手の声に雑音が混じっていることに気づく。ビル風にさらされるような響き。慌てて『おそらく高層ビル屋上』と項目を追加して打ち込んだ。
『でも、伝言なんて残しても無駄よね……あの子たちはきっと、気にもかけない……』
「私は、違いますよ」
咄嗟にそう口にしていた。思わず胸の内が滲み出る。
『……でも、聞いてくれない……本気ではね』
「……」
『こんな電話、取らなきゃよかったって思ってるでしょ……そうよ、迷惑よね……』
「いいえ。そんなことはありません。ちゃんと、聞いています」
『だから、何?どうせ……何も変わらない……』
喉が、詰まりそうになる。「私にもわかる」と言いたくなった。だがそれは禁句だ。自殺志願者に寄り添うつもりが、逆に突き落とすことになりかねない。規則と手順が頭をよぎり私は深呼吸をして声を落ち着かせる。
「今、私はあなたと繋がっています。あなたは一人なんかじゃない」
その言葉にヘッドセット越しに小さな呼吸音が震えた。沈黙の底にかすかな涙の気配。掌に汗がにじむ。
『もう……生きていたくない……消えたい……』
「……」
『……』
「……もしもしっ?」
返事はない。嗚咽を堪えるような呼吸音だけが聞こえる。胸の奥に冷たい不安が広がる。
「お話しできますか? 少しでいいんです。私と、話していてください。声を、聞かせて——」
必死に語りかけながら、目は、システム画面に釘付けになる。出動可能ヒーローのリストが更新され、ひとつの名が赤く点灯した。心臓が大きく跳ねる。息を呑み、言葉を失いかけたが、すぐに電話口の女性へと意識を戻した。
「今、こちらから救助に向かっています。どうか、そのまま私と、繋がっていてくださいね」
女性の声は泣き声と共に、かすかに震え続けていた。彼女の恐怖心が、痛いほど伝わってくる。
『……どうせ誰も、わたしなんか気にしてない』
「いいえ。そんなことありません。気にしてる。私はあなたの声を今、たしかに聞いていますよ」
『……うぅ、うう……』
「ね?……だから、大丈夫。」
もはや自分に言い聞かせるように、必死で繋ぎ止める言葉。無意識に、胸を押さえてしまった。そして視線の先、システム画面の右上にはっきりと浮かんでいた。出動中のヒーロー名、ホークスの名前が——。
「……ねぇ、聞いて?もし、あなたのもとに今、誰かが、駆けつけてくれるとしたら?」
『……え?』
「あなたを、あなただけを助けたくて——急いで飛んでいるとしたら、どう思いますか?」
電話の向こう、震える呼吸の隙間から、小さな声が返ってくる。
『信じられない……』
「じゃあ、信じてみて。もうすぐ、すぐそこまで、ヒーローが、来てくれる」
『ヒー……ロー……』
——その直後。別回線から、鋭くも頼もしい、ある一人のヒーローの声が響いた。
『——センター、ホークス現着しましたぁ〜!』
胸の奥が一瞬ざわめいた。だが私は必死に冷静を装い、定型通りの応答を返す。
「こちら、ヒーロー緊急支援センター。対象者は建物屋上、北側フェンス付近と推定されます」
『——了解。これ以上、近づけさせませんっ』
通信の向こうで、羽ばたく音が広がる。女性の嗚咽がわずかに和らいでいくのがわかった。私は深く息を吐き目を閉じた。風が頬をかすめ屋上に降り立った彼の姿を思い描く。フェンスにしがみついているであろう彼女の指先が震えているのを想像する——と、そのとき。画面に、現場映像が映し出された。そこには羽根を広げ慎重に対象者に歩み寄るヒーローホークスの真っ赤な背中。
『ねえ……そんなとこで、なにやってんすかー』
『……』
『危ないでしょー。ほら、風も強いしぃ』
軽口のようでいてその声の奥には真剣な響きがあった。だが彼女の掠れた声は未だ震えていた。
『……やめて——。来ないで……』
ホークスは目を細めてからふっとその目を伏せそして掌を上げて、敵意がないことを示す。
『…………もう、だれも、信じられない……』
『信じなくていいです』
『……え?』
『信じられなくていい。でも……こっち、見て。いまここにいるのは俺と、お姉さんだけなんで』
風が小石を転がす音すら、爆音に思えるほどの緊張。彼女は泣きはらした目を上げ、震える瞳で、目の前にいるヒーローを見つめた。
『落ちたいなら、俺が一緒に落ちますよ。でも、それでも最後まで隣に立ちます』
背中の剛翼がざわめく音。心臓の鼓動は、戦場よりも速い。彼女の肩が小さく震えて涙が鉄柵に落ちる。
『……どうして……来たの……』
それは怒りでも恨みでもなく、ただ弱さと混乱が溶けた、彼女の心の叫びだった。
『来るに、決まってるでしょ』
ホークスはもう一歩踏み出し風に揺れる羽根を背に、強く告げる。
『呼ばれたんですよねー。「助けて」って』
『……』
『声に出したかどうかなんて関係ない。でも俺の耳には届いたんで』
『……』
『見聞が広いんです、残念ながら』
フェンス越しに彼女が視線を合わせる。その目には絶望と、かすかな光が入り混じっていた。
『……もう、無理だと……思ったのに……』
『無理じゃない。ちゃんと、ヒーローがいる』
言いながらホークスが、そっと手を差し出す。
しばしの沈黙ののち、彼女は指を震わせながらもその手を掴んだ。その瞬間、たしかに何かがまたひとつ救われて、そして、繋がった気がした。
*
時計の針はすでに、夜の十一時を回っていた。玄関の鍵が開く音に、私は思わず姿勢を正す。ヒーロー活動を終えてようやく帰宅したホークス——いや……啓悟くんだ。羽根を軽く揺らして入ってくる彼の姿は、いつもとおなじように見えるはずなのに、なんだか、どこかぎこちない。
「おかえり……」
そう声をかけると彼はニカっと笑った。けれどその笑みの奥に影が落ちているのを見逃すことはできなかった。
「ただいま。あっ……ご飯、まだ起きて待っててくれたんです?」
「うん。せっかく一緒に住んでるんだし、どうせなら、一緒に、食べたいなって」
テーブルの上には、煮込みハンバーグとサラダ、それから味噌汁。引っ越してきてからの一週間、慣れないキッチンでどうにか整えた家庭の食卓。彼は「わぁ、いい匂い」と口では言いながらも、その動作にはどこか、重さがあった。洗面台へと歩いていく彼の背中を見送りつつ私は静かに皿を置き並べていった。
彼が手洗いうがいを済ませ、部屋着に着替えて席についた。向かい合って座った瞬間、やはり、胸の奥にざらつくものを覚える。箸を取る一つの仕草にもいつもの軽やかさが見えなかったから。
「んじゃ、いただきまぁす……」
「……どうぞ、召し上がれ。」
食事は和やかに過ぎていくはずだった。けれど会話の端々でふと途切れる沈黙が、彼の胸の奥に何かを隠していることを示していた。
食後、片付けを済ませてソファに並んで座る。テレビからは、バラエティ番組の笑い声が流れている。でも彼はそれに笑うことなく、ただ黙って私の肩に身体を預けてきた。
「……疲れた?」
そう問いかけてみても彼は「んー」と生返事をして腕を回してくるだけ。ほんのり温かい体温が伝わってくるのに、心の奥底までは届いてこないような気がした。
「今日の現場、たいへんだったもんね……」
「……ん?」
「あ、ほら……自殺——しそうになった子とか」
「……っすね。」
「……。」
——なにか抱えている。そう気づいてしまったけれど、問い詰める勇気は出なかった。彼が自分から口を開いてくれるまで、私はただ、寄り添うことしかできないのだと。すると彼は、テレビの光に照らされる横顔を伏せるようにしてぽつりと呟いた。
「……今日は、そばにいてもいいですか」
その言葉はいつもなら茶化すような響きを含んでいるはずなのに妙に静かで弱かった。彼の腕がぎゅっと強くなり背中に広がる大きな羽根が私を包み込む。
「今日はって言うか、もう、ずっとそばにいるでしょ……?」
「あー、うん……確かに。なんか、癖で」
「ふふ、そっか」
「……そばにいてください」
「……もちろん。」
私はそう答えて彼の胸に顔を預ける。温かい。鼓動もちゃんと聞こえる。けれどやはりどこかで引っかかる感覚が消えない。彼が求めているのはただの安らぎ?それとも何かを覆い隠そうとしているのか。心地よい抱擁に身を委ねながらも私のなかには、小さな疑念が残り続けていた。
その日、彼の腕に包まれたまま私は、ベッドに入った。穏やかな寝息がすぐ隣から聞こえてくる。大きな背中に守られているはずなのに、どうしてだろう。胸の奥がざわざわと落ち着かない。
瞼を閉じても眠りは訪れなかった。彼の言ったあの言葉——「今日はそばにいてもいいですか」という一言が、何度も頭のなかで繰り返される。まるで、頼られることそのものが、特別な意味を持っているように思えてしまう。
「……」
「……」
なにを隠しているんだろう……その問いを胸に抱えながら天井を見つめた。隣の彼はあまりにも安らかな顔で眠っている。その寝顔を横目に声に出せない疑問だけが胸に積もっていく。
結局、夜は深まり、窓の外に薄い光が差し込む頃になっても、私は眠れないままだった。夜明け前にうとうとしただけで、結局ほとんど眠れないまま朝を迎えた。ベッドの隣ではホークスがまだ眠っている。安らかな寝顔を見れば見るほど昨夜から胸に残った違和感は濃くなるばかりだった。
キッチンに立ち冷蔵庫から卵とベーコンを取り出す。じゅう……と油の弾ける音が、静まり返った部屋に小さく響いた。焼き加減を見ながら、心の中で自分に問いかける。どうして、あんな言葉を口にしたんだろう。そばにいたい、じゃなくて、そばにいてもいいですか、って——。
いつもなら冗談交じりで甘えてくる彼があんな風に弱々しく言った事が引っかかって仕方ない。私はフライパンを木べらで押さえながら深く息を吐いた。今朝は、それとなく聞いてみようかな。自分にそう言い聞かせて皿に目玉焼きを移す。その湯気の向こうに答えの見えない靄が広がっているような気がした。そのとき背後から足音がした。振り返ると寝ぼけ眼のホークスが頭をかきながらキッチンに現れる。髪はぼさぼさで、赤い剛翼の翼も、まだ重そうに垂れている。
「……おはようございまぁす。ん、いい匂い」
「おはよ。もうちょっとでできるから座ってて」
彼は大人しく椅子に腰を下ろしテーブルに頬杖をついた。まぶたは半分閉じたままなのにふっと笑ってこちらを見やる。
「同棲してから毎朝ごはん作ってくれますよね。なんか……贅沢してる気分」
私はフライパンをガス台に戻しながら少し声を軽くして返した。
「そう思うなら、元気に食べてもらわないと困るなあ」
「え?……ははっ。はいはい」
口調は変わらず飄々としているのにどこか笑い声が浅い。皿を彼の目の前に並べながら私は思いきって切り込んでみる。
「ねえ……昨日、なんかあった?」
ほんの一瞬、彼の瞳が揺れた。すぐに、笑みを作ったけれど、その口角はどこか無理に持ち上げられているように見えた。
「……べつに? いつも通りですよー?」
短い返事と同時に、声の温度がすっと下がる。会話を閉ざすようにして彼はフォークを取り上げ黙って目玉焼きを口に運んだ。
——やっぱり、なにか隠してる。そう確信した瞬間、胸に重いものが広がった。テーブルに並んだ皿の上で、フォークとナイフの音だけが乾いたリズムを刻んでいた。何度も、口を開きかけては飲み込み結局私は聞くべきか黙って待つべきかの狭間で揺れ続ける。正面にいる彼は、相変わらず表情を崩さず食事を進めている。けれどその沈黙の奥に何かがあるのは、明らかだった。
やがて食器を片付け終えると、彼は、ヒーロースーツの上着を羽織り玄関へと向かう。私は後ろからついていき、彼の背を見つめた。
「……行ってらっしゃい」
言葉がどうしても、硬くなる。彼は振り返って私の顔を見た瞬間その暗さに気づいたのだろう。一瞬だけ視線を泳がせてから気遣うようにふっと微笑み、肩を少しすくめて言った。
「……はい、行ってきます」
そう言って軽く唇を触れさせてきた。ちゅ、とリップ音が鳴る。けれど私は無意識に、その瞳を探るような目で見返してしまった。
わずかな疑念を含んだ視線に射抜かれた彼は、気まずそうに目を逸らす。そして急ぐように玄関の扉を開けて背中を向けた。バサリと翼の羽音だけが残り家の中は静まり返った。私は閉まった扉を見つめながら、深いため息をひとつ吐いた。