僕が君の手を握り返したのは

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  • 湘北高校、学校祭。
    俺のクラス、三年三組はメイド喫茶なんて馬鹿げた出し物をしていた。

    ……ったく、誰が来んだよ、女子高生のメイド服目当になんて。

    「三井ーっ!!」
    「名字、お前……!」

    ——え、マジかよ、
    可愛い……じゃ、ねーかよ!!

    「似合う?惚れちゃう?勃っ……」
    「アホかっ!」
    「痛ったァー、……」

    俺は卑猥な発言をする手前で名字の頭を叩いた。
    こいつ口開かなきゃクソ可愛いのにと思ってるのはきっと俺だけじゃねーんだろーな。

    「三井も時間あったら手伝いに来てね〜」

    ヒラヒラを手を振りフリフリのスカートで風を切って名字は走り去って行ったので、俺も自分の持ち場に戻った。


    「ねーねー三井サン、」
    「あ?」
    「バスケ部の屋台も落ち着いたし他のとこ見て回りません?」
    「あー、それもそーだな」

    という事で、俺は宮城と二人で適当に校内を回ることにした。

    三年三組の入り口に着き……

    オイオイ、何か賑わってねーか……

    「三井サンのクラスすっげー人だかりじゃん、何やってんスか?」
    「え、ああ……メイド喫茶だっけっか」
    「えっ!?いいの?」
    「何がだよ」
    「名前サン居んでしょ?」
    「まぁ……」
    「取られちゃうね、三井サンがもたもたしてっから」
    「う、うるせーよ」

    教室をチラりと覗いてみると人気も人気。
    しかも、名字の周りだけ。

    「あっ、三井ぃ〜!」

    俺と宮城のところへ駆け寄って来た彼女。
    宮城がニヤニヤしている理由は、きっと俺の不機嫌な顔にあるのだと思う。

    「宮城くんもお疲れ様!」
    「うん!名前サンかわいっスね〜!」
    「え〜またまたぁ〜!」

    そして名字は俺らに『特別チケット』と書かれた紙切れを渡して来た。

    「これあったら、わたしと通常の二倍お話できちゃうよ♪はい、宮城くんも」
    「わーいありがとう!水戸にあげよっと……」
    「はい、三井……」

     ― ガシッ…! ―

    俺はチケットを渡そうとした名字の手を思い切り掴んだ。

    「宮城、つか水戸にソレ渡すなよ!?」
    「……ハイハイ、」
    「名字ちょっと来い……!」
    「えっ、どこ行くの!?三井!?」

    そのまま俺は使用していない教室に名字を連れ込んで、興奮状態で捲し立てる。

    「お前バカだろ!なんなんだよ!」
    「えっ、何?」
    「他の奴らにチヤホヤされてんじゃねーよ!」
    「……へっ!?」
    「嫌………なんだよ、そーゆうの、」


    そう言って俺が手を強く握り返したのは










     誰にも渡したくなかったからで、



    (三井、それって告白?)
    (はっ!?)
    (じゃあ手繋いでってみんなに公表しーましょ♪)
    (……! まぁ、別にいーけど)

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