「えー!また告白ーー!?」
私の目の前でお弁当を食べていた友達が急に大きな声を出した。
「毎回そんなに騒がないでよね、」
「だって、わざわざ呼びに来てたよね!?三井くんの事!」
「そりゃー話があるなら呼びに来るでしょ」
「相変わらず冷めてるよねー、名前って」
だって……、何故他人の恋煩いに同調せねばならぬ。
——てか、
さっさと誰かと付き合っちゃえばいいのに。
「今月入って何人目〜?さっきの子を入れて。」
「興味ないっ!」
私は言い切って食べかけのお弁当の蓋をパタンと閉じた。
―
「あー、帰るのめんどくさいなぁ……」
放課後の誰も居なくなった教室で私はイヤホンを耳に突っ込んで、机に右頬をピタリと付けた。
私の家は最寄りの駅から徒歩三十分もある。
昨日、自転車のサドルが壊れたので今朝は早起きして駅まで歩いた。
と、いうことは帰りも必然的にあの長距離を歩かなければならない。
「………かよ」
「……?」
誰ですか、勝手に私のイヤホン引っこ抜く性格悪い奴は。きっと……犯人はひとりしかいないけれど。
机から頬を離して見上げるとそこには人気絶頂の三井が立っていた。
三井の手には私愛用のショッキングピンクのイヤホンが持たれている。
やっぱりコイツに取られたのか、愛用イヤホン。
「何?」
「まだいたのかよって」
「あ、うん。」
「てか返して」と三井の手からイヤホンを奪い取ると三井は私の目の前の席の椅子に腰を下ろした。
横を向いて座る三井に一応、尋ねてみる。
「部活は?」
「あ? まぁ……行くけど」
ふうん、と素っ気なく返して私は頬杖えを付いて瞼を閉じる。
「三井くんっ!」
その甲高い声に頬杖を付いたまま入り口を見やれば昼休みに三井を拉致しに来ていた隣のクラスの女子生徒の姿。
「やっぱり私……、諦められなくて!」
……あーっ、もう!!
ここでそんな青春マンガみたいな展開、繰り広げんじゃないよっ!
私は急いで両耳にまたイヤホンをぶち込んで耳から漏れる程の大音量で音楽を鳴らした。
そしてすぐに視界に見えてしまった、三井がその子に向かって入り口まで歩いて行く気配が。
あーあー、付き合え、付き合え。
もうその子でいーから付き合っちゃえー!
「……!」
「耳ぶっ壊れんぞ?」
「返してってば……!」
目を閉じて現実逃避をしていたら三井にまたイヤホンを取り上げられて、苛立ちを隠せぬまま私はガタン!と椅子から立ち上がる。
「名字、帰んの?」
「帰るっ!」
「なんで怒ってんだよ」
そんな三井の言葉をシカトしてズカズカと入り口に向かった私。
入り口に到着した時にくるりと勢いよく振り向いたら、柄にも無くスカートが少しふわりと舞った。
「私の方がずっとずっと、ずーっと前から! 三井の事好きだったし!」
赤面して自分勝手に吐き捨てて猛ダッシュ!
階段を駆け下りたところで、誰かに後ろから思い切り腕を引っ張られてしまう。
「言い逃げすんなよ!」
「………、に、逃げてない、」
「てか……早ぇーわ、逃げ足」
三井はそのまま掴んでいた手を私の腕からスッと下にスライドさせて私の手を握った。
「俺もずっと前から名字が好きだ。」
そう言われて私がその手を握り返したのは、
やっと素直になれたからで、
(……捕まっちゃったよ、)
(バーカ、捕まえてやったんだよ。)
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