最初に見たときは、たぶん、戦場の端だった。命の匂いが強すぎるあの場所で唯一他人の痛みに押し潰されるような顔をしていた人間が、この人だった。──名字 名前 先生。
 まだ、名前も知らなかった。けれど白衣の袖に血が滲んでいて、それでも手を止めなかったその姿を俺はひどく綺麗だと思った。綺麗、なんて。たぶん、ふさわしくない言葉だったと思う。でもあのときの俺には、それ以外の形容が思い浮かばなかった。しんとして、すごく澄んでて、誰かのために全力になれる人。たぶん、俺が持ってないものを、全部持ってる感じがした。

 それからというもの、運び込まれて出会って、名前を知って、また、運び込まれたふりをして、傷を、縫ってもらって「ここに来ていいです?」って冗談めかして言ったら「二時にお待ちしてます」って返ってきた。その瞬間、俺は、この人に会いに来る理由が、もうヒーローのそれじゃなくなったのを知った。
 嬉しかった。何も言われなくても、黙って傷に触れてくれる人がいるってことが。軽口をかわしてもどこかでちゃんと見てくれてる人がいるってことが。ずっと、誰にも気づかれずに笑ってきた俺には、その��見てくれてる�≠チてだけで、十分だった。でも──その��じゅうぶん�≠�超えて、もっと触れたいと思ったのは、俺のほうだった。

 一度約束を破ってしまった日のことは、今でも引きずっている。��ヒーロー�≠ニして優先すべきことがあった。でも��鷹見啓悟�≠ニしては、あの日、彼女の前に立てなかったことが、今もずっと心に引っかかってる。言い訳にしかならないからたぶんもう口にもしないけど。
 そして、避けられたあの日。現場で目が合ってでも何も言えなくて、すぐに後ろ姿が遠ざかってどうしようもなく、空が遠かった。

 ──そんなに俺のこと、嫌いです?

 そう聞いたのは、たぶん、俺の中のどこかが、もしここで全部終わるなら、聞いておきたいって叫んでたから。
 返事はなかった。でも、それでいいと思った。返事がないってことは完全には拒まれてないってことだったから。
 それから、どうしてもまた会いたくて、また、羽根を落とそうかと本気で考えて、それでも何か違うって思って。言葉じゃなくて行動でちゃんと伝えようって思った。待っててくれるかもしれない。いや、待ってなくてもいい。ただ、ちゃんと来たってことを、ちゃんと想ってるってことを、本人に直接、伝えたかった。でも、彼女の目は、まだ揺れてた。何かを守るように距離を取るその姿を見て俺はやっと気づいた。彼女がブレーキを踏んでるのは俺自身にじゃなくて��ヒーロー�≠ニいう肩書き、そのものなんだって。
 命を運ぶ職業に就く人間にとって死に近い誰かと関わるのは、怖い。それは、痛いほどわかる。俺だって、置いていかれる側の顔を、何度も見てきたから。でも、それでも……。

『好きになってください』と言うつもりはない。ただ『好きになってもいいような俺になります』って、そう思った。
 俺はあの人に出会った瞬間からずっとあの人のことが、好きなんだ。たぶん……いや、きっと、最初から、ずっと。
 言葉はもうしばらくいらない。でも羽根の代わりに、俺の背中が届けられるように。そうやってまた会いに行くつもりだ。たとえ今は振り返ってもらえなくても。それでも欲しいから、我慢できない──。


 *


 決意、というのは、いつだって小さなものだ。誰かが思うような劇的な何かではなく、本当に、たったひとつ呼吸を深く吸い込むだけのような、そんな微細な衝動から生まれる。
 私の『もう一度だけ会ってみよう』は、そんなきわめてささやかで、静かな衝動だった。でも、それはたしかに、間違いなく自分の意思だった。あの夜、彼が焼き菓子を持って現れたとき、私は受け取らなかった。けれど、そのあと彼が去ったあと、いつまでも匂いだけが指先に残っていた。彼の言葉より、行動より、その、残り香のようなやさしさが、私をずっと縛っていた。

 ああ、この人を、きっと私は、嫌いじゃない。むしろ、忘れたくなんてなかったんだ。気づいてしまったなら、少しだけでもこちらから動かなくてはならない。そうでなければ私はずっと自分の臆病さに、飲み込まれたままになる。そして私は意を決して、小さなメッセージを送った。


名前

この前の焼き菓子まだ一緒に
食べてませんでしたよね






 ほんの一文。絵文字も、何も、入れなかった。でも送信ボタンを押した指は確かに震えていた。すぐに既読がついた。それからほんの数十秒後。


鷹見啓悟

先生、今どこですか
あと5分で行けます






 あまりに速すぎるその返信に私は思わず笑ってしまった。変わらない。この人は、相変わらず、そういう人だった。
 再会は控えめな風の午後だった。人気の少ない裏手のベンチに彼は現れ、以前と変わらぬ調子で手を振った。

「会えて、うれしいです」

 その言い方があまりに自然で、私は照れ隠しのようにふいにこんな質問を投げかけてしまった。

「……ホークス、いくつでしたっけ?」
「21です」
「……結構、離れてますよね?」
「気にしません。だって俺、お年寄りと美人と、子どもには優しいんで」

 ああ、まただ。この軽口、この軽薄さ。この、飄々とした態度。それなのに、言葉の奥がなぜかまっすぐに響いてしまう。私はわずかに唇を引き結びながら、あえて間を空けて、ふっと言った。

「……じゃあ、ひとつだけ当てはまりますね」
「え、どれです?」
「年寄り」

 彼は一瞬、大きく目を見開いた。それからほんの少しだけ頬を染め、やがて破顔し堪えきれずに無遠慮にも吹き出した。

「それは、ちょっとショックですねぇ……いや、俺としては��美人�≠フつもりだったんですけど」
「ごめんなさいね。とりあえず、軽く刺しておきました」
「いやあ、いいです。刺されるなら先生がいい」
「なに、言ってるんですか……」

 苦笑しながらも胸の奥では、何かがやわらかくほどけていた。この人はいつも距離が近い。でもそのくせ本気の言葉を言わない。けれどちゃんと待っていてくれる。そんな人だとやっとわかってきた。
 私は深呼吸のような間を置いて少しだけ視線をずらしながら言った。

「よかったら、今度改めて。ちゃんと……食事、行きませんか」

 言い終えた瞬間、彼は、あまりにもまっすぐな顔で私を見た。その瞳には一切の冗談がなくて、私は、胸が痛くなるほど焦った。でも次の瞬間、彼は、信じられないくらい嬉しそうな顔をした。

「え、それ、本当に? 本当に言いました?」
「……言いましたけど」
「じゃあ俺、今日からそれを生きがいにします」
「生きがいにしないでください。重いです」
「はい、じゃあ趣味にします」
「それも変です」

 笑いながら私はもうこの人を拒む理由を探していなかった。一歩だけ、のつもりだった。けれど気づけば、私はちゃんと、彼の隣に並んでいた。
 今度こそ、何も起きませんように。そう願ったのはたぶん初めてで、同時に小さな一歩だった。


 *


 こんなに服を選ぶのに時間をかけたのはたぶんここ数年で、初めてだろう。デートらしいデートなんて、いつぶりだろうか。日々に追われ、気づけばここまで来てしまった。
 ��ヒーローとごはん�≠ネんて、どこか遠い国の物語みたいで、それでも、現実に約束した今日が来てしまったのだから、私はもう逃げるわけにはいかなかった。

「気合い入れすぎたら、逆に変……?」

 鏡の前でひとりつぶやきながら、私はシャツのボタンを一つだけ開けてみたり、閉じてみたりを繰り返していた。結局、選んだのは清潔感重視。どこかで職業柄を抜け出せない自分に、少しだけ苦笑してしまう。でも、それでいいと思った。
少なくとも私は私のままで、今日を迎えたかったから。
 しかし、そんな私の苦労も知らずに待ち合わせ場所に現れた彼は、驚くほど自然体だった。

「あれ?名字先生、いつもと雰囲気違いますね」
「……そう、ですか?」
「……あ、それ誉め言葉です。むちゃくちゃ可愛いですよ」

 はじまった。開口一番これだ。何のためらいもなく言うその軽さに、私はまたしても顔を背けてしまう。

「……可愛いとか、言わなくていいです」
「でも、俺の本音ですから。言わないと、損するかなーって」
「損得で話すの、やめてもらっていいですか」
「じゃあ、今日ずっと言ってます。先生かわいいって」
「それが一番困るんですけど……」

 でも心のどこかではその声を聞きたくてここに来たのだと、自分でも、痛いほどわかっていた。
 ふたり並んで歩く道は、どこかくすぐったくてけれど不思議と、安心感があった。車の音、夕焼けの色、通り過ぎる人たちの気配。どれもがやけに鮮やかで、日常の中にこの人がいることがまだ信じられなかった。そんなときだった。

「……あっ、」

 彼の声とほぼ同時に、彼の足が、ふいに段差に躓いた。軽くバランスを崩したその拍子に、彼の肩が、私の肩にぶつかって──

「わっ、ごめんなさい!」

 思わず私の腕を取った彼の手が、そのまま私の指を軽く包んだ。ほんの一瞬。ほんとうに、一瞬だった。けれど、その偶然の指先が思いがけず、体温ごと、心に触れてしまった。

「す、……すみません!つい、反射で」

 彼が慌てて手を離そうとしたそのとき、なぜか私は自分の手を引かなかった。

「……大丈夫です」

 それだけだった。でも、彼はその瞬間、まるで子どもみたいな顔をして笑って言った。

「じゃあ……ついでに、もうちょっと握っててもいいです?」
「それは、��ついで�≠カゃ、ないでしょ……」
「ですね。じゃあ、本気で握ってもいいですか?にします」

 言葉だけ見れば完全に軽い。軽薄なそれ。でもその指先から伝わる圧は、ほんの少しだけ震えていた。この人も、きっと今日を、私と同じくらい緊張して迎えたのだ。そのことに気づいたとき、ようやく私は、彼の存在を特別として、受け入れられる気がした。
 予定のレストランの灯りが見えはじめたころ、彼が、ふと言った。

「……先生。あの、今日来てくれて、ありがとうございます」
「……え?」
「いや、ずっと……今日みたいな日が早く来ればいいなって思ってたんで」

 私は少しだけ、顔を上げて笑った。

「こっちの台詞ですよ。こちらこそ、ちゃんと、会いに来てくれて、ありがとう。」

 今夜は、ただふたりで、食事をするだけ。それだけなのに、私はこの瞬間、人生でいちばん心を奪われていた。
 あなたと歩くこの道が、これからも続いていきますように、なんて願ってしまうくらいには。

 彼が予約してくれたレストランは派手ではないけれど、照明がやわらかくて、音楽も控えめで、話をするための空間として、とても居心地のいい場所だった。彼はやはりいつものように気さくででもどこかいつもより言葉を選んでいるようにも見えた。たとえば「先生、緊張してます?」と、笑って言いながらも、自分のほうが先に水を飲み干していたりパンを食べるタイミングをこちらに合わせようとしていたり、そういう細やかな配慮が、逆に彼もこの日を大事に思ってくれていると感じさせてくれた。

「こうして、ちゃんと席に着いて話せるのって、なんか、不思議ですね」

 そう言った私に彼はふっと笑みを浮かべながらナプキンをすこし雑に折りたたみ、視線をそらすようにして言った。

「ほんとに。今まではケガしてるか羽根が落ちてくるか、どっちかでしたからねぇ」
「その言い方だと、事件か事故かしかないみたいですね」
「いや、先生は事件寄りです。……俺の心的に」
「……軽く通報されますよ、それ」

 冗談を交わしながらもグラスの中の赤いワインがゆるやかに揺れるたび、胸のどこかが不思議とあたたかく満たされていく。
 この人は、本当に人の間合いに入るのがうまい人なんだと思った。でもそれは、軽いという意味ではなく相手がどれくらいの距離なら安心できるかを、きちんと肌で、理解している人なのだと。
 なのに、その穏やかな時間を思いがけない音が破った。彼のスマートフォンが静かに鳴ったのだ。マナーモードでもその音はテーブルに触れた振動でわかる。一瞬、彼の表情が変わるのがわかった。そして私が口を開くより早く、彼は一言、「すみません」と小さく断りを入れて電話をとり席を立つ。
 景色が一望できる、大きな窓ガラスの方に体を向けて短く、低い声で話す彼の姿が、店のガラス越しに見える。表情までは見えなかったけれど、その背中には確かに��ヒーロー�≠ニしての空気が戻っていた。
 ああ、やっぱり。どこかでそう思ってしまった自分がいた。この人はやはり、私とは違う場所にいる。一緒に食事をしていても、いざとなれば、いつでも��世界のほう�≠�優先できる人。そんな覚悟を持ってる人。
 けれど、数分後。彼は電話を切って、真っ直ぐ戻ってきた。

「……すみません、事務所からでした。でも急ぎじゃないって判断したんでちゃんと切りました」
「……」
「今日は大事な用事があるって伝えましたから」

 その声がやけに優しくて。それが逆に、さっきまで私の中に生まれかけていた諦めを、まるごと撫でて包んでしまった気がした。

「……ありがとうございます」

 私は素直にそう言った。心の底から本当にそう思ったから。彼は今日だけは��私の隣にいる方�≠�選んでくれた。それだけで、きっともう今夜は十分だったから。

 帰り道。人通りの少ない通りを、並んで歩いていたとき、ふと彼が、信号の前で足を止めた。

「……先生。」
「はい」
「手、つないでいいですか?」

 その一言に鼓動がひとつ大きく跳ねた。完全に油断していた。あんなに言葉をかわしてあんなに自然体で笑っていたのに。この、たった一言で、一気に体温が上がるのだから不思議だ。私は一拍間を置いてから、小さくうなずいた。それだけで彼は手を差し出した。いつか偶然触れた、あの手より、ずっとあたたかくて、ずっと丁寧だった。信号が青に変わるまでのほんの数十秒、私たちは何も話さなかった。ただ、繋いだ手だけが互いの距離を語っていた。

「……名字先生」
「……はい?」
「俺、いま、人生でいちばん、静かな気持ちかもしれません」
「……それ、落ち着いてるってことですか?それとも、緊張してます?」
「両方ですね。でも、ちゃんと��今�≠セけに集中できてるって意味です」
「……私も、たぶん。同じです」

 彼が笑った。私も、笑った。その小さくてささやかな笑い声が、夜風のなかにすこしだけ、長く溶けていった。
 また、会いたいと思った。何度でも、この人の隣を歩きたいと、そう思った。ふたりで手をつないで歩く夜道が、こんなにも静かで、こんなにも胸を締めつけるなんて、今まで知らなかった。
それはたぶん、この人の掌があたたかすぎるせいだ。それとも私の掌が思っていたより正直だったせいかもしれない。ただ、それだけ。ただ、つないで歩いているだけなのに鼓動の音ばかりが耳の内側に響いてくる。

「……先生って、手、あったかいんですねー」
「それ、さっき私も思ってましたよ」
「じゃあ、相性いいってことですかね?」
「そうやって、すぐ都合よくまとめるの、やめてください」

 そんなふうに冗談を言い合っていたのにある角を曲がった瞬間から急に、会話が途切れた。目の前に広がる、誰もいない小さな公園。時計の針はもうすぐ二十二時を回ろうとしていた。静かだった。街灯の灯りがふたりの影をつくる。近すぎる距離に、風がそっと吹く。そして彼が、少しだけ立ち止まった。手はつないだまま。でもその手のぬくもりの意味が、急に変わった気がした。
 ──あ、と思った。彼が、何かを言おうとしている。けれど言葉よりも先に彼の目線が私の唇に落ちた。何かが喉の奥で止まる。息を飲む音すら出せない。このまま、顔を上げたら、たぶん……

「……」
「……」

 彼が少しだけ近づいた。距離にすれば、ほんの20センチ。でも、それは明らかにそういう空気の中だった。鼓動の音が、急に大きくなる。視線を外せない。けれど口を開く勇気もない。彼は言葉を飲み込み、ふいに片方の手で私の髪の毛の端をそっと払った。指先が頬に触れる。それだけで、息が止まりそうになる。
 そしてほんの数秒、私たちはあと��数センチ�≠フ距離にいた。けれど──

「……ごめんなさい」

 私が言った。無意識だった。でもたぶんそれが限界だった。彼は、少しだけ目を伏せて、素直にゆっくりと手を引いた。

「いえ、こっちこそ……焦らせちゃいましたね」

 その声があまりにやさしくて、そのやさしさが逆に、苦しかった。

「……嫌じゃ、なかったです、よ。」

 私は小さな声でそう言った。「ごめんなさい」だけで終わらせたくなかったから。ほんとうは、そのままでもよかったかもしれない。でも、まだ��怖さ�≠フほうが勝っていた。彼は笑った。いつものあたたかくて、でも少しだけ切ない笑顔で。

「……じゃあ、次はちゃんと、待ちます。」

 少しだけ苦笑したような声だった。けれどその奥にあったのは、どこまでもまっすぐで、揺るがない眼差しだった。私は、言葉を返せなかった。なのに彼は、責めることもなく、ただ、少し間を置いて言葉を継いだ。

「辛抱強いですよ?俺。」
「……」
「先生が、ほんとうに触れたいって思ってくれるそのときまで、ずっと、待ちますよ」

 その言葉に、私はまた、恋をしてしまいそうになった。本当にチョロいなと、自分でも呆れる。さっき自分で距離を取ったばかりなのに。自分で線を引いておきながら、その線を、踏み越えたくなってしまうなんて。
 帰り道の残りの時間、私たちはもう手をつながなかった。けれど、ふたりの間に流れる空気だけは、確かに変わっていた。言葉にしなくてもわかる。心の距離はもう、引き返せないところまで、近づいている。
 あと、ほんの数センチ。あの距離を私はきっともうすぐ自分から越えるのだと思う。そのときがきたら彼は、笑ってくれる気がした。それだけで今日の夜は、少しだけやさしくなった。


 *


 そのニュースはあまりにも唐突に、あまりにも��現実�≠ニして、目の前に現れた。

 『ホークス、人気モデルと深夜の密会!?
  すでに、半同棲か? ヒナドリ騒然。』

 見出しは文字数の中で最大限の熱を孕み画面の中で並ぶふたりのシルエットは、見慣れた羽根と誰もが知っている、あの、華やかな笑顔だった。彼女は、今をときめく個性持ちのモデルであり、明るくてスタイルがよくてカメラの前に立つ姿は完璧だった。それに比べて私は──病院と現場、寝るために帰る自宅を行き来し髪を束ね、白衣のポケットに、消毒薬とペンを差し込んだだけの、どこにでもいる医者。
 写真の中の彼は、笑っていた。いつもと同じ、軽やかな笑顔。けれどそれが私だけに向けられたものではなかったと改めて知ったとき、胸の奥に静かに火が灯った。それは怒りではなく失望でもなく、ただ自分に戻るための、熱だった。
 ──やっぱりね。私はそう、心の中で呟いた。どこかでわかっていたのだ。彼の隣は私のような人間が立つ場所ではない。あの人は空を飛ぶ人で私は地に足をつけて今日を生きるだけの人間だった。触れそうになった夜、もう少しで唇が重なりそうだったあの夜すら、今思えば夢のようなものだった。

「……あんなふうに、笑うんだなぁ。」

 誰にも聞こえないようにそうつぶやいて、私はスマートフォンの画面をそっと伏せた。指先が、かすかに震えていた。けれど、涙は出なかった。これは恋ではなく、きっと��現実�≠セったから。

 その日の夜は、いつもよりも遅くまで働いた。同僚たちは皆、人気ヒーローと人気モデルのゴシップの話題を話していたけれど、私は話題に乗ることも、否定することもなく、ただ静かに聴いているだけだった。

「まっ、ヒーローなんてみんなモデルとか、アナウンサーとくっつくのがオチでしょ」
「ほんと、絵になるもんねー」
「ホークス、ほんとかっこいい〜!」
「羨ましいわ〜、あのモデル」
「住む世界が違う私たちになんて縁のない話よ」

 笑い声が、やけに遠く感じた。それは私自身の心がすでにこの場所から少しだけ離れていたからかもしれない。
 その日の帰り道。私はふとポケットに手を差し込んだ。そこにはまだ、彼の羽根が残っていた。本気で��お守り�≠ンたいにして持ち歩いていた
自分に呆れ返る。
 『預かっていてほしい』と笑っていた声が一瞬だけ耳の奥に蘇る。けれど私はそれを握りしめたまま何も言葉をこぼすことができなかった。私がこの羽根を持っていていい理由なんて、もうどこにもないのに。そして、気づいてしまう。今いちばん辛いのは��信じられないこと�≠ナはなく��信じたい�≠ニ思ってしまっている、自分なのだと。そして彼からの連絡は、その日、届かなかった。


 *


 しかし便りは、思っていたよりも早く届いた。というより、むしろ��届いてしまった�≠ニいう、気持ちのほうが、強かったかもしれない。


鷹見啓悟

話したいことがあります
少しだけ時間ください






 それだけ。あいかわらず、絵文字も何も入っていない。けれど送信者が誰なのかは、もう見なくてもわかっていた。
 そして数時間後。私はその日、派遣先の現場に出ていて処置を終えたあと、医療テントの裏手で彼と顔を合わせた。久しぶりの対面。けれど彼はいつもの軽やかさをどこかに落としてきたみたいにして息を整える間もなく駆けつけてきたような足取りで、目の奥が落ち着いていない。それが、あの彼にしては、珍しかった。

「……あの、あれ、ほんとに違うんですよ!」

 先に口を開いたのは、彼のほうだった。声が、少しだけ掠れて震えている。

「報道されてたモデルの人、たしかに、たまたま一緒にいたのは本当ですけど、でも付き合ってるわけじゃないし。俺が気があるとか、そういうのほんとに全然なくて」

 言葉がせわしなく重なる。いつものように言葉を選んで話している様子ではなかった。状況を、整理してから話すことが得意な彼が、今はもう、自分でも追いつけないような速さで、言葉を吐き出していた。私はその様子をどこか少し客観的に見ていた。表情をつくらず、声もあらげず、ただ静かに彼の動揺を受け止めていた。それは、自分自身の心を、守るためだった。

「……別に。いいですよ、気にしてません」

 そう言った自分の声が、驚くほど冷たく響いていた。けれど、それしか、言いようがなかった。本当は、気にしてしまっていたからこそ。けれどそれくらいの距離がなければ、私は立っていられなかった。

「だって私たちって、なんていうか……そういう(・・・・)関係(・・)じゃ、ないですし」

 言った瞬間、彼の表情が、一瞬だけ止まった。けれど私は言葉を止めなかった。止めてしまったら、きっと、自分の心が泣き出して、もう二度とその続きを言えなくなってしまう気がしたから。

「こっちが勝手に誤解してただけかもしれないしああいう人と並んでるほうが、絵になるし……」
「……」
「お似合いですね、とっても」

 その最後の一言を、私は笑いながら言った。
けれど、自分でもわかっていた。その笑いがどこにも届かないことを。それが自分の心を守るためだけの盾でしかないことを。だって本当は、心のどこかがずっと、悲鳴を上げていた。言葉にならないまま、泣きたがっていた。
 彼は沈黙した。目を伏せ、唇をかすかに噛み、何かを飲み込もうとしていた。けれどそれは一瞬だった。

「お似合いって……それ、本気で言ってます?」

 声のトーンが変わった。普段の軽さが消えて、深いところから滲む怒りと痛みが混ざっていた。

「先生が、そんなふうに言うって思わんかった」
「……は? なにがですか。私はただ──」
「ただって、なん?こっちはちゃんと伝えようとしとった。先生のこと、本気で想うとったばい」
「……、」
「報道に名前出されたときだって、誤解されたらどげんしようって真っ先に考えとったんは、ヒーローとしての立場とか世間の目とか誰の期待でもなくて……先生やったとに」

 その言葉が静かに、けれど確かに胸の奥に突き刺さった。呼吸が、一瞬だけ止まる。何かを返したいのに、言葉がうまく、形にならなかった。

「俺ばっかり、バカみたいっちゃけど......一人で突っ走りよったんやろう?」

 彼の声はもう熱ではなく、冷たさに近かった。沈んでいくような、諦めに似た温度。私は、言い返せなかった。なにも、言えなかった。唇が震えそうになるのを歯を噛んで抑えた。彼はそれ以上なにも言わず、ただ視線をそらし、深く息を吸い込んだ。まるでその空気に、感情のすべてを押し込めるようにして。

「もう、よか。先生がそれでいいなら、俺もそうします」

 そう言い残して彼は羽根をやや乱暴に広げた。一瞬の風圧とともに空へと舞い上がる。私はただ見上げることしかできなかった。その背中を引きとめられなかった。胸の奥がひどく静かに痛んでいた。その背中が、こんなにも遠く感じたのは、きっと、初めてだった。
 ほんとうはただ『信じたい』と言えばよかったのかもしれない。『不安だった』『怖かった』と正直に言えば、こんな風にはならなかったのかもしれない。けれど、いちばん言いたいことはいちばん言えないまま、ただ、風に消えていった。

 彼の背中が夜空に消えたあと、私は、長い時間その場を動けずにいた。足元には、小さな羽根が一枚落ちていた。風に舞って、置き去りにされたようなそれは、どこか、私の心と重なっていた。指先が震えていたのは夜風のせいではなかった。言葉が出なかったのも、驚きのせいではない。
わかっていたのに。あんなふうに言えば、優しい彼が傷つくって。あんなふうに突き放せば距離ができるって。それでも私は「お似合いですね」といちばん、意地悪な言葉を選んだ。ほんとうは、違う。ほんとうは、悲しかった、羨ましかった。
あの女性みたいに堂々とあなたの隣にいられたらって。でも、私はそれができなかった。いつも、強がって、ちゃんと想いを言葉にすることができないまま彼に傷つける自由ばかりを与えていた。

 あのとき、『嫌です』って、言えばよかった。『信じたい』って『信じてます』って言えばよかった。
 手のひらに残る、あたたかさ。触れそうで触れられなかったあの夜のことが、今になってやけに痛い。私はそっと目を閉じた。何も終わっていないのに、何かが一瞬で壊れてしまった気がして、声に出せないまま涙だけがひと筋零れていった。


 風がやけに冷たかった。高層ビルの屋上に降り立って、羽根を畳んでからもしばらく、動けなかった。彼女の言葉が、何度も頭の中で、リピートされる。

 『──お似合いですね、とっても。』

 それがただの冗談じゃなかったことは、彼女の目を見ればわかった。笑っていたけど笑っていなかったから。平気そうな顔をしていたけど指先はほんの少し、震えてたから。
 あんなふうに強がることしかできない彼女を、知ってたはずだったのに。なのに俺は──あんなふうに怒鳴って俺ばっかりバカみたいだ、なんて言ってしまった。
 ほんとうは、彼女が信じられなくて悲しかっただけだった。あの一言に『俺は誰よりもあなたを信じてる』って『あなたなら信じてくれる』って裏返しの気持ちをこめたかっただけだったのに。

 ──ああ、俺。またやっちゃったなぁ、これ。

 格好つけたかっただけなのに。子どもみたいに拗ねて、傷つけて。
 大人になりたかった。ちゃんと、認めてもらいたかった。誰よりも深く、彼女の心に届く特別になりたかった。彼女が、これまでに関わってきた誰かの影すら、ぜんぶ、霞ませるくらいに。

 手すりに額を預ける。高所の風が背中の羽織を鳴らす。だけど、どれだけ風が冷たくても、胸の奥はずっと熱くて、苦しかった。どうしてあんな言い方しかできなかったんだろう。自分の想いを守ることばかりに必死で、本当は誰よりも大切にしたかった人の心に気づけば、いちばん深い傷を残していた。いつも、考えすぎては肝心なときに言葉を見誤る。そんな、不器用な自分が嫌いで。けれどそれを隠してまるで、何でも器用にやっているふうに立ち回る自分は、それ以上に、もっと嫌いだ。
 もし、もう一度会えたら。そのときはちゃんと言おう。『好きだ』って。『あなたじゃなきゃ、ダメなんです』って。言葉で。きちんと、まっすぐに。でも今はその距離を埋める術もなく、ただ彼女の不在だけが、静かに胸の中を埋めていた。名前を呼ぶことすらできない空白が、こんなにも苦しいものだなんて。今さら知った俺はやっぱりまだ、未熟すぎる。けれど、だからこそ。次は、きっとちゃんと、��大人�≠ノなりたいと思った。


 *


 焼き鳥の匂いが、ふいに鼻をかすめた。煙と、たれの焦げた甘い香り。路地裏にある安い提灯が風に揺れて、ひとつゆらりと朱に染まっていた。
 私はただ、仕事帰りに少しだけ寄り道をした、ただ、それだけだった。気分転換のつもりで、いつもは通らない道を歩いてみようと思っただけ。──なのに。本当に、��それだけ�≠セったのに。目の前の店の暖簾をくぐって出てきたのはよりによって、彼だった。
 鷹見啓悟。ヒーロー、ホークス。そしてずっとあの数週間前の夜から私の中でまだ整理のついていない人。

「……あ、」
「あ……、」
 
 ふたりの声が同時に出た。そのあと同時に口をつぐむ。彼は私を見るなり気まずそうな顔をしてそれでもどこか、安心したようにも見えた。

「先生も……お帰りで?」
「……はい。偶然ですね」
「ほんと、偶然ですねぇ」

 その��偶然�≠ェ、どれだけ意味を持つかなんてふたりとも言わなかった。
 ほんの少しだけ歩いて、なぜかふたりとも同じ方向に足を向けていた。帰る場所は違うはずなのに、たぶん、気持ちの出口だけが、同じだったのだと思う。彼は少し前を歩いていた。私は、彼の背中を見つめながら、何か、言葉を探していた。けれど、彼のほうが先に口を開いた。

「ほんとは、ああいう居酒屋とか、庶民的なのが好きなんですよねー、俺。」
「……」
「さっきの店、焼き鳥屋でカウンターしかなくて店主のおっちゃんの背中ばっかり見ながら飲むんですけどね。なんか、落ち着くんで」

 その言い方があまりに自然で、そしてちょっとだけ、ほろ酔いしているような、けれど不思議と素面よりも彼らしい声だった。

「このあいだはレストランとか、ちょっと背伸びしました」
「……」
「ああいうとこ行ったら、ちゃんとした大人に、見えるかなぁって。でも今思えば、全然俺らしくなかったかもって」

 私はふいに立ち止まりそうになった。彼の言葉の端々が、どこまでも、私に向いていたから。

「……レストラン、よかったですよ」

 私は、ようやく口を開いた。彼が不意に背中を向けたまま立ち止まる。それに合わせて私も足を止めた。

「たぶん、どこでもよかったと思います。あなたと、一緒にいられるなら」

 そこで彼が振り返って、まるで何かを確認するように私を見た。酔いのせいか、目の奥が少し、潤んでいるようにさえ見えた。

「その言葉……もう少し早く聞けてたら、たぶん俺、泣いてましたよ?」
「……今でも、ちょっと、泣いてません?」
「……ギリ、泣いてないです」

 彼がふっと笑った。その笑みはどこか嬉しさと少しだけ寂しさが混ざっていて……私はつられるように笑い返した。情けない顔になってしまったのが、自分でもわかる。それでも、ようやくこうして、笑い合える場所に戻ってこられたことが、胸の奥をじんわりと温めていた。

「名字先生、」
「……はい、名字です」
「今は……俺のこと、どう思ってます?」

 その問いに、私はすぐには答えられなかった。けれどもう、嘘はつきたくなかった。逃げるのもやめたかった。だから私は視線を落とし、足元を見つめたまま、少しずつ言葉を探して口にした。

「……まだ、好きだと思ってしまってます。でもそれを言葉にするのが、ちょっとだけまだ、怖いんです」

 彼は何も言わなかった。けれど、ふっと小さく息を吐いて、そのあと一歩だけ、私に近づいた。

「じゃあ俺のことは……��焼き鳥屋から出てきた若造�≠チてことにしといてください。そしたら、たぶん、先生もちょっと、気楽でしょう?」

 その言い方があまりにも場に似合わず、くだらなくて、それでいて、彼らしくて、思わず笑ってしまった。

「……はい。��ただの焼き鳥の人�≠ナす。」

 彼がまた少しだけ笑って、それからごく自然な動きで私の隣に並んだ。肩が触れそうで触れなかった。けれど、もう以前のような冷たい距離ではなかった。これはきっと偶然がくれた優しい修復だ。ほんの少しだけ遠回りした心が、ようやく、ひとつの名前で呼び合えた気がした。きっとそれでよかった。一気に進まなくても、こうして少しずつ、笑いながら近づいていけるならそれはもう��恋�≠ニ呼んでも、いい気がした。

 その夜、私は夢の中で、誰かと一緒に焼き鳥を食べる夢を見た。夢の中でその誰かは『塩派ですか、タレ派ですか』と、聞いてきた。私は塩だと答えた。その相手は『やっぱり』と笑っていた。それが、どうしようもなく幸せで、嬉しかった。


 *


 その日は、風がやわらかかった。数日前のあの夜、偶然を装って出会った、焼き鳥屋の帰り道。何も決めずにただ一緒に歩いて、何も約束しないまま別れた。けれどそれでもどこかでまた会える気がしていた。いや正確には彼なら来るだろうとどこかで知っていたのかもしれない。そしてそれは、思っていたより、早く訪れた。
 派遣先の勤務がひと段落した午後、医療テントの裏に回ると、風の流れに紛れるようにして彼の姿があった。姿勢はいつも通り軽く見えて、でもその両手がポケットに入ったままなのが、彼の、本気の��印�≠フような気がした。私の存在に気づくと、彼は軽く顎を引いて、深く息をついた。

「少しだけでいいんで、ちゃんと時間もらってもいいですか」
「……はい」

 私は短く答えて、その場に立ち止まったまま、彼を正面から見つめた。

「このあいだ、焼き鳥屋で偶然会えたの──俺にとっては、ちょっと……救われた瞬間でした」
「……私も、そうでした」

 口にした途端、少しだけ、頬が熱くなる。彼はそれを聞いてからほんの少し目を細め、それからまっすぐ、私に視線を戻した。

「ちゃんと、話しますね」

 その声にはもう、軽さはなかった。彼が本気で話すときはいつだって空気ごと、静かに変わる。

「俺……たぶん最初に先生を見たときから、もうずっと、気になってて。正確に言うと、一目惚れだったんだと思います」

 その言葉に心臓が、静かに跳ねた。音を立てるほどではないのに自分の内側だけがそっと揺れた気がした。

「血まみれで、疲れてるはずなのに。それでも、誰よりもまっすぐ誰かを救おうとしてる人だってそのとき感じたんですよね、俺。」
「……」
「……綺麗だって、思いました」

 彼の目には笑いも、ごまかしもなかった。どこまでもただ一つの感情を、気持ちだけを、宿していた。

「だから、また会いたいと思って……ごはんにも誘ったし、ほんとうは、もっとたくさん、触れたかった」
「……」
「でも俺はヒーローで、あなたは医者で。きっと何かを預かる側の人間同士で気持ちを預けるのが怖いって、どこかでお互い、思ってたんだと思います」
「……」
「違います?」

 私は小さくうなずいた。彼の言葉は私がうまく整理できていなかった感情を静かになぞるような響きだった。

「でも、俺──もう一度ちゃんと向き合いたい。怖がらせたり不安にさせたりした分、今度は安心させる側になりたい」
「……」
「あなたが、俺の隣に立ってくれるなら、俺……ちゃんと��その人�≠ノ、なりますから」

 その言葉が胸のいちばん真ん中に触れた。誇張も、演出もない。ただ、誠実だけでできた言葉がこんなにも優しいと私は初めて知った。しばらく沈黙したあと、私は、ふっと息を吸った。

「……私、あの報道を見たとき……泣くほどじゃなかったけど、眠れなかったんです」

 彼の目が、かすかに揺れた。まるで不意を突かれたように、一瞬だけ、内側に波紋が広がるのが見えた気がした。

「きっとそれって、もう、好きだったんだと思います。まだ言葉にするのが怖くて、ずっと濁してきたけど……」
「……」
「あなたが私を選びたいって言ってくれるなら、今度はちゃんと、信じてみたいです」

 風が、ふたりの間をふわりと通り抜ける。彼がようやく笑った。泣き笑いのようなどこか安堵に満ちた表情で。それはもう��若きヒーロー�≠ナも��焼き鳥屋から出てきた若僧�≠ナもなくちゃんとした、大人の男の人の顔だった。

「よかった……じゃあ、羽根、もう落とさなくて済みますね」
「落とさなくていいです。拾いに行きますから」
「ほんとです?そしたら俺わざと落としますよ」
「子どもですか、あなたは……」

 そう言いながら私は、心の底から笑っていた。それは、たしかにスタート地点だった。ヒーローと医者という肩書きを、いっときだけ外しても、それでも隣に立ちたいと思える誰かが、今ここにいる。

 わたしも──最初から、あなたでしたよ。

 今の私ならばきっと、そう胸を張って言える。言葉というものはこんなにも静かに、こんなにも確かに、人と人を繋ぐのだと知った。そして私は今ようやく、彼の隣に立つ自分を怖がらずに思い描けるような気がした。





 

最初から、あなたでした


(じゃあ、いったん戻りますね、名前先生)
(うん、……って、え!? 待って、なまえ、)
(レベルアップせんといかんけん!連絡します!)
(飛び立つの速っ!ちょ、羽根、散ってるって!)
(わざとでーす!大事に持っててくださいね〜!)
(あ、……もう。……持ってるよ、ずっと。)

※image song『 Sunny drop/Nobel bright 』


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