遊園地についても彼女は一言も話さなかった。なんだかそれがちょっと引っかかってはいたけれどいつもみたいに気軽に話しかけるわけにもいかず。
でも、俺が無理矢理に誘って付き合わせてしまった晴子ちゃんにも気遣いをしなきゃいけないなと思っていたから、晴子ちゃんと話すフリでさりげなく彼女に話しかけていたんだけど彼女は気付いているのかいないのか、無反応状態だった。
苦手モノは先に済ませてしまおうと、ジェットコースターからはじめたのは良かったけどやっぱり気持ち悪くなった。けど彼女はやっぱり無反応。いったい、どうしたんだよ。あんなに楽しみにしていたくせに。
落ち着いてから観覧車に乗って、晴子ちゃんと話をしながら彼女にも話しかけたつもりだったけれどあい変わらず無反応で。あんなに乗りたいって騒いでいたくせに、なんて思ったんだけど。観覧車を降りてほどなくだった。いきなり携帯が鳴って誰だろうと表示を見てみたがなにも番号がでていないし非通知とも出ていなかった。おかしいなと思いながらも、一応電話にでてみた。
電話の相手は彼女だった。なにやら謎な力を使ったみたいだったけど。
「もしもし?」
(洋平? 私、あのね……もう疲れたから帰りたい)
はぁ?って感じになった、正直、こればっかりは。俺は晴子ちゃんに急ぎの電話だからと言って、すこし離れた場所から電話をつづけた。そのほうが怪しまれないだろうから。
「名前、疲れたってなに?どーした?」
まだメリーゴーランドも乗ってねーのに。と、言いかけた口を噤んで小さく深呼吸。そして、言った。
「観覧車は夕方、もう一回乗るんだろ?」
(いいの、もういい! 疲れたから帰りたい!)
「ねえ、なんでそんなに我が儘なんだよ、名前が来たいって言うから連れてきたってのに」
(……)
「しかも、他の人まで巻き込んでさ」
(もう、飽きちゃったんだってば!)
「なあ、いい加減にしろよ名前。」
思わずキツイ口調になっていた。俺だけならいつものように溜め息着いて終わっていた。けど今回は他の人も巻き込んでる。なのに自分の感情を押し通す彼女に腹が立ったのも事実だった。とりあえず電話を握って話しているから、痴話喧嘩のように見えるだろう。しかし彼女は、かたくなだった。疲れた、飽きたから帰るの一点張り。
「名前、我が儘も状況考えてから言えよ、俺だけならともかく、程があるだろ」
(……帰りたい)
「はぁ……じゃあ、もう勝手にして!」
そう言うと俺は電話を切って、晴子ちゃんの元へと戻った。
「ごめん、待たせて。急用が入っちゃってさ……」
「そうなの?じゃ、急いで帰りましょう!」
「いや、でも……」
「私、ここから電車でも帰れるから洋平くんは急いで行って?」
晴子ちゃんは気を遣ってそう言ってくれたが原因が��桜の精�≠セしな……このまま返すのも申し訳なくて送ってくと言って車に乗せた。
そんな桜の精は黙りを決め込んだままで俺は車中で晴子ちゃんと話をしていた。
「今日は本当にごめんね」
そう言った俺に「気にしないでっ!」って、笑って言いながら車を降りた彼女が歩き出すのを見届けて、車を発進させた。
「……いつまで黙ってんの」
ぽつりと、そう言った俺に(私が話しかけると迷惑でしょ)なんて返事が返ってきてイラッとする。
なんなんだよと思いながらも俺は公園が近いこともあってそのまま車で公園に向かった。部屋に帰っても彼女は勝手に公園へ帰れるけど、まぁいいかと、軽い気持ちで。
(どこいくの?)
「公園。そこだろ?送るよ」
(……そう。)
こういうときの彼女は、ホント可愛くない。今日の彼女は特に。もともと高飛車だけど更に我が儘になるし、機嫌が悪くなる。
ほどなくして車は公園についた。すると彼女は一言だけ(ありがとう)と。そう言って俺の体から抜けて桜の木に帰って行った。
部屋に帰って一息ついたとき、いつも感じる気配がないのが変な感じだった。それくらい彼女はこの部屋を良く訪れていた。いつも座って俺を見てた出窓にも今日はいない。
「なんであんなに機嫌悪かったんだろ……」
思わずひとりごちながら、見慣れた窓からの景色をぼうっと眺めた。