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バクの術による攻撃から逃れたアクマは、今ハナコと交戦中だった。


「お前は逃げないんだね」
「アクマごときにしっぽ巻いてにげるだなんて、するわけない」
「えらく強気な子なんだねぇ。…でもそうしていられるのも私の能力を知らない内だけだよ」


アクマが左手を前に突き出すと、その手首の横についている器官から何やら糸の様な物をハナコに向かって伸ばした。


「!」
「まだまだ」


最初の攻撃を避けるが、今度は右手側からも伸びてきたそれをぎりぎりに交わすハナコ。


「どんな能力か当ててみてよ」


ニヤリニヤリと笑うアクマに、ハナコは2丁ともイノセンスを投げ飛ばした。それをヒョイヒョイと避けるアクマ。


「お前の技にはまるで芸がないね」
「そう」


アクマの言葉に、ハナコは無表情のまま首を傾げた。


「にの技、黒檀(こくだん)」


瞬間、2丁の風魔手裏剣が赤黒い焔を纏ってアクマに背後から突き刺さる。そしてアクマを焔で包み込んだ。


「あヅ、熱い…あつイっ…」
「…」


思っていたよりは効果が無かったようで、ハナコはイノセンスを手元に戻す。


「もウ終わリか、エクそシスト?」
「まだまだ」
「でモ次ハわだしの番」


アクマはヒュイッと音を鳴らして再びあの糸をハナコに飛ばした。それを避け、マユミはアクマに向かって札を投げる。


「縛羽(しばりばね)」
「なニっ!?」


アクマが動きを封じられ、戸惑った声を上げる。そこにハナコが飛び込んだ。


「第二かいほう。いちの業、白雷の剣」


ハナコがイノセンスを第二解放すると、大きな風魔手裏剣は二対のまっ白な剣へと姿を変えた。それを無駄の無い動きでアクマに突き立てる。


「きえろ」


ドスッという鈍い音を立ててアクマが貫かれる。
これで終わったか、

彼女がそう油断してしまった瞬間だった。


ドッ


「…っ、ぁ」
「お前ガ、きエろ」


アクマは攻撃されても尚意識を保ったままハナコに向かってあの糸を飛ばし、彼女の胸元を貫いた。ハナコはそれでも剣をアクマに押し込むが、次の瞬間に自分を貫く糸から鋭い電撃のようなものが流れ込んできて一瞬攻撃の手が揺らいだ。


「あ、ぁ…うわぁああっ!」
「私の能力ヲ…教えテナかったネ。私のダークマターは物質分解能力を持つ。その糸があラゆる物質の構造を分子まで分解・吸収して存在を消滅させルヨ。さァ、さっさとキエろエクソシストォ!!」
「うっ、くっ、のぉ…」


ハナコは自分の体がビシリビシリと軋むのを感じながら、剣を横に向きを変えて更に深くアクマを抉った。アクマが苦しむように叫び声を上げる。


「わ、わた、わたしがきえ…ても、おまえは、のこさないっ」
「消えろ、きえロ、キエロォオ!!」


根競べのように、お互い一歩も引かずに攻撃を続ける。
その時、

ジャキンッ

何かが切れる音がした。

ハナコがハッとして横に目を動かすと、そこには腕が鎌状のアレン・ウォーカーがいて。彼女は即座にそれはフォーが擬態したものだと悟った。


「バカハナコ!!こんなトコで死ぬ気か!?」


自分だってボロボロのくせに、強がったようにしてそう言い放つフォー。マユミはニヤリと口角を上げる。


「わたし、は…これ、これくらいっじゃあし、しなないよ…ウォーカー、」


そう言い返しながらアクマを蹴飛ばして距離を取るハナコ。アクマはうぐぅと呻きながらハナコたちを見据える。


「ナンだ、増えたの…。アレン・ウォーカーだね…丁度イイ」


まとめテ始末シテあげるから。そう言ってアクマはハナコの札を吹き飛ばし、ふたりに向かってきた。ハナコはさっき受けた攻撃によるダメージでふらつき、その瞬間アクマの右ストレートをくらってしまう。


「ハナコォッ!!」
「ふっ…、くぅ」


なんとか寸でのところで腕で防いだが、それによって彼女の腕がビシッビシッと音を立ててひび割れていく。アクマはフォーに糸を伸ばした。


「だめ」


イノセンスを投げ、フォーに向かうその糸を断ち切る。しかしその強い運動が崇り、腕からビシリと音が響いた。


「あっ、しまっ…」


バシィッ!


そしてハナコの左手に大きなヒビが入った。腕に気を取られたせいでハナコの注意がそがれてしまい、アクマの回し蹴りが彼女の横腹に入った。


「あうっ!」
「ハナコッ!!」


なんとか左腕でガードしたが、そのまま横に吹っ飛んだハナコ。最後に残るギリギリの意識の中、ハナコは身を翻して壁に足をつける。ビキィッ、メキッ。鈍い嫌な音がハナコの体中に響いた。今度は両足、左腕、それと胴体。予想以上のダメージに、ハナコの意識が遠ざかっていく。


「っは…、こん、な……こんなとこで…」


ハナコは地面に蹲り、ハッハッと浅い息を繰り返す。アクマはフォーが圧されながらもなんとか食い止めている状態だ。

こんなとこで、ともだちをたすけれずに、こんな…


「…衛羽(まもりばね)、」


ひゅんと音を立てて札を飛ばしたハナコは、次にイノセンスを杖にして立ち上がる。札は円を描いてフォーを護り、アクマのあの糸から護っていた。しかしそれもいつまで保つか。


「ごの業…光刃…煉塵(こうばれんじん)」


ハナコがそう言うと、彼女のイノセンスは形を無くし、光る霧状となって球状にアクマを取り囲んだ。そしてヒュッという音の後、霧状だった光が無数の針となってアクマに突き刺さる。


「うオォ、オオオッ!!」


ザラッという音を立ててイノセンスが元の形に戻ると、アクマがフラついて出てきた。


「…しぶとい、やつ…っ」
「オ、おお、おマエ許さナイィ…!殺ズ…ッ!!デモまずハ、アレンからァ…」


ニタァと笑ったアクマはゆっくりとフォーに近づいていく。ハナコはぎしりと歯を軋ませる。薄れる意識の中ハナコの目に映ったのは白髪の少年、アレン・ウォーカーだった。


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