21
(ラビ視点)
移動を終え、意識を失ってるリナリーを横たえる。
「改造アクマ、生成工場(プラント)、ノアの方舟ねェ…」
ティエドール元帥はオレらが話したことを復唱する。
「私が日本に来たのは適合者の探索任務の為なんだよ。あの男に協力する気はサラサラ無いんだ」
淡々と語る元帥の話に耳を傾けるオレら。元帥は続ける。
「自分以外の人間は道具としか思ってないというかさ。護衛のキミ達はマリアンと改造アクマの立てた筋書きの囮に使われたんだよ?どう見てもね。わかってる?」
「はい。警告を受けた上で来ましたので。予想はしておりました」
「ん〜〜」
元帥の言葉に、じじいが丁寧に答える。すると元帥は頭をボリボリと掻き毟った。
「ところでさァ」
「はい」
不意に元帥がピッと指差す。その方向を全員が向く。そこにいたのはしゃがんだ状態でじっと横たわるリナリーを見つめるハナコで。
「あの子は?」
自分が指を指されたと分かったのか、ハナコがスタスタと元帥のもとへと歩み寄った。
「紹介がおくれ申しわけありません。はじめまして、ティエドール元帥。わたしはハナコといいます。まだ入ったばかりですがエクソシストです。よろしくおねがいします」
ビシリと腰を折って挨拶をしたハナコ。元帥はポカンと口を開けたままハナコを見上げる。それから少しして、ガシッと彼女の手を取った。
「キミまだ新米なんだね?」
「はい。おはずかしながら」
「師匠は決まったのかい?」
「いえ。それがまだ」
「じゃあ、私の弟子にならないかい?いいよね?」
なんという行動力。そしてなんという強引さ。元帥はうるうると目を潤ませてハナコを見ている。
「私はこの度、弟子をひとり失ってしまってね。とても寂しいんだ」
「それはまことに残念です」
「うんうん。そうだろう?だからキミが弟子になってくれたら本当に嬉しいんだ。きっと神田もマリも喜ぶよ」
ね?と言いながらマリとユウを見やる元帥。
「えぇ、そうですね」
「…別に構わねェけどよ」
「「はぁっ!?」」
オレとアレンの声が重なった。マリの反応は至って予想通りだったから別にいい。ただ、ユウが反対しなかった…むしろ肯定的な言葉を紡いだのがまったく信じられない。
「あァ!?何か文句あんのかよ!」
「いいいいえ別に文句だなんてあはっ、あははははっ!!」
「そそそそうさー、ユウ!ただオレらは驚いただけ…ひっ!」
「たたっ斬る!!」
六幻片手にユウに追いかけられて、オレとアレンは必死だった。
「ね、私の弟子になってくれるかい?」
「申しではとてもありがたいのですが、こればかりは室長をとおして決めなければならないので」
逃げ回るオレの耳に、ハナコのしゃんとした声が伝わる。まぁ、うん。賢明な判断さー。それから元帥が何やら真面目な顔になって、話を始めた。エクソシストが現在の時点で九人しかいないこと、オレらクロス部隊は即戦線離脱した方がいいなど。
「そうですね。できることならリナリー・リーを優先的に保護すべきだとおもいます」
「だろう?だがこの状況ではどうやって彼女を無事に教団まで連れて帰るか…それすらも困難のようだ」
ハナコはふむとひとつ頷く。
「とりあえずリーさんをおこし、はなしをしてみましょう」
意識を失っているリナリーを見てそう言うハナコ。それからオレとアレンでリナリーに声を掛ける。
「リナリー、」
「―アレン…くん…?」
少しして、リナリーが薄っすらと目を開けた。
「はい。すみません。すみませんでした、リナリー」
哀しそうに微笑みながらリナリーの頬を撫でるアレン。いつもなら許さねェトコだけど、今回は仕方ないから目を瞑ってやるさー。
「どうして謝るの…?スーマンのことなら、アレンくんは救ってくれた…。無残に殺されただけじゃないよ。スーマンの心はきっと、アレンくんに救われてた…」
リナリーが身体を起こして、アレンの頬に手を伸ばす。アレンは目に涙を浮かべながら、自分の頬に添えられたリナリーの手に自分の手を重ねた。
「おかえりなさい、アレンくん」
「…だ、いま…。ただいま…リナリー」
「あらー、泣いちゃったさー」
オレがそう茶化すと、涙目ながらにキッとオレを睨むアレン。ちっとも怖くないさ。
「ラビも泣いたクセに」
「なっ、泣いてねぇさ!!」
「あはははは!」
ピシッ、
「ウォーカー、ラビ!リーさんが!!」
「!!?」
ハナコが咄嗟に声を上げ、何事かとリナリーを振り返れば、リナリーの姿が地面に沈んでいっていて。
「リナ…」
何が起こったのか、一瞬理解できなかった。