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アレンは固まったままノアを見上げる。
「出口欲しいんだろ?やってもいいぜ?」
ノアはニヤリニヤリと笑いながら鍵をひょいと出した。
「この方舟に出口はもうねェんだけど、ロードの能力なら作れちゃうんだな。出口」
するとノアの背後にハートの形をした扉が現れる。
「レロッ、その扉は……!」
「うちのロードはノアで唯一方舟を使わず空間移動ができる能力者でね。ど?あの汽車の続き。こっちは"出口"、お前らは"命"を賭けて勝負しね?今度はイカサマ無しだ、少年」
「!」
「どっ、どういうつもりレロ、ティッキー。伯爵タマはこんなこと…」
傘が焦ったように話し出すが、ノアは無視して続きを話しだした。
「ロードの扉とそれに通じる3つの扉の鍵だ。これをやるよ」
「なにを考えている、ノアめ」
「おっと、随分と気の強そうなお嬢さんがいるね。…あぁ、キミ」
ノアはハナコを視認すると、興味深そうにジロジロと彼女を見始める。
「まさかキミもここにいるなんてね。ははっ、もしかして巻き込まれた?それとも、自分から飛び込んできたわけ?」
「…きさまには関係ない」
「おっと、そう殺気出すなって。可愛い顔が台無しだぜ」
飄々と肩をすくめてみせるノア。ハナコは無表情にノアを見据える。
「まぁ今はいいさ。…じゃあ考えて。つっても、四の五の言ってる場合じゃねェと思うけど」
ノアが鍵を指からすり抜かしている途中、彼の頭上の建物が崩れ襲いかかった。
「ティッキー!!」
「たっ、建物の下敷きになったである」
「死んだか?」
傘が真っ先に叫び、それに続いてクロウリーとラビがそう言う。が、その時何かがキンッと甲高い音を立ててこちらに向かって飛んできた。それは神田の手に見事収まり、開いてみるとそこには先ほどのノアが持っていた鍵があった。
「!!」
「エクソシスト狩りはさ…楽しいんだよね」
どこからかノアの声が聞こえてくる。
「扉は一番高い所に置いておく。崩れる前に辿り着けたらお前らの勝ちだ」
「ノアは不死だと聞いてますよ。どこがイカサマ無しですか」
アレンがここのどこかにいるノアに向ってそう言えば、あはははは!!とどこからか笑い声が聞こえてきた。
「っと、失礼。なんでそんなことになってんのか知らねェけど、オレらも人間だよ?少年」
「死なねェようにみえんのは、お前らが弱いからだよ!!!」
その言葉を皮切りに、方舟内がまた崩れはじめた。
「!!!」
「うわっ、ヤバイ走れ!崩壊の弱い所に!!」
ハナコは即座にイノセンスを開放しそれに乗った。
「つかまってください」
「あっ、ハイ!」
ハナコはチャオジーを抱え上げ、安全なところまで飛んだ。まだ崩壊が始まっていないところへ着くとチャオジーをおろし、ハナコはきょろきょろと辺りを見渡し始めた。
「あった」
「えっ?何を見つけたんスか、エクソシスト様」
「とびら」
その時、息を切らしながらラビが口を開いた。
「どーするよ…。逃げ続けられんのも時間の問題だぜ。伯爵の言うとおり3時間で消滅するならさ」
「あと2時間レロ」
「だまれ傘」
「イダダダダダダダダ!!」
「どの道助からないである!!」
会話の途中、ハナコが傘を力づくで絞り出した。
「ロードの能力っていう空間移動は僕らも身に覚えがあります」
「うん」
アレンとリナリーがそう言うと、ラビはしゃーねぇってか…とぼやきながら首を掻いた。
「で、誰が開けます?」
アレンのその一言に、誰もがシンと静かになった。
「わたしがします」
さっと名乗りを挙げたのはハナコで。皆がバッと勢いよく彼女を見る。
「なっ、あなた正気ですかハナコ!?なら、ここは僕がやります!」
「なにを言っているのですか、ウォーカー。わたしはいつも正気ですよ」
神田から鍵をむしり取り、さっさとドアの前まで歩いていくハナコ。
「こういうことに時間を掛けている場合ではありません。わたしたちはつねに迅速に最善をつくすことを考えねばならないのです」
そう言いながら鍵を鍵穴にはめると、ボンと大きな音を立てて扉がポップな柄のそれへと変わった。
「ではいきましょう」
そう言って振り返ると、アレンがすっと手を前に突き出していた。ハナコは首をひょいと傾げる。
「絶対脱出!!です」
「おいさ」
ラビが最初にアレンの手の上に自分の手を重ねた。それからクロウリー、リナリー、チャオジーの順で重ねられていく。それを至極不思議そうに見るハナコ。
「神田〜、ハナコ」
「やるか。見るな」
「わたしは遠慮します」
そしてハナコは扉に向き直った。
「行くぞ」
気付けばハナコの隣に神田が立っていて、彼が扉を開けた。