25
扉の向こうは夜空で、キラキラと輝いていた。それをほうと息を漏らしながらぼんやりとハナコは見上げていた。
「何だここ…?」
「外じゃねェな…」
「!」
不意に神田がピタリと動きを止める。
「!?神田?」
「シッ。黙れ」
それに気付いたアレンが声を掛けるが、神田のピリピリとした様子に押し黙る。
「いますね」
「あぁ」
ハナコの言葉に短く答える神田。それにつられる様にして全員がハナコたちの視線を追った。その先には何やらデカイ男がいて。
「おやおや、なるほど。さきほどのノアが言っていたのはこういうことでしたか」
この場に相応しいとは言い辛い、抑揚のない喋り方でそう言ったハナコ。
「お前ら先行ってろ」
「えっ!?」
「ユウ?」
神田の言葉にアレン、クロウリー、ラビが声を上げた。しかし当の神田は至って平静な様子で自分のイノセンスを構え始めていて。
「アレはうちの元帥を狙ってて何度か会ってる」
「カッ、神田一人置いてなんか行けないよ!」
「勘違いするな」
リナリーがそう声を荒げる。が、彼は低い声でそれを制した。
「別にお前らの為じゃない。うちの元帥を狙ってる奴だと言っただろ。任務で斬るだけだ」
イノセンスを開放し、神田は戦闘モードに入った。
「ほんとうにひとりでだいじょうぶなのですね、神田」
「あぁ」
「…なるほど、わかりました。では皆さんさきへ進みましょう」
「えっ、ちょっとハナコ!?」
先へ進もうとしたハナコの肩を咄嗟にアレンが掴んだ。
「なんですか」
「だって、神田をひとり置いていくだなんてそんな…!」
その時、ズゥウウンと重たい音をさせて地面が揺れた。
「地震…っ」
「やっぱりここは方舟の中なんさ!」
「そうレロ。ここはまだ新しい方舟へのダウンロードが完了してないだけの部屋レロ。ダウンロードされ次第消滅するレロ!」
「!!」
傘の言葉に全員が息を呑んだ。
「はいっ!僕も残ります神田!」
「アレン!」
「おちつきなさい、ウォーカー。このさき構えているてきの数がはっきりしない今、それはとてもではありませんが最善であるとはかんがえにくいです」
「いいんです!みんなはスキを見て次の扉を探して進んでください!僕らもあとから…」
「お前と二人なんて冗談じゃねェよ」
「神…っ」
神田、と言おうとしたアレンだったが、目の前に突き付けられた切っ先によりそれは成されなかった。
「オレが殺るっつってんだ」
仲間に向けられた殺気に、その場にいたハナコ以外の全員が背筋を凍らせた。そして神田はアレンに向けた切っ先で彼の髪を数本切った。
「とっととうせろ。それともお前らから斬ってやろうか?あ?」
「えっちょっ…鬼が出てるんですけど…」
「カ、神田さん…」
「ほ、本気…?」
仲間相手に六幻を向けた神田は、そのままあろうことか技まで繰り出す。
「界蟲一幻!!」
「どわーっ!!」
神田の技から逃げるアレンたち。ハナコはその様子をぼんやりと見ている。
「ちょっ?やめっ」
「神田!!」
「痛ーっ!」
「死ぬっ、死ぬよ!?」
「ぎゃああああああっ!」
攻撃の嵐が終わると、攻撃されていた男たちはついに怒った。
「かっ、神田のバカー!!」
「ユウのバカー!!殺す気かアホー!!」
「鬼畜め!」
「人でなしっス!」
もー知らねっ、神田なんか置いてってやるーっ!!!男たちがそう声を合わせている後ろで、リナリーがおろおろとしている。ついでにハナコはノアをじっと見ていた。
「さぁ。じかんがありません。こたえが出たのなら先をいそぎましょう」
「どうしてあなたはそんなに冷たいのっ!?」
ハナコの言葉にリナリーが声を荒げた。
「さっきからあなたはまるで、神田が犠牲になってもいいみたいに!!こんなだから…こんなだから中央庁なんて大っ嫌いなのよ!!」
急に大声を出したリナリーにその場にいた誰もが押し黙った。