27
「俺は生きる」
「わたしも、死ぬわけにはいかないので」
言うや否や、ふたりはヒュンと風を切りノアへ襲いかかった。どちらも引かぬ攻防を何度も続けていく。が、最初に体に異変が現れたのはハナコだった。
「うっ、」
バチバチと腕から流れてくる強電流に、ハナコは顔をしかめた。
「ほらな。最初に音を上げるのは女なんだよ」
「なにをいう。音などあげていない」
無表情に戻し再び攻撃に入るが、攻撃が決まるたびに自分に返ってくる電気はだんだんと強くなっていく。
「女。甘いものは好きか?」
「だいすき」
「そうか。なら一瞬で消してやる」
「いらん世話だ」
ハナコはそう言い捨て、鎌をノアの腕めがけて振り下す。疾風が鋭い刃となって鎌を覆い、その一撃によってノアの右腕が吹き飛んだ。
「ぬがあっ!」
「っく、ぅ」
ハナコは強い電流に顔を顰める。神田は一瞬ちらりとハナコを見たが、すぐにノアに視線を戻して攻撃のラッシュ。それから神田が大技を決め、辺り一面がフラッシュした。ハナコと神田は光が収まってからノアがいた方を見るが、そこには先ほどと変わりのないノアの姿があって。ハナコはきっとノアを睨む。
「だがエクソシスト…。己を斬り、己の力を防ぐほど…お前らは負けるんだ」
「ずいぶんとおしゃべりなノアだ」
強がりでそう言うハナコ。が、ノアは笑い出した。
「負ける。お前らは己に殺されてしまう。かはは…っ。カハハハハハ!!」
「……テメェも気を付けろよ。そうやって余裕があるからか知らんが、欠伸が出る程隙だらけだぜ」
「!?」
「なんと」
神田の言葉の後、ノアの体が大きく一閃されたように斬れ、そこから大量の血が噴き出した。ハナコも気付いていなかったらしく、ほうと息を漏らしていた。
「ぐあっ、マジか…っ。一体いつの間に…ガハッ。こっ、こんなに斬ってたか……!!だが…」
蹲り血を吐くノアだったが、その後ふと顔を上げてどこか自信のある顔で口を開いた。
「こんなに己に触れてたってことは…」
「……っ」
神田がぐっと顔を顰める。その手はバチバチと電気が伝っていた。
「やっぱりな…カハッ…っ。お前の手も壊死寸前じゃねェのかあ…」
「神田、むりをしてはいけません。いちど交代しましょう」
「うるせェ…」
「充分だな…」
不意にノアがそう口にした。怪訝そうにふたりで顔をノアに向ける。
「充分だろう…。ここまでやれば…カハハッ、カハッ」
「なにをいっている」
「満タンだ」
ニヤリ、ノアが笑った。直後、神田の体から四本の鎖が飛び出してきた。
「!!!」
「神田!!」
ハナコは咄嗟に叫び、ノアに向って駆け出す。同時にノアが神田と繋がる鎖を神田ごと引いた。彼女はふたりの間に入り、神田に向って振り下されたノアの腕を鎖鎌で防ぐ。
「きさま神田になにをした!」
「だから言っただろ。己を斬り己の力を防ぐ度、武器を介してお前らの体に己のエネルギーが流れ込むってな」
ノアは不敵に笑う。それから神田に向って言う。
「この鎖はお前の体内で蓄えられた己のエネルギーだ。どうだ?体の内から貫かれ攻撃される感触は?」
「神田、気をしっかりもってください!」
ハナコは神田に向って声を掛けながらノアへの攻撃を続ける。しかしノアの攻撃をモロに横腹に受け、飛ばされそのまま岩へと激突した。
「ふっ、くぁ…」
口から血を吐き出し、ゲホゲホとむせるハナコ。すると続いて神田がこちらに向って飛ばされてきた。
「!!」
ハナコは咄嗟に体制を立て直し、神田を受け止める。
「終わってんだよ。お前らは己より速いが馬力は己の方が圧倒的に上。この状況で万にひとつもお前らに救いは無い」
「神田…だいじょうぶです、か…」
そう声を掛けるが、ハナコ自身が倒れそうだった。
「その女の鎌はまだしも、剣術は間合いで攻撃が決まる。鎖に振り回され間合いのとれないお前の剣など、ただの棒っきれだ」
「ちくしょう、ちくしょう」
ハナコは神田を支えながら下唇を噛む。すると神田が立ち上がり、ノアと相対した。その目には死への恐怖など少しもなくて。
その時、地面が一段と大きく揺れた。それと同時に「入り口」が壊れ、消えていった。
「"入り口"が消えたか…。残るはあの"出口"のみ……」
ハナコはふらふらと立ち上がる。
「己とお前ら…生き残るのはどちらかなあ、エクソシスト」
「俺らだろ」
「もちろんです」
「甘いな」
ハナコは鎖鎌で、神田は六幻で攻撃を再開した。