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ここはどこ?

どうしてだれもいないの?


まっ白な空間でわたしはぽつんとひとりで立っている。


だれか、だれかいないのですか?


おかしいですね、さっきまでは神田もいたはずなのに。ここは先ほどの部屋ではないのですか?あぁ、そうか。


わたしはしんだのですね



ではここは天国というやつですか?それにしてはえらくなにもない。ほんとうに、なにも。


おとうさま、ハワード、マダラオ、ゴウシ、キレドリ、テワク、トクサ…

できることならもう一度、あいたかった


そのとき、離れたところに見なれたかれらの姿が浮かび上がってきて。わたしは思わず目を見開いた。


「ハナコ」



みんなが口々にわたしの名を口にする。


まって、おとうさま、みんな

そっちへはどうやったら行けるのですか?

動かしたいのに足がうごかないの

手を伸ばしたいのにとどかないの

話し掛けたいのに声が出せないの


どうして、どうして、どうして!!


「マユミ。先の任務は大変だったみたいですね。しかし無事に帰ってきてくれて何よりです」


おとうさま、


「まったくまったく。今日のアフタヌーンティには遅れないで下さいと申し付けたでしょうに。ねぇ、ハナコ」


ハワード、


「ハナコ、また呪文間違えたのか?そんなに落ち込むな。大丈夫、私がまた教えてやる」


マダラオ、


「ハナコー!そこの山まで一緒に訓練行こうぜ!」


ゴウシ、


「ハナコ、ハナコ!この前の探検の続きしようよ!」


キレドリ、


「見てくださいませ、ハナコ!これ、ハナコに似合うと思って買ってきましたの!」


テワク、


「ハナコ」


トクサ…、


「約束が違いますよ?すぐに帰ってくると豪語したのはどこの誰でしたっけね?」


トクサ、ごめんなさい、ごめんなさい


「そんなに謝らないでください。ちょっとからかっただけですよ」


あなたはそうやっていつもわたしを茶化す

あぁ、それさえもなつかしい


「そんなに悲しそうな顔をして、どうしました?」


だってもう、わたしはあなたたちに会うことは叶わないもの


「大丈夫ですよ、ハナコ。私たちはいつも一緒です」


でももう、


「あなたが望めば、何でも叶うのですよ」


そんな神さまみたいなこと、わたしにはむりよ


「なにもあなたばかりが叶えるわけではないでしょうに」


なによ、なによ

わたしがなぞかけ苦手なの知ってるでしょう?


「あなたが叶えられない願いは、私が…私たちが叶えるのですから」


あぁ、そうだった

どうして忘れていたの


「ですから早くこちらへ戻ってきなさい。いつまでもそんなところで泣きべそ掻いていては元鴉の名が廃りますよ」


わかってる、わかってるよトクサ

だけどどうしたらいいのかわからないの


「大丈夫です。私たちが傍についていますよ」



かれらにのばした手が、ようやくして届いた。おとうさまと鴉たちに飛びつけば、みんなが笑いながら頭をなでたり肩をたたいてくれて。


"あいたかった"


そして世界がまたぐらりと歪んだ。


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