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「ティムキャンピーとは中国で別れたっきりだったよな。あの夜に…。ドタバタで忘れてたけど…」
僕はみんなのもとへと扉を開き、ピアノのある部屋から出た。そこでようやく気持ちに余裕ができて、ティムキャンピーとの再会を味わっていた。それにしても…
「会いたかったよティムキャンピィィィィ!!また大きくなったんじゃないかお前ーっ!!」
なんでだぁああと言いながらこういう時のために密かに持ち歩いていたマイ定規を出してティムを測る。うん、やっぱりでかくなってるねお前!!なんで!?
「すんませーん。そこのふたりー」
ラビが声を掛けてきたのでティムとの感動の再開はここまでにして、僕たちは方舟の散策へと向かった。
「しっかし静かだなあ。あのピンチは何だったんさ…」
歩きながらノアがどこかに隠れていないか探していると、不意にラビがそう話を切り出した。
「ホントにお前が舟を元に戻したんか、アレン?」
「あ、とり」
ハナコが空に向って指を差した。つられてみんなも空を見上げる。
「ええまあ…。釈然としない所はありますが…」
僕がそう言うと、ラビが目に見えて真っ白になって落ち込むものだから、一体どうしたんだろうかと少し心配する。
「大体見回ったぜ」
「ノアはどこにもいないようですね」
「神田…ずっと気になってたんですけど」
ふたりがそう会話をしているのを聞きながら、僕は神田と再会してから気になっていたことを口にした。
「その胸のタトゥーどうしたんです。そんな大きな模様入れてましたっけ?」
そう訊ねると神田は興味なさそうに僕を一瞥してからぷいと視線を逸らす。
「別に」
「会話になってませんね神田。はいっ、言葉のキャッチボール!」
「ウゼェ奴」
神田のその言葉に僕の堪忍袋の緒が切れ、僕と神田の間に火花がバチバチと音を立ててぶつかり合う。
「ナゼいがみ合うの」
「似たものどうしだからでしょう」
「「それはない!!/ないです!!」」
「そうでしょうか?」
ハナコは何を考えているんですか!?僕が神田と似ている…?この無愛想黒髪パッツンバ神田と!?さてはあなた、変なところ頭打ちましたね!!
「それより外に出られねェのかよモヤシ!」
「アレンですってばこのヤロウ!」
「喧嘩すんなよもー」
「出られるか今確かめま…―」
すよっ?最後の二文字がとても自分のものとは思えないくらい素っ頓狂なものになった。だってそれも仕方ないでしょう。開けたドアの向こうが"無"だったんですからね!
「わーっ!アレン下ぁっ!!」
ラビの叫び声にハッとして、咄嗟に神田のズボンの裾を掴んだ。そしたら神田がラビの胸倉を掴む。
「巻き添えかよっっ!」
「ふんっ!」
「そりゃ」
ぐんっと一度小さく上下して降下が止まる。上を見ると、そこにはラビの足を寸でのところで掴んでいるチャオジーと、そのチャオジーを支えているハナコの姿があった。