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「バークーさーまーっっ!!」
何やら騒がしくしながらウォンが僕の元へと駆けてくる。
「なんだ騒々しい。叫ぶな」
「先刻消失した方舟の入り口が再び出現しました!」
僕の静止の指示も聞かず、ウォンは息を切らしながらも大きな声を上げてそう言った。彼の言葉に、僕は胸がひゅうと浮かぶような錯覚を覚える。次の瞬間には、もう走り出していて。
「ウォーカー!!ハナコォーッ!!!」
普段インテリの僕がこれでもかと全速力で方舟の入り口があった場所まで走れば、そこには方舟から姿を現しているウォーカーの姿があった。ハナコは?彼女はどこにいる?
「あ、バクさん。ホームに連絡したいんですが電話機貸してもらえませんか。突然帰ったらみんなビックリするだろうから」
至って普段通りな彼の言動に、僕は少しの落ち着きを取り戻した。
「それは構わんが…ハナコは…?」
「よんだか、バク」
「ハナコッ!!」
アレンの後ろからひょこりと顔を出した、相変わらずの無表情のハナコ。たまらず駆けつけて強く抱きしめた。
「…きゅうになにをする」
「生きてたんだな…!よかった。本当によかった…!!」
涙が出てるとか、男らしくないとかもうこの際関係ない!お前が生きてて本当によかったぞ、ハナコ…!
「ふっ。このていどで泣くとはなんと脆弱な。バクはもっとおとこをみがくべきだ」
「僕の涙を返せハナコォー!!」
前言撤回!!涙早くひっこめ!!腕で乱暴に目元を拭っていると、不意に頬に温もり。腕を退けると、そこには僕の頬に手を添えているハナコがいて。
「なーんて、うそ。バクは素直なほうがらしいよ」
「んなっ…!」
にこり、微笑んだ彼女。僕は顔が真っ赤になって、ジンマシンが出そうになる。途端、離れるハナコ。
「ぶつぶつきらい」
「ちがっ、まだ出てな…!」
「ふふふっ。これも半分だけうーそ」
「……待て!残りの半分は!?」
僕の問いに答えることなく、ハナコはニコニコしながら走り出す。すれ違いざま、赤毛のブックマンJr.がドストライク…!!と言って鼻を押さえているのが見えた。
「あれっ。どこに行く気ですか、ハナコ?」
「フォーにも、あいさつ」
振り返った彼女は無表情で、抑揚のない喋り方に戻っていて。そしてハナコに続くようにして向こう側へと歩き出したクロス・マリアン元帥。
「あっ、どこ行くんですか師匠!さては逃げる気…」
「ダメです元帥」
ウォーカーの顔を手で押し退けて進もうとする元帥が、ふと動きを止めた。正しく言えば止められたのだ、リナリーさんによって。
「どこにも行かないで下さい」
その時、彼女の後ろに花が咲いているかのような幻覚を見た。そして僕はとうとう発狂する。
「リナリーさんの髪と純潔がぁぁぁっっ!!」
「バクさましっかりーっ!!」
ウォンに取り押さえられながら叫ぶ僕。この場にハナコがいたら、リナリーさんが元帥に飛びつくまでもなく縛羽投げさせたのにっ!!
取り敢えずふたりを引きはがすのに丁度いい言い訳を考えなくては!