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「あー…、ヒマさァ…」
一人、医務室でぼんやりと呟くが誰の声も帰ってこない。アレンはどっか行っちまってるし、ていうか食後だったし、ユウもさっさと出ていっちまうし。クロちゃんは起きないだろー?チャオジーには友達がいるし…あれっ、
「これじゃあまるでオレに友達がいないみたいさ…!」
くぅと涙を呑んで枕に顔を伏せる。あっ、そういえば!
「婦長ー!」
「なんですか」
「ハナコの容態はどうなんさ?アイツ、結構酷かったみたいだったし…」
そう、ハナコ!あいつだって結構な怪我してたさ!あ、そういやアジア支部で見たあいつの笑顔やべぇ可愛かったさーっ!!もっかいオレの前で笑ってくれねェかな…
「本当ですよ!まったく、女の子なんだからあんなになるまで戦わなくてもいいでしょうに!もう体のあちこちにそれはもう盛大な傷を作って!驚いたあまりベッドに縛り付けてやりましたわ」
「えええっ!?縛り付けた!?」
「だって今にも出ていこうとするんですもの。それは何があっても阻止しなければ…」
「婦長、あのぅ…」
「どうしたんですか?」
不意に看護婦のひとりが婦長に声を掛ける。興奮気味だった婦長は一旦自分を落ち着かせて彼女に耳を傾けた。
「そのハナコさんなんですが、なぜか病室にいなくって…」
「な、なんですってぇーっ!?」
「ハナコ何してるんさーっ!!」
看護婦の口から出てきた言葉に、オレも婦長も大声を上げる。どうしてエクソシストの中にはまともなヤツがいないんさ!?大体、ハナコは何においても規格外すぎるんさ!!
「徹底的に探し出して、今度こそ抜けられないように縛り付けるわよ!」
「はいっ!」
「あのっ、婦長せめてお手柔らかに…」
「問答無用です!!」
ハナコ…せめて婦長に見つからないことを祈るさー…
バタバタと走り去っていく婦長と他の看護婦さんたちの後姿を眺めながら小さく溜め息を吐いた。
「あーあ…ハナコ、どうなっても知らねェぞー…」
「なんと、婦長はおもっていた以上にげんきがよろしいようですね」
「ホントだよなー。あの人怒らせたら教団で一番怖いさー」
「それは女性にたいして失礼というものですよ、ラビ」
「あー、すまんすまん。ハナコは意外とフェミニストだったん…えっ?」
「おや、どうかしましたか?」
あれっ、オレ今誰と話して…
「ってハナコォーッ!?」
「こら。あまり医務室でおおごえを出すものではありませんよ」
「いやいやいやおかしいだろ!お前今までどこにいたんさ!?」
すぐにコソコソ話のような声に戻し、そう問いかける。ハナコは無表情にこてんと首を横たえた。
「さきほどまでは自室にいました」
「何してるんさー!婦長カンカンに怒ってたぞ!」
「えぇ、そのようですね」
「そのようですねって、何落ち着いてるんさ!」
怖いぐらいにいつも通りなハナコに拍子抜けする。何なんさこの子!怖いもの知らずか!
「ラビ」
「な、なんさ?」
「わたしは縛りつけられるのはすきではありません」
「そりゃあ好きなやつはよっぽどだと思うさー…」
「ですから」
どうか、わたしを見たことはたごんしないように。それだけ言うと、オレの跳ね除けていたシーツをバサリとオレの顔に掛けたハナコ。ぶあっ!と変な声を上げてから慌ててそれを除けるが、もうそこにハナコはいなかった。えっ、これが忍者ってやつか!?…てか、
「あ、あいつ…この期に及んで逃げる気さ…!!」
なんだかんだ、ハナコは本当規格外だと思う