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「……かざぐるま、」


ハナコが小さくそう呟く。アレンはジョニーにみんなを助けてと涙ながらに言われ、半ばヤケになりながらレベル4に挑んでいた。レベル4は一時的に記憶が混濁しているようで。少しして自分がアクマで、ここが教団で、そして自分が殺戮兵器であることを思い出す。


「さつりくへいき。ぼくのそんざいりゆうを、じっこうさせてもらいましょう」


レベル4がそう言ったと同時にアレンがレベル4の肩に足をつき、ダイレクトにエッジ・エンドをぶつける。しかし攻撃の後足元を見ても、そこにレベル4の姿はなかった。


「?!!」
「まずはおまえからです」


レベル4はアレンの右腕をでこぴんで弾く。するとアレンはとんでもない勢いで壁に向かって飛んでいた。壁にぶつかったアレンのイノセンスは開放を解かれ、アレンは意識を失う。その後少しして、レベル4は超音波のような声を上げた。それによってその場にいた全員が平衡感覚を失い崩れ落ちる。それからレベル4はティエドールの抱擁ノ庭を破壊。全員がその光景に愕然とする。その時だった。


「なんでしょう、あれは」


ふと一筋の光がレベル4を横切る。レベル4はきょとんと首を傾げた。それはハナコの顔の前にふわりと浮遊。ハナコはその光をがしりと掴んだ。


「……きてくれたの。ありがとう」


ハナコはふっと微笑んだあと、ぐらぐらと揺れる体で立ち上がる。


「おや。あなたまだたたかうのですか?」
「…まだ、しねないの」


ハナコは今にも倒れそうな身体とは裏腹に今まで見せたことのないような光を目に宿し、先程の光を握ったままの拳を前に突き出す。そしておもむろに口を開いた。


「まわれ、風車」
「そうはさせません」


彼女がそう言った瞬間、彼女の拳の内から光が溢れ出す。流石にレベル4はそれが何か察しがついたのか、ハナコに向かって襲いかかってきた。しかし彼の攻撃は当たらず、その場で辺りを見渡すレベル4。ふと、彼に影が差した。


「こっち」
「!」


ハナコは先ほど飛び上がり、レベル4の真上に舞い上がっていたのだ。その手にはこれまでとは若干デザインと大きさの変わった風魔手裏剣。レベル4はニヤリと口角を上げた。


「そんなよわっちいものでぼくをたおすんですか?」
「そうみたい」


ハナコは体をくるりと回転させ、風魔手裏剣を回して風を起こす。その風に乗って一気に上まで飛んだ。それをレベル4がにがしませんと言いながら追う。レベル4が追いついたのと同時に、ハナコは再び手裏剣を振るう。


「かまいたち」
「なんですか、これは!」


ハナコが起こした風により、それぞれ大きさの違う一対の鎌を構えた二頭の風をまとった鼬が現れた。二頭はぐるぐると目まぐるしい速さでレベル4を囲む。それによってレベル4が若干のダメージを受けた。それにレベル4がキレ、こしゃくなぁ!と叫んで更に上に飛び上がってその風の中から抜け出す。


「こんなこどもだましが!きくわけないでしょう!あははっ!」


そして拳をハナコに向かって振り下ろした。ハナコはその拳を手裏剣でいなし、その勢いを利用して下に投げ飛ばす。降下する勢いによって体を動かせないレベル4に向かって、追い討ちをかけるようにハナコが飛び込んだ。そして風魔手裏剣を両方ともレベル4に向かって投げる。それは見事にレベル4の肩に刺さった。レベル4が地面に叩きつけられるのと同時に、ハナコはレベル4の腹の上に勢いのついた蹴りを振り落とす。


「がふっ!」


ハナコは無言のままレベル4の肩に刺さっている手裏剣を引き抜く。そしてそれらを構え、鋭い一撃をアクマの腹へと落とした。しかしそれはアクマの腹に直撃するが切断には至らず、がっぱりと切り口を開けただけで。それにレベル4がニヤリと笑う。


「しょせんそんなものでぼくがたおせるわけがないのですよ!」
「そ、かな」


ハナコは表情を変えず、レベル4の上から退いた。確かにハナコは手応えを感じていない。さらに自身の体に限界が近いことも感じている。それでも元帥たちが戦えない今、抱擁ノ庭が壊された今、ハナコが戦うしかないのだ。足止めだけでもできればそれでいい。もう少ししたらきっとアレンも元帥も起きる。それまでもてば、十分。


「それでもいいの。うん」
「こんどはぼくのばんですよ!」


レベル4はぎしりと体を起こし、ハナコに向かって蹴りをお見舞いする。ギリギリでそれを手裏剣で防ぐが、蹴りによる力でものの見事に横へと吹っ飛んだハナコ。ぶつかる前に壁に足を着けるが、もうレベル4がこっちへと迫っていて。ハナコは逃げずに、そのまま真っ向から飛び込む。それに一瞬レベル4が怯むが、彼が翳した拳は勢いを劣らせない。ハナコは手裏剣を交差して構えて拳を防いだ後、力任せに腕を広げた。それによってレベル4はよろめく。


「黒檀」
「なにっ!?」


ハナコがそう言って手裏剣をレベル4に向かって投げると、手裏剣が黒い炎を纏いレベル4を襲う。どうやら今までのイノセンスの技とは威力が異なるようだ。その変化を直に感じているハナコは、少しの違和感を感じている。これまでとは違う使い方になることへの若干の不安もあるが、それ以上に威力の高まった自分のイノセンスを不思議に思いながら戦う。

イノセンスが手元に来た時からずっと感じていた耳鳴りは、まだ止まない。


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