06
(神田視点)
「…お前」
「なんでしょう」
「中央庁から来たんだってな」
「はい」
そこで一旦会話は途切れた。俺は再び口を開く。
「えらく嫌われてんじゃねぇか」
「はい。しかしわるいことばかりではありません」
「…」
「こちらでもちゃんと…なかまができました」
前を見据えたまま無表情にそう言う横を歩く女を、上から見下ろす。第一印象は、何考えてんのかわからねぇだった。だけど、こうやって話していても別に悪い奴にも見えねぇ。
「どうやらおもっていた以上に中央庁はきらわれているようです」
「だろうな」
「…神田さんも、きらいですか」
表情は相変わらずの無表情。だがほんの少しだけ、そいつの声が震えていたのが分かった。
「別にどうだっていい。中央庁がどうだとか鴉だからなんだとか、俺には関係ない」
ふと足を止めたそいつ。訝しげに眉を寄せてそいつを見ると、ぽかんと口を開けて俺を見上げていた。
「…なんだよ」
「わたしはあなたのなかまになれますか?」
「あ?」
「わたしはあなたと、なかまになれたらとおもいます」
「…仲間だとかなんだとか、うるせぇんだよ」
俺は再び歩き出す。何なんだコイツは。止まったかと思えば、仲間になりたいだとかって。
「ここはままごとの世界じゃないんだぜ。んな事一々やってられっかよ」
「そうです。ままごとじゃないからこそ、なかまになりたい」
そいつは俺の後ろを足音も立てずに着いてくる。ほんとに何も聞こえねぇから、着いてきてるのか思わず確認してしまった。
「…何が言いてぇ」
「わたしは、エクソシストとして信頼のできるなかまがほしい。でなければ戦場でわたしは背をあずけることはできないからです」
今度は俺が足を止め、そいつを振り返る。
「アクマを相手にするというのはとてもこわい」
「んな事怖がってたらエクソシストなんてやってられねぇぜ、新入り」
「はい。そうおもいます。しかしわたしはこわいです。こちらには安心して背をあずけられるだけ信頼できるひとが少ない。あ、ふたり信頼しています。しかしひとりは料理長でして」
「…で、何が言いてぇんだ結局」
少しの苛立ちを感じながら、そいつを睨みつける。
「わたしはあなたを信頼したいです」
まっすぐに俺を見てそう言い放ったそいつ。じっと逸らすことなく俺の目を捉えるそいつの目は、真剣だった。
「…好きにしろ」
「それは信頼してもいいということですね?」
「……一々確認してんじゃねぇよ、バカハナコ」
そう言い、俺はスタスタと先を歩き始めた。しかしやはり何も聞こえてこねぇから、またチラリと後ろを見る。
「ちゃんといます。あなたも、わたしを信頼してください神田さん」
「…、気が向いたらな」
ゆるく上げられたそいつの口角と、柔らかく細められた垂れ目。つまりそいつは微笑んだわけで。こいつも笑うんだなだなんて、当たり前の事を今思い知った。
それと…
俺はこの笑顔を知っているような気がした。