07
ハナコたちは任務を終え、今は駅の前に立っている。
「オレは続けて長期任務が入った。だからお前は回収したイノセンス持って教団に帰れ。いいな」
「はい」
「……帰り道はちゃんと分かるんだろうな」
「はい。ちゃんとおぼえてます」
「チッ。…じゃあな」
「はい。どうかお気をつけて」
そして神田はファインダーと共に駅を去った。ハナコは駅でローズクロスを見せ、気持ちよく無賃乗車したのだった。
教団へ着き、地下水路から上へ上がる。ヘブラスカの元へ行くまでに、ハナコは一切のエクソシストに会う事はなかった。不思議に思ったハナコだったが、数の少ないエクソシストが散り散りになることはなんら不思議ではないと結論付け、イノセンスをヘブラスカに渡した後、汽車の中で仕上げた報告書を手に司令室へと向かった。
コンコン
「どうぞー」
「失礼します」
きちんとノックをし、許可が下りてから部屋に入る。
「ハナコくん、おかえり。お疲れ様」
「ありがとうございます。室長さんこそ、お疲れ様です」
ハナコはそう言い、コムイが齧りつくようにして向き合っていた机の上に報告書を置いた。
「今回の任務の報告書です」
「ありがとう。…へー!綺麗にまとまってるね」
「きょうしゅくです」
「あ、そうそう」
そこでコムイが思い出したように口を開いた。
「神田くんに行ってもらったように、他のエクソシストたちにも長期の任務に就いてもらった」
「はい」
「千年伯爵の動きが活発になってきたからね。何があっても不思議じゃない。だから各々に元帥たちの保護に向かってもらったんだ」
「はい」
「だけど、キミには残ってもらう」
「はい」
「万が一にもこの機会に教団が襲われないとも限らないからね」
コムイはふぅと溜息を吐く。
「だからいざという時、いつでも動けるようにしていてくれ」
「わかりました」
そこで話が終わったと思ったらしく、ハナコはくるりと踵を返した。が、ハナコくん!と後ろから自分を引き止める声を上げたコムイに彼女は振り返る。
「どうかしましたか」
「いや、うん。リナリーの事なんだけどね」
「はい」
ハナコは体ごとコムイの方に向け、ビシリと立つ。
「別にキミのことが嫌いなわけじゃないと思うんだ。だけど…キミも知ってる通り、リナリーは中央庁とあまりいいとは言い難い思い出がある」
「はい」
「だから極力…リナリーとは距離を置いてくれないかな?」
「分かりました」
「少ししたら慣れてくると思うし、ずっとじゃないから」
「かまいません」
「ありがとう」
「いえ。それでは失礼します」
今度こそ司令室を出て行ったハナコ。閉じられたドアを見つめたまま、コムイはぼんやりと口を開いた。
「ほんとうは…悪い子じゃあないんだろうね…」
しかしその呟きは誰の耳にも拾われる事は無かった。