輪廻を信じていないわけではない。 ただ認めたくないだけなのだと、自嘲気味に口元を歪めれば足元でタマさんが心配そうな声色で鳴いた。 大丈夫だよ、とそう呟いてタマさんの頭をなぜてやる。 何が大丈夫なのか、私自身もよくわからない。 奴良君家からゆらちゃんが帰ってくる前にお暇した。 未だ奴良君のお祖父さんが話してくれた内容が耳の奥で囁かれている。 ──あんたは初代の生まれ変わりだ── だから、どうしたというのだろうか。 その生前の記憶があるわけでもない自分が──否、どこかにその記憶はこのちっぽけな脳にしまい込れているのだろうか。 だとしても、私は私で初代なんかじゃない。 苛まれた感情にこめかみを押さえる。 「誰もかれも、私の中の初代を求めてるのかな……」 そう呟きながら触れた首の痣は昨日までの痛みのせいか熱を帯びていた。 その人──初代に、私の前世にこの傷をつけた妖怪・牛鬼は、何を考えて初代の首を締め上げたのだろうか。 昔目にした初代・無名の献上した刀の目録に、捩眼山の供養塔に納められた宝刀が何本かあったはずだから、それが怒りに触れたのだろうか。 それとも斬られた怨み?呪い? 無名の刀が何か彼の人を傷つけるに至ったのだろうか。 「怨みなら、辛いね」 呟いた言葉は自分に向けたものか初代に向けたものなのかは、よくわからなかった。 するりと擦り寄ってきたタマさんを胡座をかいた膝の上に乗せながら、真っ白でしなやかな体を優しく撫ぜてやる。 「タマさんはいつも私の味方でいてくれるね」 ナーと甘えた声で鳴くタマさんに目を細める。 「それは、私が──…初代の生まれ変わりだか…っ痛!」 言い切る前にタマさんに思いっきり撫ぜていた手を噛まれ涙目で見下ろせば、酷く怖い顔で睨まれた。 うぅぅーっと低く睨まれびくつきながら、ごめんなさいと本気で謝った。 「ごめん………不安なんだ」 初代の生まれ変わりと言う言葉に、自分が自分じゃないような気がして酷く悲しくなったのだ。 タマさんが、歯型の残る手を優しく舐めた。 「……心配ばかりかけてごめんね、タマさん」 気にするなと言わんばかりに頼もしく鳴いたタマさんの顎の下を撫ぜてやると、気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らした。 「私が“誰”なのかはともかく、この痣とはいい加減ケリをつけなきゃね」 タマさんの緑と青の瞳がこちらを真っ直ぐに見上げた。 「捩眼山に行こう」 真実を知り、この痛みを解放するために──。