本丸についてすぐ陸奥守吉行を降ろした。養成所で習った通り、神前へと祝詞を捧げ分霊を招く。 現代に残った坂本龍馬の写真に写された面差しに似た青年は笑顔で「陸奥守吉行」を名乗った。うっ、眩しっ。 「わしは陸奥守吉行じゃ。せっかくこがな所に来たがやき、世界を掴むぜよ!」 掴むのは世界じゃなく、敵の息の根だとけどいいかなぁと思わず呟くとこんのすけが「そういうことじゃないと思いますぅ」とぼやいていた。 あぁそうだな、息の根は掴むんじゃなく止めるんだったと言えば、こんのすけは違います!きゃんきゃん吠えていたが気にしない。 陸奥守吉行は愉快そうに声を上げて笑っていた。 「面白い主に当たったようじゃ、よろしゅうな」 「うん、よろしく私の初期刀、陸奥守吉行」 そう言って二人堅い握手を交わした。 人が入ったばかりの本丸はこじんまりとした日本家屋で3人で見て回った所、部屋は執務室と私室がある“審神者”が住まう離れ、そして神様が住まう場所である本丸には大広間と8畳の和部屋が2つと離れのとちょうど中間に台所などの水まわりがあった。 こんのすけ曰く、これはチュートリアルな状態で、刀剣の所持数やら業績でカスタマイズが可能らしい。 本丸は住居であり進軍の拠点だ。養成所の指導の中でも本丸に着き次第、自分の霊力にあった結界を張り直し強化を行うことを勧めている。 こんのすけにテンプレートで張られている結界の要の場所を教えてもらっていると、戦場と本丸を繋ぐ門の外でドンとイヤな物音がした。 「敵のようじゃのぉ」 冷静な陸奥守の言葉にごくりと生唾を飲む。思ったより敵との対峙の機会は早くきてしまった。 おそらくこの本丸の結界から漏れ出た霊力か何かに外の敵が察知し襲撃してきたのかもしれない。 人が入ったばかりの本丸はまだ不安定で、そこを敵が狙い命を落とした者もいると聞いた。緊張に気が張りつめて行く。 「……こんのすけ、結界を」 「は、はい!」 「ならわしは、ちっくと行ってくるか」 門に向かって歩き出した陸奥守をぎょっとして振り返る。 「無茶な、敵の数も戦力もわからないのに!」 「大丈夫やて、もともとわしは刀やき。戦い方はようわかっとる!」 「いやいや……!」 笑顔でそう言って門脇の塀を乗り越えようとしている陸奥守にツッコム。 門を開けてでるという暴挙は流石にしなかったが、単身で突っ込むとか考え方がおかしい。 だってお前、ついさっき刀から二足歩行になったよな!とは流石に口にしなかった。 「待っとれ!すぐ終わらせてくるきに」 ぴょんと身軽に塀の向こう側に消えた陸奥守に頭を抱える。自由人過ぎるだろ?! 悲鳴じみた声で叫んでから、青い顔で持って来た荷物を置いた部屋へと戻る。 「主様?!」 後ろから慌てたようなこんのすけの声に「とりあえず結界張り直す準備だけして!」と指示をだし、ケースから愛用の弓矢をだす。 弓矢は神事において魔を払う力を持つそうだ。養成所ではもともとのその技術を生かし、弓矢による結界術やらを強化して教わっていた。その上、弓矢は武器にもなるので一石二鳥だ。 それを手に走り、植木の枝を足場に塀の上に乗り上がる。直ぐさま上から外を見下ろすと案の定敵に押される陸奥守がいた。 「だから言ってんのに……!」 悪態を吐いて矢を構え弓を引く。狙うは尻餅をついた陸奥守を狙う敵短刀。 口の中で破魔の呪を唱え放った。 吸い込まれるように矢は敵短刀の頭蓋を撃ち抜いた。驚いて振り返った陸奥守に顎でしゃくって撤収を告げる。 こんのすけに門を開けてもらい陸奥守が中に入るまで次の矢を構えて警戒していたが、追い打ちをかけてくる敵はいなかった。 門がぴったりしまるのを確認してからつがえていた矢を戻し塀から降りる。 ボロボロの体で申し訳なさそうにへにゃりと笑う陸奥守に深い溜め息を吐き出した。 「とりあえず手当て、それからお前説教な」