少々変ですね、と担当役人がぽつりと呟き落とした声に振り返る。 報告書を回収しにきた彼が、その内容に目を通しながらの口にした言葉に「どこか内容におかしいところがありましたか?」と尋ねる。 「あ! あぁ、いえ……報告書の内容はいつも丁寧に書いて頂いて、処理するこちらが助かっているほどです。 えぇと…変、と言ってしまったのは、こちらの刀剣の揃いに偏りがある気がしまして……」 大変言いづらそうに言葉を紡ぐ担当に、あぁと納得する。 現在この本丸が所持する刀は12本。ちょうど先日、第2部隊が設立された。 だがその面子は、打刀と脇差、そして短刀のみ。 既に同じ時期に審神者を始めた同僚と演習で会えば、その部隊に3本は太刀以上がいるくらいなのに、ここの本丸には打刀以上の刀身を持つ刀剣はこの本丸に来ていない。 少々おかしいなとは自覚していたが、理由はなんとなくわかっていた。 「おそらく私の霊力の量が問題なんじゃないですかね。 元々、多くはないから。本丸運営で何か問題はでるかもとは、養成所時代に言われていましたし」 「そうでしたか。一応、対策はこちらでも考えてみますね。 とはいえ、こちらの本丸の戦績は良いので、政府から戦力強化のお達しがでるまでは焦る必要ないですけど」 笑顔の担当の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。 「それならよかった……。実は、今のところ個人的には、太刀がいなくて困った事はなかったので」 「ここの短刀、鬼つよですもんね。この前の演習見ましたよ〜。 小夜氏が大太刀を刀装ごと貫いて撃破したの。本部でも語りぐさですわ、“演練の悪魔は蛍だけじゃない”って」 「あはは、恐縮です」 担当は報告書を丁寧にまとめると、バインダーに挟みビジネスバックにしまう。 「それでは、私はこれで。今回の成功報酬は明日には本丸に支給されると思います」 「わかりました。今回も足を運んで頂き、お手数をおかけしました」 深々と頭を上げ合い、退室する担当を立って見送る。襖を開けた部屋の外に控えていた小夜がこちらを見上げて立ち上がる。 それでは、またともう一度挨拶をして担当は小夜に伴われ帰って行った。 その背中をぼんやり見送っていると、「大将」と大人びた声で呼びかけられ振り返る。 「お茶のおかわりをと思ったんだが、出遅れちまったな」 湯のみ2つ乗せた盆を手に苦笑を浮かべた薬研藤四郎に、同じく微苦笑を返す。 「わざわざ悪いね、薬研。あの人いつも忙しい人だから」 「まぁいいさ、オレっち達で飲んじまおうぜ」 「うん。そうしよっか」 部屋の中に戻り書類が広げたままになった机を片付け、お茶を置くスペースを作る。 そこに湯のみを置いた薬研は向き合う形であぐらをかいた。見た目に対してほんと言動が男前な子である。 お茶に手を伸ばしながら、先程提出した書類と入れ違いで受け取った書類の表紙に目を通していると、薬研が口を開いた。 「何か、あったのか?」 いいや、と静かに答えて熱いお茶を啜る。 「ただ思っていた事を真っ向から指摘されると結構くるなぁと思って」 戦績的に良い今はいいが、それが少しでも下り坂になれば政府はきっとこちらのやり方に口を挟んでくるだろう。 一般の出身ではない自分には後ろ盾が無い、つまりは“満遍なく刀剣を集められない”審神者の烙印を押されれば好き勝手されるのは目に見えている。 それだけは、絶対にさせるわけにはいかない。 刻まれた眉間のシワに気づいた薬研が、「あまり溜め込むなよ」と苦笑まじりに呟いた。