「一つ、私どもからご提案があります」 そう言った摘発役員に、つとめて穏やかな声で「なんでしょうか?」と返す。 「この件で相手方の違法性が立証され、彼女は任を解かれる事となりました。 すると所有者のいない刀剣が10口、宙に浮くわけですが……よろしければ、そちらの刀剣を貴方が引き取りませんか?」 全て貴方が所持していない刀剣です、良い話でしょう?と宣う役人を冷めた目で見据える。 担当がそれに慌てて口を口を挟む。 「引き継ぎは簡単に出来る事じゃないですよ。まっとうな理由が無いと無理です。 大体違法運営をしていた本丸の刀剣を引き取る事が、どれだけ大変な事か…」 「ですから実力のあるこの本丸の主にご提案させていただいているのです。 それに、所持していない刀剣を持つ事でこの本丸の戦力強化にもなります。そちらとて悪い話じゃないでしょう?」 「そういう話ではないんですよ。 あんた方には理解出来ないかも知れないが、引き継ぎに寄って元からいた刀剣達と内部で問題が発生し戦力が停滞したケースが多いんです。こちらとしては、」 「申し訳ありませんが」 まだかかりそうな話に割って入って、二人にほのかな笑みを浮かべた顔を向ける。 「そういった内輪揉めはここではなく、お役所でやっていただけませんか?」 苛立ちを隠す事無く不遜に吐き捨ててやると、自分たちがいる場所を思い出したのかはっとして姿勢を正した。 隣に控える陸奥守は、この話が出てからいつもある笑みを捨て去り、硬い表情でそこにあったことも彼らを慌てさせた要因だろう。 「2点ほど確認したいことがりあります」 目の前に突き出した2本の指の一つ目を折り畳む。 「1つは、そのお話を受けるか受けないか、私に選ぶ権利はあるのでしょうか?」 「はい、もちろんです。強制ではありません。ですが……」 「貴方のご意見は別に結構です。 なにか説き伏せたい内容があるのでしたら、後日書面で提出して下さい。目を通すぐらいはします」 繰り返しされそうな回りくどい説得を先に叩き伏せ、書面というのちのち物的証拠になりそうなものに内容をまとめてよこせと存外に言い捨てる。 ぐっと詰まった役人を放っておいて、最後の一つを口にした。 「2つ目は、相手方の刀剣が引き継ぎを望んでいるのかどうかです。 もしその点を確認せず、ましてや必要ないとお思いでしたら話にもなりませんね」 黙り込んでしまった役人に小さく溜め息を吐く。 コレだから、刀剣を中身のからっぽな人形か何かだと思っている人種はイヤなのだ。 「その様子ですと自身の主がなぜ廃されたのかの説明もしてなさそうですねぇ…。 突然現れた役人がこう言う──“あなた方の主は先日の一件で咎を受け、審神者の任を辞しました。つきましてあなた方には次の主の元にいってもらいその刀をまた奮ってもらいます”って。なんですその顔、図星ですか…? 呆れた……そんな彼らが来る先は、主が退く原因となった女。そんなところで、まともな戦力になるとでも? なりませんよねぇ」 演技がかった口調で言葉を並べていくと、真っ青に顔を染めた役人をきつく睨む。 「相手は曲がりなりにも、神様です。 物のように扱うと機嫌をそこなう者もおりますから、今後は注意するのがいいでしょうね」 そう言って、もう手遅れかもしれませんが、とうっそりと笑っていってやった。 一足先に逃げるように本丸を後にした役人の背中を見送ってから担当と向き直る。 「少々、いじめすぎましたか?」 「いえいえ、アレくらい言っておかないときかないでしょう。 いやぁ、しかし。やっぱり、神罰とかの話は審神者さんが言うと迫力ありあますね」 私達が口を酸っぱくして言っても「はいはい」ってながされちゃうんですよ〜と苦笑まじりに頭をかく担当に苦笑する。 「……だから、わざとここに連絡も寄越さず連れて来たんですね」 担当は、そこでぐっと何かを耐えるように顔を顰めると、「すみません」と深く頭を下げた。 「あちらさんの意見を黙らせるには、他に方法も無く」 「上から咎められたら担当さんも共犯と報告しますよ」 「はい、その場合は誠心誠意一緒に怒られます」 そう軽口を言い合ってその場はお開きとなった。