この学舎を卒業して十数年。 彼女との繋がりを絶ってから長い時の流れは、巡り巡って再会へと導かれた。 自分の助手という地位に就いたマリーは、右目の眼帯をつけるようになったこと以外は昔と変わらず、気高く美しかった。 記憶によく残っているのは、どこか遠くを見つめる彼女の横顔だった。 いや、よくよく考えて見れば彼女とは真っ直ぐと向き合った事がほとんどないのだ。 だから覗き見た彼女の真っ直ぐな横顔ばかりが、記憶に鮮明に残っている。 それは10年前、死んだと噂されたあの時から決して色褪せる事はない記憶だ。 「セブルス?」 不思議そうにこちらを覗き込んでくる碧の隻眼に、思考に意識が向きすぎていたかとスネイプは自嘲する。 「何でもない……少し考え事をしていた」 「そう…?あぁ、紅茶が冷めてしまったね。入れ直すよ」 変化の乏しい表情を緩ませたマリーに、スネイプは悪かったと素直に謝罪の言葉を口にする。 別れから再会まで永い時間がその間に横たわっているせいか、今一分一秒が酷く惜しい。 意地もプライドもかなぐり捨てて、傍にいる彼女を感じていたいのだ。 「マリー」 この名を口にし、その声に振り返る柔らかな表情を、幾度思い描き熱望しただろうか。 「今日はどうかした?」 何だか、とそこまで呟いてからマリーは苦く口元を歪め目を細めた。 「どこか遠くにいる者を呼んでいるみたい……。変だね、私は此処にいるというのに」 温かな琥珀が揺れるガラス製のティーポットを手にして表情を緩める マリーに、心底敵わないと思った。 細い体を抱き寄せた腕を彼女は拒まず受け入れてくれた事に、じんわりとした熱が胸のうちに広がった。 END