かちりと、歯が鳴った。 露になったその白い首筋に、歯を立てたい衝動に駆られた。 (セブルス?) 音もなく唇のみが、自分の名前を呟く。 暑い気温に上がった体温、いつもより血色がいい肌に、汗が滲んでいた。 これは、いけない。 何が、というわけではないが、何か本能的な警報が頭の中に鳴り響く。 頭の中の誰かが、その首筋に赤い歯痕をつけたいと欲望を囁く。 (あつい。) 呟く唇の赤さに目が奪われ、ごくりと無意識に喉がなった。 あつい、と先程から幾度となく呟いて。 取り払われたネクタイは机の上、何時もはしっかり留められた釦も上から3つも外されていた。 汗に張り付く服を嫌がってか、胸元をつかんでバタバタと仰げば、微かに赤く染まった白い首筋だけでなくその下、鎖骨よりさらに下が微かにちらついた。 渇いた喉に悲鳴が張り付く。 いつもは布の下に隠されたままの肌を、容易く晒す憎たらしいほどの警戒心のなさに、ぐらぐらと煮立つ頭には警報が鳴り響く。 最早、限界だ。 お前が悪いんだと、耐え症のない自分を棚にあげた。 「マリー……」 呼ばれた名に彼女は振り返ると、こてんと首を傾げる。 その首筋に触れた指先が、そのまま細い体を抱き寄せた。 目前に晒された白い首筋に、ぐらりと歪む視界の端が熱に赤く染まる。 耳の奥に、微かに息を飲む音を聞いた──……。 「それで。熱中症で倒れたのね、この人」 医務室のベッドに転がされた男を、呆れたように見下ろしたリリーは深い溜め息を吐く。 茹だった頭を冷やすべく、額に乗せる濡れタオルの面倒を見ているマリーは、困り顔でリリーを見た。 「大丈夫よ、今日とても暑かったから」 それでもリリーは、情けない幼馴染みの為にマリーの心配を誤魔化してあげる──まさか、思春期が振り切ってぶっ倒れたと思うまい。 マリーはベッドの住人となってしまったスネイプを振り返った。 「そういえば、マリー。 そんなに上まで釦しめて、暑くないの?」 暑がりな彼女が最近、釦を開けていることが多いのに、今は上まできちんとしめてネクタイもしてある。 マリーはびくりと肩を震わせたあと、大丈夫!と言うように何度も頷いた。 「そう……? 無理はしちゃだめよ、コレみたいになるから」 華やかに笑う友人に、彼が原因でこうなっているのだ、とは言えずにマリーは苦笑した。 今一度隠された首筋には、また赤い歯痕が残されている。 end (リクエスト作:消えるまでは、このまま)