一番強く記憶に残っているのは、真っ直ぐな視線で何かを見つめるその横顔だ。 そよ風に揺れる黒髪は陽の光を受けて青い輪郭線を描いている。 自分はそれを泉のほとりの木に体をあずけながら、ただじっと見つめていた。 ゆるりと一度瞼が伏せられた後、宝石のように澄んだ碧眼はこちらを振り返った。 人形じみた色のない表情が、こちらに気づいて綻ぶ。 『ーー』 笑みを浮かべる唇がゆっくりと動く。 おそらく自分の名を呼んでくれたのであろう彼女の声が、もう思い出せない。 微笑む彼女が自分の目の前までやってきて、白い手の差し出す。 その手を掴もうと伸ばした手は、何も掴むことなく空を掻く。 ぐらりと揺れた足元は消え、浮遊感を感じた次の瞬間には深い泥沼に沈むように体は落下していった。 遠ざかって行く、悲しげに眉を下げた彼女の顔が別れ際に見たそれと重なる。 喉が張り裂けんばかりに叫んだ彼女の名前は、おそらく誰に届くこともなく泥沼に埋もれて消えた。 ・・・ うたた寝してしまっていたソファの上で、びくりと体を震わせスネイプは目を覚ました。 ひゅぅっと乾いた喉が鳴る。浅くなった呼吸を整えるように深い溜め息を吐き出す。 落ち着いた呼吸に強張っていた体から力が抜け、指先が白くなるほど強く掴んでいたソファの肘置きから手を外し、額に僅かに滲んだ汗をその手のひらで拭った。 ──ひどく懐かしく、愛おしい夢を見てしまった。 それは馬鹿馬鹿しい程に自身の内情を表していて、自分の未熟さに腹が立つ。 冷静さを欠く事は許されないというのに、彼女の事となればすぐにこの心は乱れてしまう。 そのせいで、この手から大事なものを取り零して来たというのに、自分はあれから全く進歩がない様だ。 夢でさえ彼女の手を掴めなかった手をきつく握りしめる。 自嘲と呆れからスネイプは深い溜息を吐き出した。 そして、ついに思い出せなくなってしまった彼女の声に、月日の流れを強く感じてしまう。 あれから10年──人の記憶は“声”から忘れて行くと聞いたが、あれは真実だったようだ。 スネイプはテーブルに放置されたままのカップを口に運んだ。もう完全に冷めてしまった紅茶は、しかし乾いた喉に心地良い。 視線をゆっくりと壁掛けの時計に移し、針が指す時間を確かめてスネイプは重い腰を上げた。 なんとか約束の時間にはまに合いそうだ。 初めての顔合わせを寝過ごしたでは、笑い話にもならない。 件の助手とは今日まで対面する事なく、歓迎会当日を迎える事となってしまった。 しかし、歓迎会の時に教授とその助手が初めて会う言うのも少々問題があるだろうということで、歓迎会前に校長室で顔合わせをしなさいとマクゴナガルから提案がありスネイプたちはそれを了承した。 スネイプはとある扉の前に立ち、呼吸を一旦整えてから扉を開く呪文を口にする。 するとガーゴイルゆっくりと開いて行く扉、歴代の校長の肖像が並ぶ部屋に足を踏み入れた。 「お待たせしました」 ダンブルドア校長とその側に立つマクゴナガル、そして助手となる人物がいるであろうという予想に反して、そこにはソファにちょこんと座った黒猫がいた。 何故猫が?と思わず顔を顰めると、スネイプのその反応にダンブルドアはニッコリを笑顔を見せた。 「来たか、セブルス。ちょうど、この子も今きた所でのぉ」 「この子とは………この猫の事でしようか?」 不審さを隠そうとしない声にダンブルドアは喉を鳴らして笑う。 「ただの猫ではありませんよ、セブルス。貴女も、きちんとご挨拶をなさい」 楽しんでる様子のダンブルドアに埒が開かないと思ってか口を挟んだマクゴナガルの言葉に、猫は応えるように一声鳴くと軽い身のこなしでソファから飛び下りた。 猫の足が絨毯を踏みしめた瞬間、その黒い体はぶわりと膨れ上がる。 驚きに目を見開いたスネイプの目前で猫背がするりと伸び上がり、ふわりと広がったローブの裾が元の位置に戻るとそこには、女が一人立っていた。 スネイプと向き合った女は宝石のような碧眼の一つ目をこちらと合わせるとゆるりと黙礼して口を開いた。 「マリー・カウンシルです──お久し振りですね、セブルス・スネイプ」 ただただ驚くしかない。 猫が人に変わった事などではない。 彼女が自分の目の前にいる事だ。 二度と会う事は叶わないと思っていた彼女──忘れかけたはずの彼女の声が、過去の記憶に色を戻して行く。 「何故……お前が…此処に」 溢れ出す感情に苦しいほどの胸を抑えそうになる手を押さえ込んで、絞り出すように言葉を発する。 その様子に不思議そうに彼女は小首を傾げた。 「貴方の助手になるという話で私は此処にいますが……聞いていなかったのですか?」 はくりと声もなく唇を動かすと、弾かれるようにスネイプはダンブルドアを振り返った。 「校長」 「セブルス」 言い募ろうとした言葉を遮るようにダンブルドアは名を呼ぶ。 ぐっと口を噤んだスネイプをまっすぐに見上げて、ダンブルドアは言い聞かせるようにゆっくりと話しかけた。 「彼女を君の助手として推薦したい」 「──……」 「君のことを彼女はよく理解しているし、彼女のことを君はよく理解しているはずだと思っての。 なかなかの人選じゃろ?」 ダンブルドアの言葉にスネイプは少し冷静さを取り戻した声で、「しかし」と呟いた。 うむと、ダンブルドアは愉快そうに笑った。 「歓迎会まで時間はある、セブルス。 少し落ち着いて考えてみるといい、答えはそれからで良い」 助手の話を持って来た時、確かにダンブルドアはスネイプが断れば自分の助手にすると言っていた。 とは言え、半月メガネの奥の瞳はこちらが断るなど思ってもいない輝きを持っていた。 握りしめたままの手のひらに嫌な汗が滲む。 黙り込んでしまったスネイプに、マクゴナガルは小さく息を吐くと「セブルス」と呼びかけた。 「貴方がマリーを、用意した部屋まで案内して下さい。 一先ず薬学教室の側の空き部屋を用意しましたが、決定によっては別の部屋も用意しますから。荷ほどきはその後にしたほうが良さそうですね?」 マクゴナガルの視線を受けてマリーは「えぇ」と肩を竦めて頷いた。 「これが鍵です。頼みましたよ」 「……はい」 手渡された鍵を受け取ったスネイプは、彼女と向き直った。 こちらを見つめる隻眼を僅かな時間黙ったまま見つめあった後、スネイプは「こちらに」と促すとマリーはダンブルドア達に挨拶をするとソファの脇に置いていたトランクを掴むとスネイプの後ろに続くように校長室を後にした。 重い音をたてて閉まった扉。 部屋に残ったマクゴナガルは難しい表情で深い息を吐き、ダンブルドアに厳しい視線を向けた。 「彼に“あの事”は伝えずにいてよろしいんですか?」 ダンブルドアは組んだ手を口元にあて「うむ」と重苦しい声で応えた。 「セブルスには辛いかもしれんが……知らん方がいい。まだ。 まだその時ではないのじゃ。それが、あの子達のためだとワシは思う」 ダンブルドアは悲痛な色をたたえた瞳を瞼で覆い隠した。 ・・・ 用意された部屋へと向かう間、二人は終始無言であった。 校長室をでてすぐに抱えていたトランクをスネイプが流れるように手から奪って持ってくれた時に、ありがとうとお礼を言った以降の会話はない。 入学式の準備のために廊下を足早に行く顔なじみの教授達とすれ違うぐらいで、まだ学生が到着していない校内はとても静かで人の気配がほとんどなかった。 懐かしい景色を見渡しつつも気づかれない程度にマリーは前を行く男の背中を見つめていた。 ここを卒業したあの日から彼、スネイプと顔を合わせることは一度もなかった。 別段避けていたわけではない──自分はそうでも彼は違うのかもしれない──が、ニアミスはありつつもこうして直接会うのは10年ぶりの筈だ。 背格好は記憶のままだが、成長の最中で線の薄さがあった体は男性らしくガッチリとしたものに変わっていて見上げる背中も随分と広い。 感慨深く思いつつも、年寄り臭い思考に思わず口の端を歪めた。 ちらりとこちらを振り返ったスネイプに口元に浮かんだ苦笑を隠し、何か?と視線で問えば。 視線はすぐに外され、固い声で「こっちだ」と道を示される。 地下へと向かう階段を行くスネイプの後を追って階段を降りた。 案内されたの部屋は、地下にある薬学教室のその奥、スネイプの私室の隣にある空き部屋だった。 長く使った様子のない部屋は埃は払われていたものの、地下室独特の寒さと湿っぽさがある。 しかし、空気を入れ替える為の魔法でも施しておけば大丈夫だろうと、“現段階”での自室を見渡した。 誰の助手になるのか確定するまでは、荷ほどきも出来ないので歓迎会まですることがないなと、ぼんやりと考えていると後ろから低く押し殺した声で名前を呼ばれた。 「マリー・カウンシル」 振り返ると扉の前に立つ、ひどい形相のスネイプと目が合った。 剣呑な光を宿す黒い瞳に見据えられ、マリーは気軽に返そうと思った言葉を飲み込んだ。 「私に何か、言うことはないのか?」 閉心術が得意な彼にしては珍しいその様子にマリーは悠長に珍しいなという感想を抱いてから口を開く。 「10年ぶりかな、久しぶりだね。…とは、さっきも言ったか」 できる限り軽い声色を心がけて話しながら視線をそらす。 久々の再会のせいか気づかぬうちに妙な緊張があるようで、なかなか言葉が続かない。 そんな様子に苛立ってか、強く握りしめられた拳に掛かる力が伝わって、僅かにスネイプの肩先が上がった。 爆発寸前の気配に殴られでもするだろうかと、頭の隅で思いつつ視線を彼へと戻す。 「──リリーを救えなかった、私を恨んでいるか?」 スネイプの顔色が、死体の様にさっと白くなった。 見開かれた彼の目に言葉の選び方を間違えたことに気づく。 戦慄いた唇から呻くように言葉が落ちた。 「この10年間!私がどんな気持ちで……っ!」 「セブルス」 俯き肩を震わすスネイプの傍に歩み寄り、宥めようと伸ばした手は彼に触れる前に握り込んで下ろす。 手を伸ばせば触れれる距離に立ちながら、それが出来ない自身に気付きマリーは目を伏せた。 「すまない。あの夜、幼馴染を喪った君に……傍にいることも出来ず友として申し訳なく思うよ」 自分がこの10年、姿を消すに至った理由の中にはスネイプとの共通の友の死があった。 10年前のハロウィンの夜の悲劇。幸せが詰まった小さな家をめちゃくちゃにした悪意。 今でもその悪夢に魘される事がある。 「どこまで君があの夜のことを知っているのかはわからないが…謝らせてくれ。 私は、あの場にいながらリリー達を救うことが出来なかった」 スネイプは顔をあげなかった。その様子に、すでに知っていたのだろうなとマリーは思った。 「許してくれとは言わない……これはただの独りよがりの懺悔だ。 すまない、セブルス。私は……」 生き残ってしまった、と呟くと同時に強い力で両肩を掴まれた。 見開いた隻眼で、悲痛そうに顔を歪めるスネイプの顔を見上げる。 「違うっ!!私はこの10年、お前の死を覚悟していた!」 指が食い込むほどに掴まれた腕の痛みがじんわりと遅れて脳に染み込んできた。 「あの夜何があったのかは知っている……だが、お前に何が起こったのかはどうやっても知ることが出来なかった。 ただ、いなくなったお前の影には、死にまつわる噂しかなかった……それを、どんな気持ちで…っ」 「……ごめん」 マリーは眉尻を下げると、肩を掴む彼の腕に手を重ねた。 力が篭った硬い腕を宥めるように優しく触れながら、もう一度「ごめん」と言葉を重ねる。 「生きていてくれて、良かった」 深い感嘆と共に吐き出された言葉に、マリーは瞼を伏せた。 嗚呼、君はそう言ってくれるのか…そう思ってくれるのか。 「ありがとう」 そう告げてゆるく微笑みながら、心の中でもう一度「ごめん」と呟いた。 触れていた手の下でスネイプの腕の力が少しずつ抜けていくのがわかった。 指が食い込むほど強く掴んでいた肩から指をゆっくりと離し、与えてしまった痛みを後悔するように優しく撫ぜた後スネイプの手は離れていく。 それに合わせてマリーも彼に触れていた手を下ろした。 「すまない……感情に任せた行動をしてしまった」 「いいや。これは私に非があることだから。 心配をかけしまっていたようだね……てっきり私はダンブルドア先生から話を聞いていたと思っていたから」 ぽろっと口にした名前にスネイプの目つきが鋭くなる。 「校長から……?」 「あぁ。校長にはあの夜全て事情を話して、それから隠遁していたから……“騎士団”のメンバーには話がいってると」 思ってたんだけど、と思わず語尾が小さくなってしまう。目前の男の顔は苦々しく顰められていた。 「……なかったみたいだね」 「あぁ……。おそらく、お前の友人たちも知らないのではないか?」 思わず自分も渋い顔になってしまった。 居所を隠すためにも自分から連絡をとるわけにいかなかったため、ダンブルドアがおおまかな話はしていると思い込んでいたのだ。 これは至急、友人たちにもフクロウ便を送らないと行けないかもしれない。 「私も色々聞きたいことがあるが……ここに君がいると言うのなら、機会はいつでもあるだろう」 スネイプが足元に置かれていたトランクを持ち上げて差し出す。 両手で受けとったそれは本棚の奥から引っ張り出してきた懐かしい教科書が詰まっているため若干重い。 「歓迎会まではまだ時間があるな……紅茶でも淹れよう。残念ながら菓子の類はないが。 紅茶を蒸らす間にその量なら荷ほどきは済むだろう?」 え、と思わず声を漏らして彼を見上げると、スネイプは咳払いを一つした。 「これからよろしく頼む、助手殿」 ぱちりと隻眼を瞬かせたあと、マリーはゆるりと破顔した。 「こちらこそよろしく、教授」 微かに唇に笑みを浮かべたスネイプは荷ほどきが済んだら隣の部屋に来るように言って踵を返した。 部屋を出て行く背中を見送ったマリーは扉が閉まると、トランクを床に置き『開け』と言葉をかける。 するとトランクがぱかりと開いて、荷物があるべき場所へと飛んで行く。 『換気』『空気の道』と思い浮かぶ今必要な“言葉”を口にしながら、懐から出した杖で飛び交う荷物に行き先を指し示す。 あっと言う間に荷ほどきを終えると、マリーは招待された茶会に行くべく部屋を後にした。 ・・・ 「校長から聞いたか?」 差し出されたティーカップとともに投げかけた言葉に、マリーは不思議そうに「何を?」と返してきた。 スネイプは自分の前の紅茶に砂糖を一つ入れると、マリーの反応に少し眉を吊り上げる。 「石だ」 端的に答えれば、一瞬悩んだ後思い至ったのか「あぁ」と一つ頷いた。 「Mr.フラメルが作ったあの石の事か…。つい先ほど、校長からお話があったところだよ」 そう言いながら紅茶を一口飲んでから、マリーはスネイプにならって紅茶に砂糖を一つ入れた。 銀のスプーンでそれをゆっくりと掻き混ぜながら、マリーはぼんやりと視線を彷徨わせながら呟く。 「グリンゴッツから移して来たらしいね…… 此処に移すより、金庫を移動させた方が良かったと思うけどね」 「何故だ?」 「……何故って」 鋭いスネイプの問いかけにマリーは言葉を濁した。 「別に…理由は無いよ。 ただ、あそこに物を預けて私は無くした事がないから」 それだけだよ、と言って手のひらの中のカップを弄ぶ。 「ここに、裏切り者でもいると考えているのではないか?」 その言葉にゆるりと細められた碧眼が、真意を探るように目の前に座る自分を見る。 スネイプはそのすべてに無関心に見える瞳に暗い何かがチラついたことに気づいたが、あまりに一瞬でソレが何かまでは読み取る事が出来なかった。 「それならダンブルドア先生が気付いている筈だ」 「………あの方だって、万能ではない」 「そうだね」 そう言ってマリーは口許を歪めた。 笑っていると取るべきか計りかねる表情に、スネイプは顔を顰めた。 「それを言えば、あの男……ヴォルデモートと奴の賛同者共も同じだ」 忌み名と口に出すことも憚られるその名を事も無げに口にして、マリーは暗い目で笑った。 「もし、裏切り者が出てばすぐに見つけられるさ、そのために私が此処にいる」 「……」 スネイプが言葉に窮している間に、マリーは飲み干して空になったティーカップをソーサーの上に戻した。 スネイプも同じく空いたカップを置くと、マリーに視線を向けた。 気になるのは、ここを卒業した時にはなかった右目を覆う黒い眼帯。 しかし、本能的に聞いてはいけない気がして、スネイプはその疑問を腹の底に沈め、違う言葉を舌に乗せた。 「お前はどう守りに参加するつもりなんだ?」 そう質問するとマリーは唯一の左目をスネイプに向けた。 「校長から特にどうしろとは言われていないが……その守りとやらは、誰が関わっているんだ?」 「私とマクゴナガル、スプラウト、フリットウィック、そしてクィレルとダンブルドア校長もだろう」 「ふぅん……」 目を細めてまるで息を吐く様に呟くと、マリーは指で軽く頬を掻いた。 「それ程守りが堅ければ、私は必要ないんじゃないかなぁ」 「何を言っている、“ガブリエル”であるお前がいれば─…」 「セブルス…!」 突然の鋭い声にスネイプは口を閉じた。 不快そうに顔を歪めたマリーは、歯を食いしばって顔を俯けた。 「君にまで、その名前で呼ばれたくない……」 「……………そうだったな、すまない」 代々受け継いでいく“ガブリエル”の名を彼女は極端に嫌う。 それを忘れて思わず出た言葉があまりに短慮過ぎて、スネイプは唸る様に謝罪を口にした。 “ガブリエル”──彼女の血筋が継ぐ、家長の名前。 それは、マリーがカウンシル家の家長である事を示し。 また、ある“能力”を受け継いだ者だという事もまた示していた。 「声を荒げてしまって、すまない。相変わらず……その名は苦手なんだ」 「……」 そう言ってまたぼんやりとした視線を彷徨わせるマリーの表情は、先程と違って少しだけ強張って見えた。 マリーは彷徨わせた視線を時計で止める。 「新入生は何時にここに?」 「──列車は11時に駅を出た筈だ」 「なら、もう着くね」 マリーにならってスネイプが部屋にある時計に視線をちらりと向けると、何の気もない呟きを洩らした。 「……時間、そろそろかな。 大広間に行きましょうか、スネイプ教授」 そう言って振り返ったマリーの愉快そうな声に、スネイプは肩を竦めてソファから腰を上げた。