ハリーは、ジェームズとリリーの息子はグリフィンドールに決まった。 マリーは確かに、組分け帽子がハリーの決定を口にした瞬間、スネイプの口許が引きつったのを見た。 (まさかとは思うが…ハリーにジェームズを重ねて見てないだろうなぁ) そう少々呆れつつ、スネイプから視線を外し他の来賓席を見渡せば。ハグリッドは満面の笑みで、マクゴナガル先生は満更でもない表情をしていた。 相変わらずダンブルドア校長はすべてを見通した様な笑みを浮かべ、慈しみの瞳に生徒を写している。 そのまま寮生の席に視線を移せば、こちらを見上げたハリーと目が合った。 (本当……瞳以外はジェームズと瓜二つだな) こちらを真っ直ぐに見上げるハリーの顔を見返しながら、そんな事をボンヤリ考えていると隣のスネイプがひそりと囁いた。 「随分機嫌が宜しい様ですな、ミス・カウンシル。 ポッターの息子がグリフィンドールになった事がよほど嬉しい様だ」 「驚いたな、表情に出てたか?」 「………出なくてもそれくらいわかる」 「ははは…敵わないなぁ」 そんな軽口の応酬を繰り返しているうちに、組分けは終わりダンブルドアが椅子から立った。 「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせて頂きたい。 では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこいしょい!」 自分が在学中聞いた挨拶と全く同じその言葉に懐かしさからマリーは目をゆるく細めた。 そして、豪華な歓迎会は始まった。 寮生の席と同じ様に、教員席の大皿も食べ物でいっぱいになった。 戻って来たマクゴナガルが、ダンブルドアとマリーの間に座り、変わらない厳しい表情ではあるが優しい声で言葉をかけてくれた。 「緊張はしてないみたいですね、マリー。 ローストビーフはいかがかしら?」 差し出されたローストビーフに自分の皿を差し出して、マリーはえぇと気の抜けた返事を返した。 「まぁ、新任といえど助手だと気楽なもので」 「そうですか。貴女の紹介はこのご馳走の後です。 早めに紹介したいところでしたが、生徒をこれ以上飢えさせるわけにはいけないとダンブルドア校長が……」 「ダンブルドア先生らしいお言葉ですね」 まったくと溜め息まじりに語るマクゴナガルに、マリーは納得した様に頷いた。 がっつくようにご馳走に食らいつく生徒達を見れば、ダンブルドア先生の言葉が正しいことはよくわかる。 マクゴナガルがダンブルドアと話を始め、反対隣のスネイプは、怪しいターバンを巻いたクィレルと話をしている。 マリーはボンヤリと生徒の雑音に耳を寄せながら、スープに浮く豆を掬い取った。 突然、何かが起こった。 右目を焼く様な痛みが走り、思わず両手で押さえると、持っていたスプーンがテーブルを跳ねキンっと硬質な音をたてて床に落ちた。 「マリー……?!」 ぐらぐらと揺らぐ左目だけ視界に、黒い影が揺らぐ。 生徒の声は止まっていない事から、こちらの事は気付いていないのだろう。 背に触れた手はスネイプのようだ。 「マリー!」 「だ、大丈…ぶだ………」 テーブルに倒れ臥すように倒していた体を起こし、マリーはそっと眼帯の上から右目を撫ぜた。 痛みは急に走り、同じように急に消えていた。 「マリー、痛むのですか!?」 目の前に心配そうに顔を覗き込むマクゴナガルの顔がある。 「……一瞬…痛んだだけです……」 「……また痛む様でしたら、ダンブルドア校長から薬を頂くんですよ。 本当に、大丈夫なんですね?」 「はい…」 マリーが素直に頷くとマクゴナガル先生はほっと息を吐いた。 まだ右目を押さえるマリーを支える様に腕を背中に回しているスネイプの後ろから、クィレルがオドオドとこちらを見ている。……これはほっておいて良いが、問題はこちらだ。 マリーはクィレルからスネイプに目を戻した。 「……大丈夫。たまに古傷が痛むんだ」 無言のままのスネイプに、マリーは口許を歪めた。 「大丈夫」 もう一度繰り返せば、背中を支えていた手が離れていった。 右目を眼帯の上から撫ぜながら、痛んだ理由を尋ねてこなかったスネイプに感謝する。 尋ねられたとして、マリーにはそれをスネイプに正直に話せるか、全く自信がなかった。 ・・・ あんなにたくさんあったご馳走の皿はほとんど空になり、お腹を膨らした子供達の声も落ち着いたものになった頃、ダンブルドアが再び立ち上がった。 ふぃっと杖を振ると、テーブルの上を埋め尽くしていたあれこれがあっという間に姿を消し、艶やかに磨かれた面をあらわにした。それが合図となって話すのをぴたりと止めた生徒たちの視線がダンブルドアに集まる。 「エヘン──……全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。 新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある…………今年、魔法薬のスネイプ教授に助手を迎える事になった」 ちらりと向けられたダンブルドアの視線に、マリーは頷くと静かに椅子から立ち上がった。 「彼女はガブリエル・マリー・カウンシル。 ホグワーツの卒業生であり、スネイプ教授に並ぶ魔法薬の実力じゃ。 マリー、何か言う事はあるかな?」 「………皆さん、どうぞよろしくお願いします」 当たり障りもない挨拶を口にすると、広間中に響き渡る拍手がなった。 あまりの拍手に少し照れ臭く頬を掻くと、ダンブルドア先生はニッコリ笑ってその拍手を制した。 「だそうじゃ、次は……」 次の注意に移ったダンブルドアに、マリーはほっと息を吐いて腰を下ろした。 「気の利かない挨拶だな」 「自覚はある」 「いや、悪いとは言ってない。 相変わらずだな、と言いたかっただけだ」 にやりと笑ったスネイプに、マリーは「嫌味な…」とため息交じりにぼやく。 「お二方、雑談は後になさい」 マクゴナガルから飛んだ子供を叱る様な言葉に、スネイプは言い返そうとした様だが自分の行動を省みたのか不機嫌そうに口を真一文字に結んで正面を向いてしまった。 その様子に口許を歪めると、ダンブルドアが声を張り上げた。 「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」 その表情のままマリーが一瞬固まったのは無理も無い。 同じ様に他の教授達の笑顔も強張っていた。