「大体──どうしていつもお前はそうなのだ」 「その言葉、そっくり君に返そうじゃないか」 《言霊》使いのマリーが言葉を武器に扱っているのと同じく、言い回しやらなんやらで生徒を追い詰めるスネイプの言葉もなかなかの武器だよなぁ。 と、ルーピンは痴話喧嘩の真っ只中で自分が持って来ていたチョコレートを暢気に頬張りながら、さながら冷戦を傍観していた。 「吸魂鬼と接触があるたび、幻覚を見るなど聞いていないぞ」 今回の喧嘩も、マリーの沈黙が原因らしいと、ルーピンは怖い顔のスネイプから、むっつりとしたマリーへと視線を移した。 「私はハリーみたいに倒れたりするわけじゃないんだ、それをわざわざ話す必要なんかない」 「秘密主義もいい加減にしてもらいたいものだ」 眉間のシワがこれ以上寄りはしないだろうと言うくらいに寄せたスネイプの顔。 その気迫が、少しばかり闇側にいた事を感じさせるぐらいにはダークで、ルーピンは流石に嫌な時に脱狼薬をとりに来てしまったものだと肩を落とす。 「そもそも……君が心配性過ぎるのがいけないんじゃないか」 対するマリーも、珍しくその喧嘩腰に応じているあたり、御機嫌は麗しくないようだ。 「この体だからと言って、知能まで子供になったつもりはない。 自己管理も、責任ぐらいとれるのにそれを君ときたら……」 「──婚約者の心配をしてはいけないと?」 「過保護が過ぎると言っているんだよ」 少し疲れたように吐き出された溜め息は、マリーの憂いを顕著に示していた。 「何の為に黙っていたと思っているんだ」 「いい加減、それが逆効果だといつ気付く? そのたびに、私とこの問答を繰り返しているというのに」 「それは──」 微かに言い淀んだマリーに、スネイプはここぞとばかりに距離をつめた。 「心配性? それの何が悪い、大事だからこそお前を心配しているんだ」 畳み掛けるように唱われる言葉に、口を噤むしかないマリーに、ルーピンはこの勝敗の結果をみた。 「お前に何かあったら……私はどうすればいいのだ」 「セブルス……」 頬を包み込む掌に目を細めたマリーに、もうやってられないとばかりにルーピンはパンパンと手を叩いた。 「はいはい、これはマリーの負けだよ」 マリーは困ったように笑い、スネイプは完全に存在を忘れていたのだろう、一瞬虚を突かれた顔をしてから苦々しい表情をしていた。 全く、とルーピンはチョコレートを食べた事を少しばかり後悔した。 こんなの甘過ぎて胃もたれがしそうだ。 痴話喧嘩は犬も食わないどころか、人狼だって食べないよお二人さん。 END (かわいそうなルーピン先生)