「これでは、勝ち逃ではないか……マリー」 ぽつりと呟いた言葉は虚空に消えた。 これまで彼女に勝てた事など、一度もありはしない。 いつも先を詠み、先を行く彼女の背中を追い掛けるばかりで、自分は何一つ、彼女の先を行くことなど出来なかった。 「ふざけるな」 吐き捨てる悪態も虚しい。 何故、何故マリーが呪いなどうけ、死なねばならなかったのか。 何故、何故マリーは自分に一度も頼ってくれずに──私をおいて逝った。 愛してる。 愛してる。 マリーは最期にそう遺した。 自分が一度も口にする事がなかったそれを、返す間もなくその最期の時に彼女は言った。 (愛してる──セブルス) 彼女に勝てた事など、ありはしない。 愛の言葉さえ、彼女が先だった。 「マリー、お前は狡い」 泣き濡れた顔は酷く汚いだろうに、大の大人がそれに形振り構っている余裕もない。 (愛してる) その言葉は呪いだ。 「私は、お前に一度も言えなかったのに」 (愛してる) 彼女はゆっくりと微笑んだ。 「──っ」 (愛してる、セブルス──だから生きて) 彼女は、あとを追うことさえ許してくれなかった。 2021.1.9 (初公開2012.2.4)