※※あのハロウィンの夜に助手が死亡していたルートでの、セブルスス・ネイプの最期※※ ハリー・ポッターの母譲りの碧眼が、左右微妙に違うのだと知ったのは死ぬ間際のことだった。 至近距離で見下ろす二つの瞳に、二人の女の姿を見た。 リリー──彼の母であり、幼少期を共にした美しい人。 そして──自分が愛した碧眼の女性。 (マリー) 口の中で呟いた彼女の名前に、今まで潤みもしていなかったハリーの右目から涙が溢れ落ちた。 (嗚呼、マリー……お前はそこにいたのか) 伸ばした手が、少年の右目に触れる。 見開かれた瞳に、死にかけの自分の姿が写り込んでいた。 名前を呼びたいのに、もう声が出ない。 (ずっとそこで、見守っていてくれたのか) その問いかけに応えるように柔らかく細められた碧眼にスネイプは笑った。 眦から涙が次々にこぼれ落ちてく。 (言いたい言葉があるんだ、ずっと昔からお前に伝えたかったんだ) 鼻を、百合の花の香りが掠めた。 (今、そっちに行く。そしたらちゃんと言うから) 瞼が重い、持ち上げていた腕の力も抜け、ずるりと落ちた手を誰かが握った。 「うん、そしたら私も応えるよ」 静かな、柔らかな声に口の端が緩む。 意識が白く濁り、微睡みのような死にゆったりと沈んでいく。 その手を離さないように握り締めながら、次に目覚めた時にお前に伝えよう。 (愛している) (愛している、マリー) 彼は碧の瞳に見守られ、静かに息を引き取った。 (初公開:2012.9.21)