リドルが笑うのを止めるのを待つうちに、ハリーの目に光が戻るのを感じて、マリーは肩を掴んでいた手を離し立ち上がった。 そして、貪るような醜悪な目を向けてくるリドルと視線を絡めた。 彼が自分の眼帯の下を舐めるように見ているのに、特に表情を変えるほどの感情の起伏もなかった。 不気味な赤は、過去も今も未来も、ヴォルデモートは変わらない事が、ただ、突き付けられている気がしていた。 絡み付く蛇のような執着も、また──変わってはいない。 「さて、偶然にも当事者全員が揃った。 ハリー、本題に入ろうか」 リドルは昂然とした笑みを浮かべたまま、マリーとハリーを見ていた。 「二回も──君は過去に、僕にとっては未来だが──僕達は出会った。 そして二回とも僕は君を殺し損ねた。 君はどうやって生き残った?」 リドルは静かに言い、ハリーからマリーへと視線を移した。 「同じようにその場にいたようだが、カウンシル家の当主であるガブリエルはともかく。 これといって特別でもない赤ん坊が、不世出の偉大な魔法使いをどうやって破ったか、すべて聞かせてもらおうか」 リドルは鋭い視線でハリーを見下ろした。 記憶でしかないリドルの輪郭が徐々にはっきりしてきたことに気付き、ジニーの命のリミットは近いことを知る。 「君が僕を襲った時、どうして君が力を失ったのか、誰にもわからない」 ハリーは蕩々と話しはじめた。 「僕自身もわからない。 でも、何故君が僕を殺せなかったのか、僕にはわかる。 母が、僕を庇って死んだからだ。 母は普通の、マグル生まれの母だ」 ハリーは、怒りを押さえ付けているのかワナワナと震えていた。 「君が僕を殺すのを、母が食い止めたんだ。 僕は本当の君を見たぞ、去年の事だ。落ちぶれた残骸だ。かろうじて生きている。 君の力の成れの果てだ。君は逃げ隠れしている! 醜い! 汚らわしい!」 リドルは顔を一瞬歪ませたが、それから無理矢理、ぞっとするような笑顔を取り繕った。 「そうか──母親が君を救う為に死んだ、なるほど。 それは呪いに対する強力な反対呪文だ。 そうか、そうか、結局君自身は特別でもなんでもないわけだ。 実は何かあると思っていたんだ」 そうせせら笑うリドルの表情に、ハリーは顔を顰めた。 「ハリー・ポッター、何しろ僕たちには不思議に似たところがある。 君も気付いていただろう?」 「──……」 「二人とも混血で、孤児で、マグルに育てられた。 偉大なるスリザリン様ご自身以来、ホグワーツに入学した生徒の中で蛇語を話せるのは、たった二人だけだろう。 見た目もどこか似ている……しかし、僕の手から逃れられたのは、結局幸運だったからに過ぎないのか。 それだけわかれば十分だ──」 ハリーとマリーは今にもリドルが杖を振り上げるだろうと体を固くしたが、しかし、リドルの歪んだ笑いはまたもや広がった。 「さて、もう少し揉んでやろう。 サラザール・スリザリンの継承者・ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターと、ダンブルドアがくださった精一杯の武器とを、お手合わせ願おうか」 リドルはフォークスらをからかうように、ちらりと見て踵を返した。 「誇るがいい、観客はガブリエル・カウンシルだ」 ハリーは感覚のなくなった両足に恐怖が染み渡っていくのを感じながらリドルを見つめていた。 リドルは一対の高い柱の間で立ち止まり、ずっと上の方に、半分暗闇に覆われているスリザリンの石像の顔を見上げた。 横に口を大きく開くと、シューシューと音が漏れた──マリーは不思議そうな顔をしていたが、ハリーにはリドルが何を言ったのかわかった。蛇語だ。 「“スリザリンよ、ホグワーツ四強の中で最強の者よ。我に話したまえ”」 ハリーは向きを変えて石像を見上げた。 スリザリンの巨大な石の顔が動き、石像の口がだんだん広がって行き、ついに大きな穴になるのを見ていた。 あまりの恐怖に立ち尽くすハリーの目の前で、石像の口の中でうごめく何かが這い出してくる。 突然、体が引かれハリーの背中が暗い壁にぶつかった。 その衝撃にハリーの肩からフォークスが飛び立った。 見開いた目の前に広がるのは、マリーの黒いローブだ。 「マリーさん?!」 マリーの広い背中で何も見えなかったが、何か巨大なものが部屋の石の床に落ち、床の振動が足の裏から伝わってきたのが感覚でわかる。 巨大な蛇がスリザリンの口から出て来て、とぐろを解いているのが目に見えるような気がした。 「ほう……自らに《言霊》をかけたか。 君にはバジリスクの睨みはきかないようだな。 まぁ、いいさ、君には話しがある」 リドルの言葉にマリーは答えなかった。 #マリー3は小さくハリーの名前を呼んだ。 「真のグリフィンドール生だけが、それを手にする事が出来る──自分を信じろ」 ハリーは自分の中に残る不安を暴かれたようで、ドキリと心音が乱れた。 ハリーが口を開く前に、リドルの低い声が聞こえてきた。 「“あいつを殺せ”」 埃っぽい床をズルズルと鱗が滑る音が素早く近づいてくる。 ハリーの手を、マリーが引いた。 ハリーは焦って出した足が躓き、石の床にしたたか顔を打ち付けた。 「しまった……!」 繋がれていた手が離れてしまった。 切れたのか口の中で血の味がした。 ハリーの真上で破裂するような蛇の声がした。 避けようと上体を起こしたハリーの横腹に、何か重いものがぶつかり、その強烈な衝撃でハリーは壁に打ち付けられた。 「ハリー!」 「他を気にしている余裕があるかな?」 崩れ落ちたハリーに駆けよろうとしたマリーの首に杖が突き付けられた。 マリーの鋭い隻眼が、リドルを睨み付けた。 「話しがあるといっただろう? 教えて貰おうか、彼が知らない11年前のあの夜の真実を──」 リドルは冷酷な笑みを浮かべていた。 突き付けられた杖が微かに首筋に刺さる。 下手に身動きが取れない中で、マリーは視線だけでハリーの安否を確認した。 ハリーは無傷とまでは言わないが無事だった、ただ、まだ油断は出来ないバジリスクはハリーからまだ目を反らしていない。 「今の君に、ハリーを気にする余裕はないはずだ」 「っ」 さらに押し付けられた杖の切っ先に、微かな息苦しさを感じてマリーはリドルに目線を戻す。 「真実? ハリーが先程話したばかりだろう。 それ以外に何かあるのか?」 「その夜じゃない──君が、呪いを受けた夜の事だ」 「……………」 マリーは口を噤んだ。 「わからない、何故、あの女はそんなまどろっこしい呪いをかけたのだ? 憎んでいるのであれば殺せばいいものを。 何故あの女は、そんな呪いを?」 その場で殺すのではなく、ヴォルデモートの手に堕ちた時にその身が滅びる呪いを姉であるナディアは妹にかけた。 リドルは心底わからないといった表情でマリーに問いかける。 マリーはそんなリドルを冷ややかな目で見下ろした。 「お前にはわかるまい」 冷ややかな目と同じく、マリーの声が冷酷な色を持っていた。 「親子の愛さえ理解しようとしないお前に、姉の──ナディアの気持ちなど、わかるはずがない」 微かな悲愴の色を持ったマリーの目に、リドルが笑った。 「そうか、親子の愛も、か。わかったぞ。 あの女は、私を愛していたのか」 「わかっただと? いいや、お前は何もわかっちゃいない……」 「いや、わかったさ。嫉妬だ、女の醜いそれだ。 あの女は愛する僕が君を求めた事に、嫉妬に狂ったのさ」 そう言って笑うリドルの表情を醜悪であった。 「あの女は、君に馬鹿な劣等感を抱いていた、そうだろう?」 「黙れ……」 「自らが持ち得ない力を持つ人間が側にいた時、人はそれと比べ劣等感に苛まれ──いつしかそれに勝手な憎しみを抱く。 あの女もそうだった、だから自分を認めてくれなかった全てを壊した」 「黙れと言っている!!」 マリーの怒声が部屋に響き、それと共に、バジリスクの苦痛に満ちた声が聞こえた。 のたうちまわるバジリスクの大きな黄色い球のような目は両眼とも潰され、流れ落ちる夥しい血を撒き散らせながら暴れている。 マリーはそのバジリスクの回りをフォークスが旋回しているのに気付いた。 「フォークス……!」 「“違う!”」 リドルが叫んでいるようだが、蛇語のため何を言っているのかわからなかった。 「“鳥にかまうな! 放っておけ! 小童は後ろだ! 匂いでわかるだろう! 殺せ!”」 盲目のバジリスクは混乱してふらふらしていたが、まだ危険だ。 フォークスは不思議な旋律を歌いながら、バジリスクの回りを旋回している。 「助けて、助けて、誰か、誰か!」 無我夢中でハリーが叫んだ声に、マリーはバジリスクに視線を向けているリドルの腕を払って突き飛ばした。 リドルの手から杖が飛んで、床に転がる。 『退け、デカブツ!!』 暗い部屋に反響した《言霊》により、バジリスクの巨体がハリーから離される。 ハリーに駆け寄ろうとしたマリーは、後ろから伸ばされた手に後ろに引き倒された。 引っ張られた短い髪が数本抜けた痛みに顔を顰る、ブチリと音がして髪と一緒に掴まれていた眼帯が取れ床に落ちた。 倒れた体の上にリドルが跨がりながら、俯いたマリーの顔を前髪を掴んで上に向かせる。 「君は、殺さないであげよう。 だから邪魔はするな」 冷酷な笑みを浮かべたリドルは、歪められたマリーの表情に愉快そうに笑った。 「へぇ、ハリーと同じ傷痕か。面白いな。 かたや愛、かたや憎しみに守られて、残る痕跡は同じ形なのだからな」 リドルの指先がマリーの右の瞼を走る稲妻形の傷の形を辿るようにねっとりと撫ぜる。 不快感に顔を歪めたマリーにリドルは笑いながら、抵抗を抑えるように拾いあげた杖をまた マリーに突き付けた。 「マリーさん!!」 「私は大丈夫だ! 自分の事を気にしてろ!」 ハリーの声に怒鳴り返すように叫んだマリーは、暴れ回るバジリスクの音に神経を尖らせながらも、目を離すことなくリドルを睨みあげた。 リドルはそんなマリーの頬を愛おしそうに撫ぜた。 「強大な敵を前にして媚びない君のその目は酷く好ましいよ、ガブリエル」 「やめろっ、その名で呼ぶな!」 「纏める一族がいないからか? だから、その名を呼ばれるに相応しくないと? ますます、好ましいいじらしさだ」 リドルは掴んだマリーの前髪を引いて顔を寄せた。 「といてやろう、その呪いをどちらも──お前が、僕を望むなら」 「……」 「この醜い傷さえ、消してあげてもいい」 「っう?!」 ぐっと近づいたリドルの伸ばした舌が、マリーの目蓋の傷を嬲った。 そう毛立つような悍ましさにマリーの強張った体が震えた。 「望むんだ……僕を」 甘い囁きが脳髄を震わせる。 マリーは固く閉じていた目を細く開けた。 こちらを見下ろした赤い目を見上げて、マリーはせせら笑った。 「その“ご厚意”はありがたいが。 残念ながら、私の望みは今も昔も変わらない」 酷く穏やかに、マリーは笑った。 「そしrw残念ながら、君の力をもってしても叶えることは出来ない──笑えるだろ?」 マリーは微かに首を傾げて口の端を歪めて見せた。 「お前が、そうしたんだから」 マリーは杖を掴んでいるリドルの手を握ると、振りかぶった拳て彼の頬を力一杯殴った。 リドルの成長途中の軽い体は吹き飛び、地面に転がる。 殴った感触の残る手に、リドルがどんどん実体化を遂げていることを実感する。 微かに息を乱しながらマリーはふらふらと立ち上がると、リドルの手から杖を蹴り飛ばした。 「私も……いい年だし、インドアなんだよ……取っ組み合いなんてのも柄じゃない」 息を切らしてマリーは倒れ伏すリドルに言った。 カラカラと転がっていく杖を見送ってから、足元にあるものに気付いた。 開かれたままのリドルの日記である。 それを拾おうとかがむと、急にさした影を見上げてマリーは口元を歪めた。 「勘弁してくれって……」 真っ赤な蛇の口が狙いを定めていた。 バジリスクの頭がマリー目掛けて落ちてきていた。 「マリー!!」 その振動に部屋全体が揺れた。 迫る鋭い牙に足を引くが、おそらく間に合わないなと思った。 脳裏に浮かんだ彼の顔に、走馬灯にはまだ早いと口の端を歪めた。 「マリー!!」 ハリーの悲鳴のような叫びの後、ズブリと音がして、避け切れなかった牙が左肩に突き刺さった。 徐々に食い込んでいく牙とともに、焼け付くような痛みが徐々に体に響く。 「がぁっ……!」 肩の皮膚を、肉を食い破る激しい痛みに呻く。 ようやく捕らえた獲物を離す気はないらしい牙は深々と刺さり、毒を流し込んでいく。 「こ、のっ……!」 獲物を捕らえた事に隙が出来たバジリスクの背をはい上がり、頭まできたハリーは両足でバジリスクの首の辺りをしっかりと挟むと、両手で剣を高々と掲げた。 「離せ!!」 ハリーは全体重を剣に乗せ、剣の鍔まで深く蛇の眉間を突き刺した。 バジリスクはその痛みに口を開けると大きくのたうちまわり、ハリーを振り落とすとそのまま横様に床に倒れ、ひくひくと痙攣し、そのうち動かなくなった。 ハリーは直ぐさま起き上がり、蹲ったマリーに駆け寄った。 マリーの肩辺りの服が裂け、深い傷痕と突き刺さったままの牙の破片が見えていた。 「マリーさん!」 ハリーは直ぐさまその牙を力のかぎりに引き抜いた。 溢れる血とその痛みに酷い汗が青い顔を伝い、マリーは小さく呻いた。 「しっかりして! マリーさん!!」 「ガブリエル・カウンシルは死ぬ」 近づいてくる足音にハリーは顔をあげた。 「助かる手だてはない、死ぬんだ。 鳥でもそれはわかるらしい、鳥が何をしているか、わかるかい? 泣いているよ」 ハリーはフォークスが美しいその体をマリーに預け、真珠のような涙をぽろぽろと流しているのがわかって、自分も目の奥が熱くなった。 青い顔のマリーは目を閉じたまま、静かに眠っているようだった。 「馬鹿な女だ……僕を望めばよかったのに。 でも大丈夫。もうすぐ君が可愛がっている子供達も、そっちに行くだろうから、淋しくはないよ」 そう言ってリドルは笑った。 「さて、ハリー・ポッター。二人だけの勝負だ」 リドルは杖を振り上げた。 微かに移動した床についていたハリーの手が、何かに触れた。 日記だ。 ほんの一瞬、ハリーも杖を振り上げたままのリドルも、日記を見つめた。 そして、躊躇いもせず。 まるで最初からそうするつもりだったかのように、ハリーは握ったままだったバジリスクの牙を掴み、日記の真芯にズブリと突き立てた。 恐ろしい、耳をつんざくような悲鳴が長く続いた。 日記からインクが血のように溢れるかえり、ハリーの手の上を流れ、床を浸した。 リドルは身をよじり、悶え、悲鳴をあげながらのたうちまわって──消えた。 ハリーの杖が床に落ちてカタカタと音をたて、そして静寂が訪れた。 バジリスクの猛毒が日記を貫き、焼け爛れた穴からインクが染み出し、ポタポタと落ち続ける音だけが静けさを破っていた。 微かな布擦れの音がした。 「ぅ──……」 「マリーさん?!」 小さな呻き声をあげたマリーの体にハリーは縋った。 「ハリー……?」 「大丈夫?! 毒は? 苦しい?」 「フォークスが、助けてくれたみたいだ……」 泣き出しそうなハリーの頭を震える手で撫ぜながら、マリーは微かに笑った。 マリーに言われて傷口を見れば、フォークスの涙に濡れた肩からあの深い傷は消えていた。 「そうか……不死鳥の涙には癒しの力が……」 ハリーはダンブルドアの言葉を思い出して、よかったと言ってマリーに抱き着いた。 「全然助けられなくて、ごめん」 「ううん……マリーさんがいてくれてよかった。 一人じゃないって思えたし。もちろん、フォークスもね」 嬉しそうに笑ったハリーにマリーも頷くと、微かに軋む体をゆっくりと起こした。 ハリーに支えられながら、マリーは立ち上がると立ちくらみのように疲れのせいか頭がクラクラした。 ハリーはゆっくりと杖と、組分け帽子を拾い、満身の力でバジリスクを貫いていた剣を引き抜いた。 そして近くに落ちていた マリーのちぎれた眼帯も拾いあげる。 「ジニーは大丈夫?」 ジニーの側にしゃがみ込んだマリーに駆け寄り、彼女の顔を覗き込む。 先程よりはジニーの顔に血の気が戻ってきたように見えた。 「もう少しすれば、リドルに奪われていた命のエネルギーは、ある程度戻ってくるから目を覚すよ」 マリーはそう言ってジニーに翳していた手を下ろした。 ハリーは手にしていた眼帯を差し出した。 「初めて見たけど、僕の傷と似ているんだね」 ハリーの言葉に眼帯を受け取りながら、マリーはああと頷いた。 「お揃い、って奴だな」 「あんまりいいお揃いではないけどね」 そう言いあって二人で笑った。 ジニーが微かに動いた。 ハリーはジニーの側にしゃがみ込み、マリーは眼帯をつけなおした。 「ジニー、大丈夫かい?」 ハリーの声がまだ届いていないのか身体を起こしたジニーは、トロンとした目で辺りを見渡した。 バジリスクの巨大な死骸を見、ハリーを見、血まみれのマリーを見た。 そして、ハリーの手にあった日記を見た途端にジニーは身震いして大きく息を呑んだ。 それから、どっと泣き出した。 「あたし、あたしがやったの、ハリー。 でも、あたし──そ、そんなつもりなんてなかった。 う、嘘じゃないわ……リ、リドルがやらせたの。 乗り移って、そして──」 「もう大丈夫だよ」 混乱して泣きじゃくるジニーに、ハリーはそう言った。 「リドルはもういない、バジリスクもだ。 おいで、ジニー。早く此処をでよう──」 「あたし、退学になるわ!」 さめざめと泣くジニーは身体を震わせた。 「パパやママが、な、なんて言うかしら?」 ハリーの横からすって伸ばされた手が、ジニーの頭を撫ぜた。 「大丈夫、ダンブルドアも御両親は君の言葉を信じてくれるさ。 君は何もしていない、リドルが犯人で、そのリドルをハリーが倒した──それで、これはおしまい」 「──……」 「よく頑張ったね、ジニー」 マリーの穏やかな声にジニーはわっと泣き出して、マリーに抱き着いた。 ジニーを宥めるように緩く背中を叩くマリーを見つめていると、なんだか少し微妙な気持ちになって来た。 「──……」 じっと見つめる視線に気付いたのか、マリーが小さく笑って手を伸ばした。 「ハリーも、よく頑張った」 褒めるように撫ぜられた頭に、親のような温かみを感じてハリーは零れた涙を隠すように俯いた。 フォークスが三人の周りをゆったりと旋回している。 “過去の亡霊”との戦いは、終わりを告げたのだ。