春島の気候に入った海域は穏やかで、青い空と温かい風が心地よい晴天の日──我らの船は襲撃を受けていた。 「ジーナ!後ろだ!!」 後ろからの兄弟の声に、手にしていたナイフを逆手に持ち変え、振り向き様に背後で斧を振り上げている敵の喉元へとそれを突き刺した。 「ぐぇっ」 べちゃりと、相手が吐いた血が飛び散り頬にかかる。それが不快で思わず眉間に皺が寄った。 抜くのに手間が掛かるだろうそれを早々に見捨てて、止めとばかりにその土手っ腹を蹴飛ばし海へと捨てる。 (あーあー……あのナイフ結構気に入ってたんだけど) 大きな水飛沫を背に乱雑に顔に着いた血を手の甲で拭いながら、ホルダーから新しいナイフを取り出す。 「ジーナ!怪我はねぇかい?」 視界の隅にちらついたら青い炎に振り返れば、変化を解きながら降り立ったマルコが駆け寄ってきた。 「あぁ、問題ないよ」 淡白に答えながら、顔を汚す血の不快感に舌打ちをし髪をかき上げる。 顔と同様に血をかぶった髪には、今日の夜は大苦戦させられるだろう。 「それは返り血かい?」 険しい顔でマルコが徐に伸ばした手が顔にへばりつく血に濡れた髪をかき上げ、まじまじと顔と頭の確認をするものだから顔を顰めて手を払う。 「返り血だよ」 何だかむず痒くて落ち着かないと、心中で舌打ちしながらぶっきらぼうに答えると、マルコは「そうか」と言って意外にすんなり引いてくれた。 「で、あんたは?」 辺りを警戒しながら問えば、きょとりとマルコは器用に片眉を上げてみせた。 「あぁ?俺は──…」 「治るからって、進んで攻撃なんか受けるんじゃないよ」 マルコの悪い癖を指摘して、肉のつかない薄い背中をバシンと強く叩くと、一歩踏み出した。 残念ながら、まだ戦いは終わってない。 「あんたに何かあったら、嫌だからね」 「ジーナ……」 「行くよ、マルコ」 「──おう」 背後で不死鳥が羽を広げる音がした。 「さぁ、暴れようかマルコ」 「背中は任せろい、ジーナ」 二人は同時に地面を蹴った。 「おい、ジーナ。何でマルコ、顔真っ赤なんだー?」 「あ?知るかよ、返り血じゃないの?」 すぐ近くで戦っていたコックの軽口に首を傾げると背後から飛び出した不死鳥が、コックの頭を蹴飛ばした。 なんでだ。