俺が何をしたって、ジーナは仕方がないなぁとそう言った顔で苦笑して済ましてしまう。 女と舌を絡めるほどの深いキスを交わしている瞬間を見せても、まぐわっている場面を見せても──俺が、酒に酔ったフリをしてアイツにキスをしても、ベッドに潜り込んでも。 最後には困ったように笑って『次は気をつけな』と、肩をぽんと叩いてジーナは去っていってしまうのだ。 それがどうしょうもなく悲しくて苦しくて、若い頃などは数度枕を涙で濡らした事がある。 「お前さ、ようはジーナに自分だけを見てもらいたいんだな」 うわぁ、独占欲強すぎて笑えないと、ドン引いた顔をしているのは今回の相談相手であった筈のサッチだ。 憐れまれるならまだわかる──それほどまでに俺は悲しい──だが、そんな変態を見るような目で見られるような話をしてはいなかった。 思わず怪訝そうな顔をすると、だってよとサッチが言葉を続けた。 「嫉妬するって、相手に執着してないと出来ないだろ〜? お前はそれをジーナに求めている。つまりお前はジーナに執着されたいんだ」 サッチの言葉がやけに素直に頭の中に入って来た、普段は気だるげに半分も開いていないような目を見開くマルコに、サッチは「あぁ、いや」僅かに否定を呟いた。 「執着、ってか愛されたいのか男として」 ラム酒のビンを手にしたり顔で笑うサッチに、マルコは愕然とした表情のまま「は?」と渇いた声を漏らした。 「何よ」とサッチが不思議そうにマルコを見る。 「な、」 「何」 「なんでお前、俺がアイツを好きだって知ってんだよい?!!」 思わずそう叫んでサッチの胸ぐらを掴んだマルコに、サッチはぱちくりと目を見開いた。 「え?知らないわけねーじゃん。だって船じゃ、みーんな知ってることだせ? あ、違うかあいつは知らねぇな」 「」 「え?え?バレてないと思ってたの? 嘘でしょ、あんなんバレるわ。オヤジだって知ってるぞ」 「──ぁあぁあああ!!」 羞恥からなのか絶望からなのか──どっちもだろう──マルコの叫び声が響き渡った。 「……何でもいいけど、お前はほとほどにしときなさいね」 嫉妬はしていても“隠す”事は出来ないんだから。 見えない心は、幾らでも取り繕えるのだ。 そう──例え、ひび割れてボロボロに壊れそうになっていたとしても。 (初公開:2015.4.2)