「あら?」 朝仕事の報告に船長室に向うと、先にマルコが来ていたらしくナース室で少し待つことになった。 ソフィアが珈琲タイムにしましょうかと、誘ってくれたので椅子に座りながら待っていると、マグを手に戻って来たソフィアが小さく声を上げた。 「ん? どうかした?」 差し出されたマグを受け取りながら振り返れば、うふふと意味深に笑うソフィアに目を瞬く。 「隊長ったら、ほんともう、ねぇ?」 「はぁ……?」 怪訝そうな顔で首を傾けると、ソフィアは堪えきれない笑みを溢しながらだってねぇと呟く。 「部屋が一緒だからって、そんなにおんなじ匂いになるとは思えないんだけど?」 「へ」 「だから!どうやったら、そんな隊長の匂い纏えるのよ!」 「えぇ?」 声を上げて笑うソフィアに、半開きの口から言葉ならない声が漏れる。 「え、何、そんなマルコ臭いの?一緒の部屋で寝たくらいで?」 「マルコ隊長の部屋のベッドで、服まで借りて寝たんでしょ?」 「エスパーか」 「想像つくわよ!」 ぽかんと、した顔でソフィアを見上げていると船長室の扉が開いた。 「おい、朝から騒がしいよい」 器用に眉を跳ね上げたマルコの登場に、ソフィアの笑いがさらに止まらなくなる。 「……何だ、誰かこいつに笑い茸でも食わせたのか?」 まぁ、そう思うわなと、未だ笑いの渦の中にいるソフィアを見ながら思う。 「私がマルコ臭いって笑ってんのよ、ソフィは」 「……人を加齢臭か何かみてぇに言うない」 不機嫌そうに顔を顰めたマルコに肩を竦めて返す。 「だってマルコの匂いだって気付かれるくらいにはマルコ臭いんでしょ?」 「ただ単に俺のコロンの匂いが移っただけだろうが」 「コロン?あれ移ったってか、私にも着けたよね?」 「もー隊長の独占欲酷すぎるわ!これじゃあ、マーキングよ!」 「鳥ってマーキングするの?」 「別にどうしようと構わねぇだろうよい。 それに“虫除け”はある程度こいつには必要だと思うが?」 「私、結構虫に刺されにくい体質だけど?」 「まぁ、確かにねぇ……」 「ねぇ、二人して話聞いてる?」 二人の話に入っていけず唇をへの字に曲げる。 「グララララ」 「あ、オヤジ。しまった、朝の仕事の報告に来たんだった」 椅子から立ち上がり船長室に向かう。 部屋から出てきたんだ、マルコの報告は終わっていたのだ。 「マルコ」 船長室に入って扉を閉めようという段階で、オヤジがソフィアと睨み合うマルコを呼んだ。 「事を急いてしくじるんじゃねぇぞ」 途端、はっとしたような顔をしてから真剣な顔で頷いたマルコに、何か重大な仕事でも始まるのかと考える。 船長室の扉を閉めてから、オヤジに「何か大仕事でも?」と訪ねて見ると、グララララと笑って誤魔化された。 (プロポーズという大仕事が待ち構えております) (初掲載:2015.4.5)