背中から向けられる視線に、首筋がむず痒い。 たしなめるつもりで視線の主を振り返れば、嬉しそうに柔らかく瞳が細められる。 (好き) 滲む剥き出しの感情は、向けられているこちらだけでなく、周囲にまで駄々漏れの筈だ。 何故、わかるかって?今一緒にいるイゾウの笑みが深まったからだよバカヤロウ。 背筋まで下りてきたむず痒ゆさに、「ばか」と唇の動きだけで告げる。 それに子供っぽく顔をくしゃりと歪め笑ったマルコに、耳朶が熱くなる感覚を覚えながらそっぽを向いてやった。 「愛されてんなぁ」 「からかわないでよ、イゾウ」 くつりくつりと喉を震わせ笑うイゾウに唸るようにそう返せば、「こわやこわや」と嘯く男にしては婀娜っぽい唇。 イゾウが吹かしていた煙管を欄干にぶつけ、海に灰を落した。 「あんなに思われてりゃあ、女冥利に尽きるだろうさ」 イゾウの軽い口振りに口の端を下げた。 そういうものだろうか、と思いながら眉間に皺を寄せると、男にしては華奢な指が眉間を小突く。 痕が残るよ、と指されたそこを押さえながらぐぅと唸る。 世の女がどうかなんてわからないが、とりあえずこんな嫁を見るのはどうにも──。 「どうしていいのかわからないから、困る……」 ぼそぼそと力なく呟いた言葉に目を見開いた後、イゾウは弾けるように笑いだした。 「な、なんだよ」 「いやなぁ、お前も案外可愛いとこあるな」 「はぁああ?!」 ツボに入ってしまったらしいイゾウは体を折って笑い続けている。 それに顔を真っ赤にして隣に仁王立ちしている自分、なんと滑稽なことか。 「コラ!もう笑うな、イゾウ!」 「ムリ、ムリ。あーダメだ」 目元に涙を浮かべて笑うイゾウに、むっつり唇をへの字に曲げた。 結局、イゾウが笑うのを止めたのは、珍しく爆笑しているイゾウに興味津々に近付いてきた仲間達に、 さっきの台詞を知られ、全員に盛大にからかわれた後だった。 (男前からかわれる)