くの玉のほとんどは花嫁修行の一貫としてこの学園に来ている為に戦忍なる者は生徒の一割程度であろう。 何かしらの重大な理由がない限り、自らの“性”を使った仕事など好き好んで選ばなくて良いとクジラは考えていた。 この事を口にすれば、自分のことを棚に上げて何を言うか、と言われそうなので今のところ思うに留めている。 育った里が里なので仕方がないのだが、ここでそれを語ったところで無意味だ。 だが、くの玉とは違い、戦忍を目指す者が多い忍たまの6年生は、『就活』という名の戦を越えねばならぬ時期が来ている。 忍者の『就活』は、自分から城に売り込むもよし。 「タソガレドキに、イイ子紹介してよ、先生」 稀に、こうやって直に組頭あたりがスカウトにもやってくる。 ちらちと男に視線をやってから、再び手元の進路ガイダンス用の資料制作へと目を戻す。 「交渉はご自分で」 「つれないなぁ」 進路指導員、なんて大層かつ面倒な役目を負わされたのはクジラが受け持ちのクラスを持ってないからに他ならない。 学園に来てまだ日が浅いというのもあるが、「つい最近までくの一で戦忍びだった私が適任」というのが学園長の弁であった。 正直なところ、いつもの思いつきでは?という気持ちも若干はある。 「と言いながら……もう何人か声をかけてると聞いているが?」 「何だ、知ってたの」 わざとらしく驚いたような口振りに、大して反応をするでもなしに書類に目を走らせる。 「指導員だからな」 引き抜きに応じる応じないにしても、ある程度の把握はしていたいため6年からその手の情報はこっそりいただいている。 誰が、どこに、などと言ったことを他人に言うつもりはないが今後の為にも情報は必要なのが進路相談というものだ。 こちらの答えに「それもそうか」と納得したように頷いた雑渡は、私が向き合う文机に肘をついて寄りかかる。 仕事の邪魔なので帰っていただきたいという思いを込めて、睨みつければ男は何が楽しいのかにこにこと目を細めて笑っていた。 「でもね、一番来てほしい子にはまだ声かけてないんだよね」 「ほう?」 この男が声をかけていない生徒がいるということに思わず、意外だと思ったままの声がでた。 すいっと伸ばした男の指が、筆を持ってない手の袖を引く。 「ね、私のところに永久就職しない?」 取り合えず、呆れたので目潰ししといた。 ──── くの一がデレない