作業曲:BASTILLE/ Back To The Future
エキドナの荊棘いばら





貴方には怒りを授けましょう。
貴方には憎しみを授けましょう。

大変に愛らしいので、激情も与えましょう。



「また男と出掛けんの」

「そうね」

「どこのどいつかな」

「あら、ただの上司よ」

「またアイツ?へぇ。俺が居んの知っててユメにあんな匂い移すなんて、ロクでもねぇ事考えてる野郎だって知ってて行くんだな?」


荒立つ感情は全て私に起因する。

部屋から出るなり扉に押し付けて、
彼は首に、甘噛みに似た痛みを残した。


「……ほら、離して」

「ヤダっつったら?」

「まあ……怖い顔」


鋭い流し目で見下ろされて、ゾクゾクと血が湧く。
どんなに冷徹に見えても、
その瞳の奥の色は情事の深さを漂わせる。


「私ヴィランにでもなろうかしら」

「俺に捕まりたいって事でOK?」

「いいえ。私は欲しいのよ」

「…………幾らでも、好きなだけ、やるぜ?」


怪しげな目に欲を乗せ、
唇へ向かって傾いていく顔に掌を被せて、
吐きかけた「今すぐにでも」を押し返す。


きっと、
敵対する者になった所で易々と捕まりはしない。

荒ぶる感情の全てを一身に浴びられるのなら、
簡単に捕まってしまっては、あまりに惜しい。


できる事ならいつまでも、
永遠に似た時の流れの限りずっと。

執着を塗り付けた激情の矛先は、私だけに。



エキドナの荊棘いばら


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