作業曲:Tania Christopher/I Want You
泡になったうぬぼれ屋
「役得、万歳」
快晴の水上コテージで白いサンベッドには目もくれず、並んだ茅葺き屋根とを繋ぐ桟橋に寝そべってしまった彼女は現在、空を仰ぎ、陽光に手をかざしている。
「プレゼントマイクさん、何かしましたよね」
もう片方の手は、ヒラヒラと水面を遊ぶ。
それに誘われるように浅瀬を掻き分けて泳ぎ、
呼ばれてもいないのに勝手に桟橋へ濡れた腕を乗せる。
「なんのテコ入れも無しにココになると思う?」
「そんな事だと思いました」
彼女の頭の横で腕を重ね、頬を乗せる。
そうして眺めた景色は最高だ。
透明度の高い水色と空の濃さ、
遥か向こうの水平線を蹴飛ばすべく組まれた、滑らかに伸びる二本の肌色。砂浜に似た曲線で、所々をくぼませて白地を被った二つの山、麓の鎖骨、肩。
板間に散らばった髪の隙間からは、
蝶蝶結びを食い込ませた項すら望める。
馴れ馴れしくしないで下さいだとか、軽い人は嫌いですとか、下心が透けていると言われ続けた辛辣な拒絶の水面下で、挫けず持ち続けた意外とプラトニックで確かな思いが今、目の前の彼女を連れてきたと思うと口の端が上がってしまう。
「どこ、見てるんですか」
「絶景だよ」
「プラトニックには百万年早そう」
彼女は組んだ足を勢い付けて下ろし、
エメラルドグリーンの海が波を立てる。
「でもまぁ」
首筋に汗を伝わせて振り向いた、見たことの無い笑顔に息の根を止められて、額に押し付けられた唇が桟橋を掴む腕の力を奪った事にも気が付かなかった。
「ありがとう。山田さん」
海底に沈んだのだと自覚する頃、
水面で歪む陽光の向こうから微笑みを聞いた気がして、
登っていく泡を混ぜるように揺れる素足を眺め、
静かなガッツポーズを決めた。
【泡になったうぬぼれ屋】
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