作業曲:Bastille /Remind Me
percent
(割合)



XYZ%




「あんたのそういうトコロ、大好きなんだよね」


「そいつはドーモ。奢りの酒いくらまで?」
「いいよなんでも」
「ご馳走さんデース」

 見えるようで見えないガラス一枚を挟み、部屋に雫の音が降り注ぐ。幸い同じように濡れている事で想像は容易い。目の上に乗せた腕のカムフラージュから隅へ視線を移せば、柔らかそうな丸みをよく映したガラスは更に隠すように曇っていく。


「やだ、めちゃくちゃ焼けてる」


 どれだけ曇らせても消し去る事なんてできない。透明感を感じさせる肌色、鮮やかなビキニ、流れには逆らえない垂れた髪は、そんな風に広がるワケか。

「ねえマイク日焼け止めまだ残ってる?」
「持ってねェのかよ」
「お願いあとで貸して、重たいの嫌だから少ないの持ってきて使い切っちゃった」
「仕方ねぇなァ……たっけぇの貸してやるよ。好きなだけ使え」

 解かれた背中と腰の警戒心、ベシャリと無様な音ひとつ。
 踏み洗いするガサツさには、女を装い立てたい気なんてひとつも見えやしない。首筋でシャワーを受けて、クリップで纏められていた辺りから黒い影が広がっていく。成程そうやって体を這い回るのか、――もし俺なら。

「次マイクが入ったら飲んでから行こうよ。何かメニュー表でもあるでしょ?」
「おいおい折角ならもっといい店の酒奢ってくれよ」
「やだよ高いもん」
「いくらでもっつったの誰だー」
「ここなら幾らでも。マイクとは収入が違うの。いらない?」
「ヘイヘイ冗談だって。有難く頂くっつーの」
「何か選んで! 私マイクと同じの」

 痩せ我慢の冷たさとは違い、熱そうな肌色をしてユメは現れる。裸の胸にただの布切れ一枚を貼り付けてお先にご馳走様だとか、結局腹の中なんか探れやしないのに、何処までもモザイクを信用した馬鹿さ加減には溜め息が出る。

「バッグ取って。服忘れた」
「お前よォ……もうちょい気にしろ」
「目の保養にもなんなくてゴメンゴメン」

 渡すフリをして剥ぎ取る事だってできる。隠れていた生肌を鷲掴む事もできる。裏のメッシュが見えてんだよ。絞った抜け殻なんて投げ捨ててその腕捕まえて引けば簡単にベッドに貼り付ける事ができるんだろう? 何度も見てきたんだ。がっかりしたお前の顔を見ても俺は。


「女として見ないところ大好きなんだよね。安心する」


 バッグで押し退けて入れ替わるように浴室を閉じる。
 何も気にしない軽口に甘えてポンプを押せば、洗剤ではない色めいた匂いが鼻を刺して浴室中から体へ染み込んでくる。髪はもう、軋んだままでもいい。同じように服を取らせても、充電器まで差し込んで寛ぎ始めたユメは何も気に止めちゃあいなかった。

「きたきた。このお酒ってカクテルメニューのXYZ?」
「詳しくない癖に知ってんノ? どっかのヤローに貰ったか」
「違うよ馬鹿。そんなキザいコトするのマイクだけだって。流石にこれは解る、アルファベットの最後三つを取って“これ以上にない最高の”って意味でしょ」
「……あァ」
「流石、私達気が合うよね」


「サイコーの私達に乾杯!」


 流石俺達全く合わねぇよな。どこまでも噛み合わない解釈だ。友情? 劣情? まあなんとでも呼べばいい。この“サイコー”の意味なら俺はひとつしか知らない。腹の内を見ちゃくれねぇお前の中に俺の影が落ちるまで続けるかゼロになるかのどれかなんだろ。初めから道なんてねぇんだよ。俺は永遠にお前のもんだ。





XYZ%

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カクテル言葉
XYZ:これ以上にない 究極の 最後
XYZ:永遠にあなたのもの

ライト・ラム40ml
コアントロー10ml
レモン・ジュース10ml
ベースラム 技法シェイク グラスショート
味中甘口 白色 25度-28度


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