作業曲:Nickelback/Someday
少しだけかじらせて





「その手をどけて」

「こんなモンで納得すると思ったか」


さよならと書かれた紙を握り潰す。
壁に叩きつけた拳からは続きの愛してるが雨で滲んでいたが、傘を持たない誤魔化された涙しか見えなかった。


「貴方の英雄像に私は邪魔」

「それは俺が決めんだよ」

「私にだって権利がある」

「ねぇよ。離せねぇつったろ」


壁に閉じ込めていた身体を掻き抱けば、
悲鳴に似た嗚咽と、
絞り出すような否定が音量を上げる。


これが茶番であれば良かったが、
幾度となく繰り返されるユメのこれは、擦り切れた心臓からしか湧かないもので、選べなかった一択を愛した分だけ激情に変えたものだ。


逃れようとする力は、
こちらが我武者羅になる度に増していく。

そして強く掴む力が我儘なほど疲弊し、
枯渇し、擦り切れていく事も知っている。
――それでも、俺は。



「こんな手紙要らねぇ、愛してんのも知ってる」



足りぬは喜劇、忘れるは悲劇。

叫ぶならこの胸で幾らでも。
それでもお前がいい。


「行くな」


たとえぶつけ合う激情が報われず、
噛み合うことが無い不条理劇だとしても、
永遠に、


少しだけ齧らせて


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