09
黒鋼への制止の声があまりに勢いがあったので、●●たち全員がその声の主に顔をあげた。
「王様!?と神官様?!」
小狼のその驚きの声も結構な大きさと勢いだった。黒鋼に制止をかけた男性とその隣の男性は同じような服装をしており、この店の店員と思われる。しかし小狼の反応は見知った人を思わぬところで見かけたときのようだった。
「お・・・王様!どうして ここに!?」
「誰かと間違ってませんか?俺はオウサマなんて名前じゃないですけど」
小狼の反応に困惑した様子の店員だったが、「こっちでひっくり返しますんで、そのままお待ち下さい」と淡々と黒鋼に告げてそのまま去って行った。
「王様って、前いた国の?」
「はい」
「で、隣の人が神官様かー。次元の魔女が言ってたとおりだねぇ。“知っている、 前の世界で会った人が別の世界で全く違った人生を送ってる”って」
●●にはその言葉は初耳だった。耳に残ったファイの、次元の魔女の言葉を頭の中でなぞる。
「なら、あの二人はガキの国の王と神官と同じってことか」
「同じだけど同じじゃない、かなぁ」
まるで言葉遊びでもしているかのようなファイの言葉に●●は思わず首を傾げた。
「言うなれば『根元』は同じ。かな」
「根元?」
思わず自分の中の疑問声が漏れてしまい、小狼と黒鋼の反応をちらりと伺ってみたがどうやらこのことを理解しているのはファイだけらしい。続きの説明を促すような●●の視線にファイは困った様子を見せることもなかった。
次元の魔女と呼ばれる人のいる場所に唯一自分の力で来たこと、「異世界へ誰かを渡す」ということがとてつもない魔力を要することを伝聞のよう言うでもなく、確信を持って言うあたりファイはここにいる誰よりもこの旅について“理解”をしているのかもしれない、と●●はそんなことを頭の隅で考えていた。
そして案の定、ファイは説明の言葉を続ける。
「命のおおもとー性質とかー心とかー」
「「魂」ってことか」
「なんか、不思議だね。よく分からないけど」
「分かってねぇのかよ」
鼻で笑った黒鋼を●●は睨んだ。
「黒鋼の分のおこのみやきはなしだからー!」
「はぁ?!」
「モコナもおこのみやき食べるぅー!」
わざと、黒鋼の前にあったおこのみやきに●●は手を伸ばした。
初めて口にした異国の食べ物は美味しかった。咀嚼する度に空腹と、心が満たされていく―――。