黒ク焦ゲツイテイテモ記憶ノ一部
確かに、確かに私は高校生活3年間の中で、岸谷新羅と平和島静雄とは、一度たりとも、同じクラスになったり、話したり、目を合わせることもなかった。
「あ」
ある日、岸谷新羅は私を見て、指をさした。そして、その隣にはあの有名な平和島静雄がいた。物珍しそうな目で、私を見てくる岸谷新羅に、すこし怪訝そうな表情を見せるも、彼は私の気も知らず寄ってきた。
「何?」
「へぇ・・・キミがあの・・・・」
「あの・・・?」
あのって何だ。あのって・・・。私は何かしたか?他のクラスの人にあの、と言われるほどの事を何かしたか??
岸谷新羅は私に向いているものの、平和島静雄はその場に突っ立ったままで、私の方へは見向きもしない。それどころか、少しいらだっているように見える。
「あ、彼はね」
「知ってます。平和島静雄くんでしょ?」
「名前じゃなくて・・・・」
「?」
「キミがあの折原臨也の彼女だって」
「・・・・・」
「ことで、少し気が立ってるだけだから、気にしないで。それにしても・・・あの臨也が・・・・・・・・・」
は?目の前にいる男は、今何て言った?誰が誰の彼女だって?私が?折原の?彼女?
「・・・・・」
「おーい、俺の話聞いてる?」
聞けるわけ無いだろ。私の記憶に、自分が折原臨也の彼女になった時間は存在しない。
「あれ?もしかして、違うの?」
「あ・・・あたりまえでしょッ!」
まるで子供のようだったと、今更ながらに思う。これでは思いっきり、嘘を隠し通そうとする子供だ・・・。
「酷いなー、それ」
今一番私が刺してやりたい人物として名が上がっていたヤツが、タイミング良く私の背後から現れた。
「何、デマながしてんのよ」
「え?デマじゃないよ」
「これのどこをどう見たらデマじゃないって言えるのよ。バカすぎんでしょ」
「俺は人を愛してる。そしてキミは人の一人。つまり、キミも俺の愛の対象ってわけさ」
「・・・・じゃぁ、人を今日から止めます。喜んで」
もう遅かった。3年間、共に歩んできた友との分かれに涙を流す生徒も、今は居ない。高校の門前は、戦場と化し、屍の如く転がる人に、最強を感じさせるオーラの持ち主が、そこには君臨していた。
「いーざーやー」
「何でナイフでさしても、死なないわけ?」
会話がまるで成立しない二人。
静雄は青筋を額に浮き彫りにさせているのに、臨也はそれが目に入っていないかのような振る舞いに、まるで新しいおもちゃでも見つけたかのような笑みには、確実に、人を見下すような笑みも含まれていた。