12

相も変わらず、今日も私は眠りの中で姉の“記憶”を見ていた。

何度も見るのでもはやその中の人達の言葉を暗唱出来る。今まで一度も俗に言う良い目覚めというものを私は経験したことがない。それを見ることで逆に疲労感さえ覚えるほどだ。

とはいえ、こんなことは日常茶飯事なので特に気に留めることもなく私はベッドから起き上がった。


「・・・・・」


今一度私は自分の状況を確認した。私は髪を下ろし、寝間着のようなゆったりとした服を着て、ベッドにいる。いわば寝起き、という状況だった。

けれど私はここに至るまでの記憶はない。正確に言えば、こうやって着替えてベッドに入った記憶、もはやこうやって教団に帰ってきた記憶もない。

私の最後の記憶は、教団へ向かう船に乗っているところまで。


「あぁーー!」


なんというデジャヴ!私は一度ならず二度もやってしまった。

典型的すぎるが私は思わず頭を抱えた。

教団に帰る船の中で私は意識を失って眠ってしまったんだろう。私には教団に向かう際には眠りにつく呪いでもかけられているのだろうか。最後まで意識を保っていられない自分に呆れてため息も出ない。


「●●!?」


ガチャっと勢いよく扉を開けたのはアレンだった。


「●●の声が聞こえてきたんでびっくりしましたよ・・・。何にもないようで良かったです」


ほっと胸をなでおろした後、アレンはいきなり慌てふためきだした。

言葉が支離滅裂で何を言っているのか分からないけれど、少し顔を赤くしていることから察するに勝手に私、というよりも女子の部屋に勝手に入ったことを謝罪しようとしてるんだろう。他の人にはそういう態度は正しいんだろうが、私は別にそんなことまったく気にしないタイプなので正直無駄だ。以前、そう言うとアレンはその紳士的な性格から、怒るべきだともっと警戒しろとなぜか怒られたことがある。アクマでもない相手に何を警戒しろというのか分からなかったが、とりあえずその場を収めるために頑張るとだけ答えておいた記憶がある。


「そういえば、私、また眠っちゃったんだ・・・・」
「そんな悲惨そうな顔しないでください。仕方ないことなんですから」
「でも・・・・ほんと、ごめん。また迷惑かけたね」


ベッドに腰かける私の前にアレンはひざまずいて微笑んだ。


「迷惑だなんて思ってません。色々ありましたが、僕が●●にしたことはこの部屋まで運んだことぐらいです」
「色々?」


後でこの意味について科学班の人に聞くと、不機嫌そうな表情をしながらコムイさんの作ったコムリンが暴走して大変だったとその時の惨状を事細かに教えてくれた。


「あ!着替えは僕じゃありませんよ?リナリーがやってくれたんです!」
「いや、別にそれは誰がやったかなんて気にしてないから」
「・・・・ルナ、それは気にするべきだと思います。●●は無防備で無自覚すぎます!」
「はい、分かりました!アレンさん!」
「いや、絶対分かってない・・・」
「で、で、アレンはなんで団服着てるの?任務?」


これ以上その話題を引っ張るのは終わりなき戦いが始まると思って早々に話題を切り替えた。アレンは大きくため息をついたが、私の話題の切り替えには乗ってくれるようだった。


「そうです、僕はこれから任務に行きます。それを伝えに来たんです」
「どいうこと?私は行かないってこと?それとも別任務ってこと?」


一気にこみ上げた焦りのせいで私は矢継ぎ早に質問をしてしまった。すぐにそれに気が付いて私は自分に冷静になれと心の中で言い聞かせた。アレンにこんな姿を見せるわけにはいかない。


「今回は僕とリナリーで任務に当たります。ルナは任務ではなく、ここに残るんです」
「私には教団ですることがあるってこと?」


もうすでに私は平常心になっていた。と言うよりも、平常心を装うことが出来ていたという方が正しい。アレンからは私について察したような様子も見受けられないから、きっと今回もうまくいったんだろう。
幼い頃、まだクロス師匠とアレンと出会ってなかった頃に身に付けたこの技は存外役に立っていた。

アレンには悪いが、アレンは自分の感情や思っていることを隠すのはさほど上手くない。強がっていればそうなのだとすぐに分かる。これでアレンが自分の感情を隠してしまえるほどの技量を持っていたら私はどうすることも出来なくなってしまうし、そうやって感情を見せてくれることで私が上手く感情を殺せているか推し量ることが出来る。


「眠る体質について、コムイさん達が何かの病気だったらきちんと治療をしないといけないから、検査をしてくれるそうです」
「分かった。伝えてくれてありがとう」


私の言葉にアレンはにこりと笑った。

あぁ、なんてアレンの笑顔は私の心をこうも温かくしてくれるんだろう。

言葉なんてなくても私はこの笑顔一つで安心できる。



私はアレンに一体何をしてあげられているのだろう―――



「ねぇ、アレン」
「はい」
「アレンが出掛けるとき、見送りに行ってもいい?師匠と旅をしてた時みたいに、いってらっしゃいって」
「お願いします、●●」