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雪が、降っていた。
白くふわりと舞うそれは空から落ちてきてはしんしんと地面に降り積もっていく。

その上を歩く私の足はサクサクと音を立てながら足跡を付けていく。雪の中にたたずむ建物は普段とは違った趣を見せていてとても綺麗だった。けれど私はそれを鑑賞している暇はない。そしてその雪を今は少し恨んでいる。


「雪のせいで視界が悪いし、何より手渡された写真と違うから分かりにくい!!」


右手に持っていた紙を私はぐしゃりと握った。これはコムイさんからもらった地図だ。
検査の後、指定時刻の汽車に乗ってここに来いと言われた。コムイさんもそこに行くというから集合時刻など何も言われていなかったけれど、てっきり一緒に行くのかと思ったのにコムイさんは私を置いて先に行ってしまった。
これは私に少しでも休んでもらおうというコムイさんの優しい気づかいなんだと分かってはいても、他のエクソシストたちが今もどこかで戦っているのかもしれないのに、怪我もしてない自分が呑気に休んでいるなんて嫌だった。
だから私は初めての任務のように飛び乗り乗車して一本早い汽車に乗ってやった。

そんな私の努力を掻き消すかのように、街に降りた私は雪で変わってしまった景色に右往左往してしまっていた。


「ここを曲がったらあるはずなんだけどな・・・」


自分でぐちゃぐちゃにしてしまった地図をもう一度広げなおした。そして角を曲がろうとしていたとの時だった。

アレンの声が聞こえてきた。

その声につられるように走っていくと、案の定アレンがいた。任務で負った傷か、アクマの魂が見えるその左目を負傷しているようだった。


「やっぱり、いた。アレン」
「●●!どうしてここに?」


アレンに駆け寄ると、その隣には見たことのない赤毛の青年がいた。団服を着ているのでエクソシストなのだろう。眼帯で右目は見えないけれど、私を見てニコニコと笑っていた。
するとその青年から手を差し出された。
私はそれに答えるように彼の手を握って握手した。


「ラビっす。ハジメマシテ」
「初めまして。私は」
「●●。●●・ボイドでしょ」


ラビと名乗った彼は初対面のはずの私の名前を言い当てた。いや、言い当てたというよりも知っていた事実をただ述べただけといった風で、ラビの言葉は私に尋ねてはいなかった。


「っていうか、コムイさんはこの中にいる?私、コムイさんにここに来るように言われたんだけど」
「コムイさんに呼ばれて?」
「うん」
「コムイさんなら今、何か話をしているそうなんで、もう少ししてから行った方が良いと思います」
「オレ達もそのせいで今締め出しくらってんさ」


ラビのしゃべり口調が聞き慣れない独特なものだったので私は一瞬反応するのが遅れた。


「そうですか、分かりました。しばらく待ってからにします」


私の言葉がラビにとっては何か変だったのか、キョトンとしてしまった。そしてラビはその表情のままで私とアレンの顔を交互に何度も見てきた。それが終わったと思ったらラビは何とも気の抜けた声を出した。


「え?トシいくつ?」
「15くらい」
「私も」
「あ、オレお兄さん。18だもん」


ラビの言わんとしていることが私には見当つかなくてどう言葉を返すべきか分からなかった。


「15ねェ〜。白髪のせいかもっとフケて見えんぜ」


それは自分でお兄さんだと言っておきながらなんともデリカシーのない発言だった。言った本人はさして何とも思っていないようで、その表情からは悪意や発言への反省の念のひとかけらも見受けられない。
ひょうひょうとしてラビはなんだかつかみどころのない人だと思った。

隣を見るとアレンは手にしていた雪の球を持ったまま黙ってしまった。


「あ、●●のことは別にフケて見えるなんて思ってないさ。ただ、大人びて見えたからてっきりオレと同い年ぐらいかと」


それはアレンに言った言葉とあまり大差ないのではないかと思ったが、発言する本人はそんな大使的にもせず発言しているのでもう何も言わずにいた。


「それにしても、教団は男ばーっかだけど、リナリーや●●みたいな可愛い女の子がいると癒されるなぁ」
「ちょっと、何しれっと言ってんですか」
「・・・・・」
「アレ?無反応?」
「褒めてくれるのは分かりますけど、なんというか、私は別にどうとも思わないというか・・・」
「いやいや、女の子なんだからそこはもっと喜ばないと!」
「あ!それは●●には禁句です!」
「ヘ?」


ラビの体に影が落ちる。それは私が持ち上げた雪の球のものだ。その雪の球は私の身長の三分二ほどの大きさはある。

ラビの顔がだんだんと焦りをにじませる。


「雪にでも・・・・」
「ちょ、ちょっと待つさ!●●!」
「こうなったら誰にも止められません」
「アレーン!!」
「埋もれてろ!」


私は大きく振りかぶってそのままラビに向けて雪球を投げつけた。ラビはその重さに耐えかねて後ろに倒れた。私の投げた雪球が砕けてラビの体を覆い尽くす。

ヘロヘロと何かを言っているのは聞こえたが、私は無視してラビに背を向けて雪だるまを作ることにした。


「●●ってば見かけによらずちょい乱暴さ」


そういう言葉をかけられたのは何もラビが初めてではない。
珍しくはないとはいえ、金色の髪に青い瞳という外見からか、周りの人はなぜか私を大人しくてかわいらし女の子だと思うそうだ。そんなものは中身を知らない、外見だけから推し量った推測でしかない。それなのに多くの人は自分の推測と私の中身の差を知って落胆した。そっちが勝手に外見だけで推測して期待をしただけなのに、まるでそれを裏切った私が悪いとでも言いたげな視線も向けられた。

とはいえ、ラビはそういう意味で言ったわけではないことは分かる。

しばらくして後ろに倒れていたラビが雪の中から体を起こした。