03

「これ、何ですか?・・え、っとリーバーさん?」
「名前合ってるよ。これは●●の対アクマ武器だ」


私の両の掌の上に置かれたのはミニチュアサイズの、まるで玩具のようなものだった。確かに形は私がここに来るまで対アクマ武器として使っていたものと似ていた。けれど明らかにサイズが違いすぎる。


「いや、私こんな玩具知らないですよ・・・何かの遊びですか?」
「これは科学班のみんなが●●のために改造してくれたものよ」


艶のある黒髪を揺らしてこちらに向かってくるのは先日、コムイさんの妹だと説明されたリナリー・リーさんだった。そして、口からは説明されていないがコムイさんは極度のシスコンだということも分かった。


「おはようございます、リナリーさん」


軽く会釈をしようとするとリナリーさんは私の肩に優しく手を添えれそれを制した。


「年齢近いんだし、私のことはリナリーで良いわ。それと、敬語もいらない。この前も言ったでしょ?」
「あ、すみ、ごめんなさい。忘れてた」

そう言うとリナリーはにこっと笑った。
話を戻そうと私は再びリーバーさんに向き直った。


「今まで武器そのままで持ち歩いてただろ?」
「そうです、だからとっても大変でした」


別に武器の重量について大変だと言ってるんじゃない。そのイノセンスの適合者には見た目のような重量は感じられないようだった。けれど師匠が私のイノセンスを宿すものとして選んだものがグレイブと呼ばれる鋭く大きな剣状の刃を持つ薙刀の類の武器に似ていたため、持ち歩くときはもちろん布で覆って隠してはいたけど、奇怪な目で見られるのまでは避けられなかった。
私だって、持ち主の背丈よりも長い棒状の何かを担ぐ人を街中で見たらそうするだろう。責めるつもりはないけど、それでもあまり慣れるものでもなかった。


「それで俺たち科学班の力で小さくしたってわけだ」
「すごいですね。でも、どうやってこれ、元の大きさに戻すんですか?」
「ルナが心で念じれば元に戻る」


リーバーさんの言葉を半信半疑で聞きながら、私は言われた通り、心で念じた。

元に、戻れ。


「う、わっ!」


一瞬にして私の武器は元の大きさに戻った。びっくりして危うく地面に落とすところだった。


「す、すごい!!!何これ!魔法使いになった気分!」


見たことのない現象に私はテンションが上がって思わず声を上げてしまった。その様子を見て2人は顔を見合わせた後、笑い出した。


「●●ったら、とっても純粋なのね」
「そんなに喜んでくれるたぁ、こっちもやりがいがあるってもんだな」


私は2人がそう言って笑う理由がいまいち分からず首を傾げた。


「え、だって本当にすごいじゃないですか!それとも私、馬鹿にされてます?」
「馬鹿になんかしてないわ」
「そんなに喜んでくれる奴なんて●●だけだ。後で他のみんなにも言っとかないとな」


その後、私はリーバーさんにイノセンスやこの黒の教団という組織について色々と説明してもらった。私のイノセンスは装備型で、ヘブラスカという人(と言うべきなのかよく分からない)によれば私とイノセンスとのシンクロ率は70%だったらしい。アレンは82%だったらしいから、少し悔しい。


「アレンに室長が説明したとき、●●眠ってたからなぁ」
「すみません、睡魔に負けて私よく眠っちゃうんです、幼いころから」
「小さい頃から?」
「そうなんです。私がどんだけ頑張ろうと思っても睡魔に勝てなくて・・・。完全には眠らなくても、気を抜くと船漕いでたり・・・。師匠は貧血みたいなものだろうって言ってました」
「俺が起こしに行っても、すぐに起きなかったのはその体質のせいか?」
「・・・おそらく。一度眠ってしまうとあまりすぐには起きれなくて」
「難儀な体質だな」
「そうですね。でも、私、きちんと戦えますから」


侮られては困る。なめられては困る。使えない奴だと思われては困る。シンクロ率とやらはアレンに劣っているけど、私はアレンと遜色ないよう日々努力してきた。守られる側でなく、守る側で居続けられるように。
突然、ポンポンとリーバーさんは私の肩を軽くたたいた。


「別に●●のことを戦力的に劣るなんて思ってねぇからそんな顔するなって」
「そんな顔?」
「すっげぇ怖い顔してるぜ?」
「●●の可愛い顔が台無しよ?可愛いって言うか綺麗な顔、かしら」


リーバーさんとリナリーが再び笑った。これは私が諭されている、慰められている、ということなのだろうか。


「それで、話はこれだけですか?」
「いや、●●たちには任務に行ってもらう」
「たち?リナリーとってことですか?」
「いや、違う」


リーバーさんのその言葉の意味はしばらくしてから分かった。
私が待たされていた部屋にアレンと、東洋人の男の人が入ってきたからだ。

私とリーバーさんとリナリーが話している間中コムイさんは眠り続けていたのに「リナリーちゃんが結婚するってさー」という謎の言葉で一瞬で目を覚まし、私たち三人に今回の任務の粗筋を伝えた。度を超えたシスコン度合に私は心の中で呆れのため息をついた。


しかし、問題はそこではなかった。これからファインダーの人を含め、チームで任務にあたるというのに、アレンと東洋人との空気が悪い!!!